日本大百科全書(ニッポニカ) 「キー」の意味・わかりやすい解説
キー
きー
key
歯車やベルト車などのように軸とともに回転する機械部品を回転軸に固定させるための機械要素の一つ。軸とボスboss(車輪の中央の肉厚となっている部分。軸の通る穴があいている)の両方にまたがった長方形断面の溝に挿入して用いられる。長方形の棒状で、材料は軸よりも硬い硬鋼でつくられる。キーはねじりにより主として剪断(せんだん)応力を受ける。
(1)くらキー 軸の丸みにあわせてキーの下面を円弧状に削って打ち込むようにしたもの。軸に歯車などを取り付けるのに用いられるが、軸に加工をしないで打ち込みの摩擦力だけでトルク(回転力)を伝えるので大きな力を伝えるところには用いられない。
(2)平キー 軸の表面をすこし平らに削った面と接触させるようにしたキーで、くらキーよりも大きな力を伝えるのに用いられる。
(3)平行キー 上下左右ともに平行につくられたキーで、もっともよく使用されている。軸とボスの両方にキー溝を設けてはめ込むもので、キーを抜き取るときに便利なようにねじ用穴を設けたものと設けていないものがある。キー溝の寸法許容差によって滑動形、普通形、締込み形の3種類がある。滑動形とは、ボスが軸上を動けるようにするときに用い、以前は、滑りキー、あるいはフェザーキーとよばれていた。普通形は、あらかじめキーを軸のキー溝にはめておき(すきまばめ)、これにボスをはめ込む方式で、以前は並み級とよばれた。締込み形は、キーを軸に固くはめておき(中間ばめ)、これにボスをはめ込むもので、以前は精級とよばれた。
(4)接線キー 反対勾配(こうばい)のキーを2個あわせて打ち込むもの。大きな力を伝達する場合に都合がよい。
(5)半月キー 形が半月形をしているキー。軸にテーパーがついている場合などに便利である。しかし軸に深く溝をつけるので軸の強度が落ち、弱くなる。あまり力の加わらないところに用いられる。
(6)勾配キー キーの上面に勾配をつけたキーで、軸にボスをはめておいて、後からキーを打ち込んで固定する。これには、取り外しを容易にするための頭(突起)付のものと、頭のないものがある。
[中山秀太郎・清水伸二]