出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
「ぞく」とも読み、矢尻とも書く。矢の先端につけた刺突具(しとつぐ)。材質によって石鏃(せきぞく)、銅鏃、鉄鏃、その他に分けられる。確実に石鏃といえるものが出現するのは、縄文時代に入ってからであり、石材や形は多様であるが、剥片(はくへん)を素材にした打製のものがほとんどである。しかし、北海道東部および中央部の早期の遺跡からは、石刃(せきじん)でつくられた石刃鏃が発見される。これはシベリア方面のものと関連をもつと考えられている。イノシシの牙(きば)でつくった牙鏃(がぞく)もあり、銛(もり)の先端にはめ込まれたままの例も知られている。また、シカの角(つの)を利用した骨鏃(こつぞく)あるいは角鏃(かくぞく)もあるが、これは有茎のタイプに属するものが多い。
打製の石鏃は、弥生(やよい)時代にも広くみられる。このうち、アメリカ式石鏃(アメリカ先住民が使っていたものに似ていることからその名がある)とよばれる特異な形のものが、東北地方南部から関東・中部地方の一部にかけてみいだされる。打製の石鏃とともに、粘板岩などをおもな石材とする磨製の石鏃が発達し、この時代の石鏃の特色をなす。骨鏃(角鏃)のほかに、アワビなどの貝殻でつくった貝鏃(かいぞく)もあるが、発見例は少ない。また硬い木質の木や竹でつくった鏃もあるようである。さらに、この時代には青銅製や鉄製の鏃が出現普及し、刺突具としての効果をいっそう高めた。
古墳時代に入ると、石鏃はまったく姿を消す。銅鏃は前期までは存続するが、すでに実用品としての意味を失う。中期以降はみられなくなり、鉄鏃が主座を占める。この時代の骨鏃は、鉄鏃を模した形をしている。
[岡本 勇]
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…石,骨,木,竹,青銅,鉄などでつくり,矢柄(やがら)の一端に着装する。鏃(ぞく)ともいう。鏃は,鏃身の形により,非常に細かく分類することもできるが,茎(なかご)の有無によって,大きく二つに分けることができる。…
…近衛の武官は白と黒の緂の切斑(きりふ)の羽を用い,行幸には左近はワシ,右近はタカの切斑としている。羽の上下と矢先の口巻(くつまき)には檀紙を巻いて〈樺矧(かばはぎ)〉といい,鏃には金銅の長根(ながね)をつけた(図1)。 軍陣の弓は丸木弓や七曲(ななもじり)の弓のような古風なものもあるが,多くは塗弓で,もっぱらこの上に籐(とう)の皮を巻いた弓を使用した。…
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