(読み)タク

デジタル大辞泉 「鐸」の意味・読み・例文・類語

たく【鐸】[漢字項目]

[音]タク(漢)
大きな鈴。「銅鐸木鐸ぼくたく
風鈴ふうりん。「風鐸

ぬて【×鐸】

ぬりて(鐸)」の音変化。
百伝ももづたふ―ゆらくも置目おきめ来らしも」〈・下・歌謡

たく【×鐸】

銅または青銅製の大型の鈴。扁平な鐘の中にぜつがあり、上部を持って振り鳴らす。古代中国で教令を伝えるときに用い、文事には木鐸武事には金鐸を用いたという。鐸鈴。ぬて。ぬりて。
大形の風鈴ふうりん

ぬり‐て【×鐸】

古代、長い柄をつけ、合図のために振り鳴らした鈴状・鐘状のもの。たく。

さなき【×鐸】

鉄製の大きな鈴。上代祭式に用いられた。ぬりて。ぬて。

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精選版 日本国語大辞典 「鐸」の意味・読み・例文・類語

たく【鐸】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 銅または青銅でつくった鈴の大型のもの。扁平な鐘の形で、中に木または金属の舌(ぜつ)があり、上方の柄(え)を持って振り鳴らす。中国では古代、教令を宣布する時に用い、文事には木鐸を、軍事には金鐸を用いたという。さなき。ぬりて。鐸鈴。
    1. [初出の実例]「鐸(タク)。金鐸、金口金舌也。木鐸、金口木舌也」(出典和爾雅(1688)五)
    2. [その他の文献]〔周礼‐夏官・大司馬〕
  3. 風鈴(ふうりん)。〔王勃‐梓州飛烏県白鶴寺碑〕

さなき【鐸】

  1. 〘 名詞 〙 鉄でつくった大きな鈴。古代、祭式用として用いた。ぬりて。ぬて。
    1. [初出の実例]「天目一箇(あめのまひとつつの)神を令て、雑(くさくさ)の刀(たち)、斧、及び鉄鐸(サナキ)〈古語佐那伎〉を作ら令む」(出典:古語拾遺(嘉祿本訓)(807))

ぬり‐て【鐸】

  1. 〘 名詞 〙 古代、合図のために用いた鈴・鐘状のもの。中に、木または金属の舌があり、上方の細長い柄を持って振り鳴らす。たく。ぬて。
    1. [初出の実例]「縄の端(は)に鐸(ヌリテ)を懸けて謁(ものまうし)者に労ること無かれ」(出典:日本書紀(720)顕宗元年二月(図書寮本訓))

ぬて【鐸】

  1. 〘 名詞 〙ぬりて(鐸)
    1. [初出の実例]「浅茅原小谷を過ぎて百伝ふ奴弖(ヌテ)響くも置目来らしも」(出典:古事記(712)下・歌謡)

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普及版 字通 「鐸」の読み・字形・画数・意味


21画

[字音] タク
[字訓] おおすず・かね・ふうりん

[説文解字]
[金文]

[字形] 形声
声符は(えき)。に擇(択)(たく)、(と)の声がある。〔説文〕十四上に「大鈴なり。軍法に、五人を伍と爲し、五伍を兩と爲す。兩の司馬、鐸を執る」とあり、〔周礼、夏官、大司馬〕の文による。金鈴木舌を木鐸といい、文事には木鐸、武事には金鐸を用いた。殷代の鐃(どう)、列国期の句鐸(こうたく)は器制の似たものであるが、ともに柄を下にして樹(た)てて鼓するもので、鈴の類ではない。

[訓義]
1. おおすず、すず。
2. かね。
3. ふうりん。

[古辞書の訓]
名義抄〕鐸 オホスズ・ヌリテ・ユヒマキ 〔立〕鐸 オホスズ・カク・ユヒカケ

[熟語]
鐸語・鐸刃・鐸鐃・鐸舞・鐸鈴
[下接語]
金鐸・鼓鐸・執鐸・車鐸・鉦鐸・振鐸・大鐸・銅鐸・鐃鐸・風鐸・秉鐸・宝鐸・木鐸・鳴鐸・鈴鐸

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改訂新版 世界大百科事典 「鐸」の意味・わかりやすい解説

鐸 (たく)

