阿武山古墳(読み)アブヤマコフン

デジタル大辞泉 「阿武山古墳」の意味・読み・例文・類語

あぶやま‐こふん【阿武山古墳】

大阪府高槻市の阿武山の丘陵部にある7世紀後半の古墳石室内部から男性遺体を納めた夾紵きょうちょ棺が発見された。藤原鎌足の墓とする説が有力。

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精選版 日本国語大辞典 「阿武山古墳」の意味・読み・例文・類語

あぶやま‐こふん【阿武山古墳】

  1. 大阪府茨木市と高槻市を界する阿武山の丘陵に築かれた終末期の古墳。横穴式石室の内部に乾漆棺をおく。藤原鎌足の墓ともいう。

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日本歴史地名大系 「阿武山古墳」の解説

阿武山古墳
あぶやまこふん

[現在地名]高槻市奈佐原、茨木市桑原

阿武山(二八一・一メートル)尾根の頂部標高二一五・八メートルに築造された七世紀代の古墳。昭和九年(一九三四)に調査された。墳丘は明確な封土を欠くが、径約八〇メートルの円墳とみられる。中心部には花崗岩の割石とを用いて石室が構築され、南側には割石を詰めた長い排水溝が設けられていた。石室の内面には漆喰が塗られ、中央には築の棺台が設けられていた。その上には夾紵棺が安置されていたが、棺内には玉枕をしき、金糸をまとった、仰臥伸展葬された年齢六〇歳、身長約一六四センチと推定される男性の遺骸が完存していた。

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国指定史跡ガイド 「阿武山古墳」の解説

あぶやまこふん【阿武山古墳】


大阪府高槻市奈佐原と茨木市安威(あい)にまたがる古墳。大阪府北部の三島地方のほぼ中央にある阿武山の丘陵末端、標高約210mのところに築かれた。通常の古墳にあるような盛り土はなく、浅い溝で直径82mの円形の墓域を形成している。石室は地表約1.5mのところにあり、上が瓦で覆われ地表と同じ高さになるように埋め戻されていた。内部には棺台があり、夾紵棺(きょうちょかん)が日本で初めて発見された。「貴人の墓」として一般公開され、保存上の問題から再埋葬されたが、わが国の墓制を考えるうえで重要な古墳であることから、1983年(昭和58)に国の史跡に指定された。墳丘は山の尾根を利用して造られており、墓域を画する溝は東西約84m、南北約80mの円を描いているが、一部省略され一巡はしていない。花崗岩と塼(せん)で構築された石棺式石室内法は、長さ2.575m、幅1.1m、高さ1.19mで、床面、棺台、四壁とも厚さ1.5cmの漆喰(しっくい)が塗られ、夾紵棺は漆で布を何層にも固めて作られ、外が黒漆、内部が赤漆で塗られている。棺のなかから60歳前後、推定身長約165cmの男性の遺骨が仰臥伸展葬の状態で発掘され、ガラス玉を編んで作った玉枕のほか、遺体が錦を身にまとっていたこと、胸から顔面、頭にかけて金の糸が散らばっていたことが確認された。古墳周辺は1989年(平成1)に史跡公園として整備された。JR東海道本線摂津富田駅から市バス「奈佐原」下車、徒歩約35分。

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改訂新版 世界大百科事典 「阿武山古墳」の意味・わかりやすい解説

阿武山古墳 (あぶやまこふん)

大阪府高槻市奈佐原にある阿武山山頂から南にのびる尾根の突端部にある墳墓(史跡)。1934年発見。墳丘には顕著な盛土はなく,わずかに高さ数十cmの段をめぐらした直径82mの円墳である。墓室は花コウ岩と塼(せん)で構築した石棺式石室で,床も石と塼を敷く。高さ30cmの塼積みの棺台を作り,棺台・床・四壁とも漆喰塗で仕上げる。石室の内法は長さ257.5cm,幅110cm,高さ119cm,扉石は花コウ岩の板石をたてかけ,空隙を石材と塼で埋める。棺台上には完形の,麻布をなん枚も漆で固めた脱乾漆技法の夾紵棺(きようちよかん)が東寄りにあった。棺蓋は上面の四周に面取りの稜があり,外面は黒漆,内面には朱漆を塗る。棺内には南枕した60歳前後,推定身長164.9cmの男性人骨が衣服の断片を残して仰臥伸展葬で見つかった。頭部から顔面にかけて金糸が残り,絹布を筒状にまいてガラス玉を銀線で連ねた枕が用いられていた。被葬者を藤原鎌足とする説が強い。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「阿武山古墳」の意味・わかりやすい解説

阿武山古墳
あぶやまこふん

大阪府高槻(たかつき)市阿武山から延びる丘陵頂部につくられた7世紀後半の古墳。1934年(昭和9)と1982年(昭和57)の調査によると、溝で画された直径80メートルの墓域の中央には地面を1辺18.5メートルの方形にわずかに削り出した区画がある。この下に長さ2.6メートル、幅1.1メートル、高さ1.2メートルの石室を地下に埋める。石室は花崗(かこう)岩と塼(せん)を積み上げ、表面には漆食(しっくい)を塗る。せん積みの棺台には脱活乾漆(だっかつかんしつ)の夾紵棺(きょうちょかん)(麻布を重ね漆で張り固める)が完存していた。内部に、衣服をまとい、銀線で連珠したガラス玉を芯(しん)とする玉枕(たままくら)をした老人男性の遺骸(いがい)があり、頭部から顔面にかけて金箔(きんぱく)を螺旋(らせん)状に巻いた金糸が発見された。最初の調査後、棺は再埋葬された。『多武峯(とうのみね)略記』などによって中臣鎌足(なかとみのかまたり)墓とする説が有力である。

[猪熊兼勝]

『梅原末治著『摂津阿武山古墓調査報告』(1936・大阪府)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「阿武山古墳」の意味・わかりやすい解説

阿武山古墳
あぶやまこふん

大阪府高槻市奈佐原の茨木市との境にある阿武山の尾根の頂端 214mのところにある古墳。花崗岩と 塼で造った横穴式石室で,壁面には漆喰を塗ってあり,夾紵棺 (きょうちょかん) が安置されていた。中に金糸の衣服をまとい,玉枕をした貴人の遺骸が葬られていた。構造形式が百済古墳に似ていること,大化改新の墓制に決められた規格に合っていることから注目されている。藤原鎌足の墓の可能性が考えられている。

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百科事典マイペディア 「阿武山古墳」の意味・わかりやすい解説

阿武山古墳【あぶやまこふん】

大阪府高槻市・茨木市にある7世紀ごろの古墳。直径約80mの円墳。花コウ岩と磚(せん)でつくられた石棺式の石室には夾紵(きょうちょ)棺(漆で塗りかためた布を重ねてつくった棺)が安置され,棺内からは推定年齢60歳の男性遺体,冠帽(かんぼう)・玉枕(たままくら)が出土した。藤原鎌足墓とする説もある。

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