障泥(読み)アオリ

デジタル大辞泉 「障泥」の意味・読み・例文・類語

あおり〔あふり〕【障泥/泥障】

馬具の付属具。鞍橋くらぼね四緒手しおでに結び垂らして、馬の汗や上げる泥を防ぐ。下鞍したぐらの小さい大和鞍水干鞍に用い、毛皮皺革しぼかわ円形に作るのを例とするが、武官方形として、「さく障泥あおり」と呼んで用いた。

しょう‐でい〔シヤウ‐〕【障泥】

あおり(障泥)

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精選版 日本国語大辞典 「障泥」の意味・読み・例文・類語

あおりあふり【障泥・泥障】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 馬具の一種。下鞍(したぐら)の小型の大和鞍、水干鞍を使うとき、泥が飛びはね、衣服を汚すのを防ぐため、下鞍の間に垂らす大型の皮革晴天、軍陣、騎射の際にはじゃまになるので用いなかったが、のちに装飾用として、晴天の時にも用い、漆塗りの革を張るようになった。〔令集解(738)〕
    1. 障泥<b>①</b>〈奈良県手向山神社蔵〉
      障泥〈奈良県手向山神社蔵〉
    2. [初出の実例]「あふりいとたかううち鳴らして」(出典:枕草子(10C終)二二〇)
  3. あおりいか(障泥烏賊)」の略。
    1. [初出の実例]「『此いかはあをりじゃあねへか』『なに真いかさ、かな川だァみなさへ、此あついことを。あをりやするめいかだと安ひはな』」(出典:洒落本・通言総籬(1787)二)

しょう‐でいシャウ‥【障泥】

  1. 〘 名詞 〙 馬具の一つ。毛皮などでつくり、馬腹両脇にかけて泥よけにしたもの。あおり。〔色葉字類抄(1177‐81)〕

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普及版 字通 「障泥」の読み・字形・画数・意味

【障泥】しよう(しやう)でい

馬の泥よけ。鐙と馬腹の間にたらす。泥。あふり。〔世説新語、術解〕王武子(済)善く馬の性を解す。嘗(かつ)て一馬に乘り、錢の泥をく。に水り、日肯て渡らず。王云ふ、此れ必ず是れ泥を惜しむならんと。人をして解き去らしむ。(すなは)ち徑(ただ)ちに渡れり。

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改訂新版 世界大百科事典 「障泥」の意味・わかりやすい解説

障泥/泥障 (あおり)

東アジアで考案された鞍の付属品で,馬の脇腹の下,鞍の左右にさげて,乗り手の脚に泥がかかるのを防ぐ。《貞丈雑記》の〈もとは雨天に衣服にはねつく泥を障る為のもの也,後には晴天にもこれをさして飾とする也,武用にはいらぬ物故,軍陣騎射などに用る事なし〉という記述が現在でも信用されている。画像石,銅鏡,明器,壁画などの表現によると,漢・三国・南北朝時代には長方形の障泥を鞍の下方にさげており,韓国の慶州天馬塚で出土した3例,金冠塚出土の陶質騎馬人物形容器,馬形埴輪正倉院に残る熊皮の障泥も,この系統に属するが,唐代を境にして長方形から楕円形にかわった。遼・元代のものは半楕円ないし楕円形である。奈良市手向山神社所蔵の唐鞍に付属する障泥も楕円形で,藺莚(いむしろ)を心にして縹染(はなだぞめ)の麻布を裏にはり,表は革に金銅板をはって双鳥文を飾る著しく装飾的なものである。
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世界大百科事典(旧版)内の障泥の言及

【鞍作部】より

…大和朝廷の馬具製作にあたった職業部。《日本書紀》雄略7年条に百済貢上の今来才伎(いまきのてひと)の中に鞍部堅貴の名がある。《坂上系図》には仁徳朝に鞍作村主(すぐり)らが阿智使主(あちのおみ)に従って来たと記すが,これは東漢(やまとのあや)氏の管掌下にあったことから造作されたもので,5世紀後半に百済渡来の工人を組織したものであろう。なお日本では5世紀前半より馬具が製作されているので,これ以前の工人渡来の可能性も否定できない。…

※「障泥」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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