青銅製の〈かね〉の一種。中国では有柄有舌の〈かね〉をさす。すなわち,筒状の身(かねの本体)の閉じた方の端に長い柄が直立し,他端は開いたまま終わる。身の内側につるした発音用の棒(舌(ぜつ))を振り鳴らす。周代に出現し,〈鐸〉の銘をもつ実例もある。一方,中国では有鈕有舌のかね,つまりつり手(鈕(ちゆう))をそなえた揺れ鳴るかねを鈴と呼んだが,日本では7~8世紀以来,これを鐸の文字で表現し,〈さなぎ〉〈ぬりて〉〈ぬで〉と訓じた。正倉院には聖武天皇の一周忌(757)に使った幡(ばん)につるした有鈕有舌のかねが伝存し,〈東大寺枚幡鎮鐸……〉の銘をもつ。今日,風鐸と呼ばれるものは,堂塔の軒あるいは相輪に垂下し,舌が風に揺れ身に触れて鳴るかねで,《西大寺資財流記帳》は,奈良西大寺薬師院薬師金堂,弥勒金堂の風鐸を〈鐸〉〈銅鐸〉と表す。また薬師金堂の鴟尾(しび)の上に飾られた金銅製の鳳凰が,口に〈銅鐸〉をくわえていたとも記している。7~8世紀に発見された弥生時代の銅鐸は,すでにその用途や名称が伝えられていなかったが,当時知られていたかねのうち,鐘ではなく鐸と判定され,その名を得たのであった。
(すず) →銅鐸
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鐸」の意味・わかりやすい解説


たく

銅または青銅で鋳造した大型の鈴。鐸鈴(たくれい)ともいう。扁平な鐘状をなしており、上部につく細長い柄(え)を持って振り鳴らした。古代中国では、教令を宣(の)べる際、人民を戒めるために鳴らし、文事には木製の舌(ぜつ)、軍事には金属製の舌を用いたという。木舌をもつものを「木鐸(ぼくたく)」といい、転じて世人を教え導く者の意を表す。日本では「ぬて」「ぬりて」「さなき」とも称した。寺院などで用いる「風鐸」は、軒下に吊(つ)るし風に鳴らす鈴である。

[兼築信行]

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【鐸】より

…身の内側につるした発音用の棒(舌(ぜつ))を振り鳴らす。周代に出現し,〈鐸〉の銘をもつ実例もある。一方,中国では有鈕有舌のかね,つまりつり手(鈕(ちゆう))をそなえた揺れ鳴るかねを鈴と呼んだが,日本では7~8世紀以来,これを鐸の文字で表現し,〈さなぎ〉〈ぬりて〉〈ぬで〉と訓じた。…

【鐸】より

…身の内側につるした発音用の棒(舌(ぜつ))を振り鳴らす。周代に出現し,〈鐸〉の銘をもつ実例もある。一方,中国では有鈕有舌のかね,つまりつり手(鈕(ちゆう))をそなえた揺れ鳴るかねを鈴と呼んだが,日本では7~8世紀以来,これを鐸の文字で表現し,〈さなぎ〉〈ぬりて〉〈ぬで〉と訓じた。…

【鐸】より

…身の内側につるした発音用の棒(舌(ぜつ))を振り鳴らす。周代に出現し,〈鐸〉の銘をもつ実例もある。一方,中国では有鈕有舌のかね,つまりつり手(鈕(ちゆう))をそなえた揺れ鳴るかねを鈴と呼んだが,日本では7~8世紀以来,これを鐸の文字で表現し,〈さなぎ〉〈ぬりて〉〈ぬで〉と訓じた。…

【鈴】より

…レイは有鈕有舌,すなわち筒状の身の閉じた方の端に鈕をそなえ,もう一端は開いて終わり,内側に発音用の棒(舌(ぜつ))を吊して,これが身を打って発音する。このレイを日本では,銅鐸,風鐸,馬鐸などのように,古くから(たく)と呼ぶ。しかし中国で鐸とするのは有柄有舌のカネで,鈕によって吊り下げるのではなく,把手をそなえ,これを握って揺らし鳴らすものをいう。…

【鈴】より

…〈鈴〉の字をレイと読む場合,日本では有柄有舌の体鳴楽器,すなわち把手をもち内部に舌(ぜつ)を吊るして,振ると舌が本体の内側を打って発音するものをいい,一般には密教法具の金剛鈴(こんごうれい)を指す。しかし中国で〈鈴〉とするものは,スズや日本のレイと異なり,有鈕有舌の鐘(かね),すなわち吊り手をもち,内部に舌を吊るすものをいい,日本ではこれを古くから(たく)と呼んでいる。さらに中国ではレイにあたる有柄有舌のものに鐸の字を用いており,混乱を招きやすい。…

※「鐸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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