出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
大阪府高槻市奈佐原にある阿武山山頂から南にのびる尾根の突端部にある墳墓(史跡)。1934年発見。墳丘には顕著な盛土はなく,わずかに高さ数十cmの段をめぐらした直径82mの円墳である。墓室は花コウ岩と塼(せん)で構築した石棺式石室で,床も石と塼を敷く。高さ30cmの塼積みの棺台を作り,棺台・床・四壁とも漆喰塗で仕上げる。石室の内法は長さ257.5cm,幅110cm,高さ119cm,扉石は花コウ岩の板石をたてかけ,空隙を石材と塼で埋める。棺台上には完形の,麻布をなん枚も漆で固めた脱乾漆技法の夾紵棺(きようちよかん)が東寄りにあった。棺蓋は上面の四周に面取りの稜があり,外面は黒漆,内面には朱漆を塗る。棺内には南枕した60歳前後,推定身長164.9cmの男性人骨が衣服の断片を残して仰臥伸展葬で見つかった。頭部から顔面にかけて金糸が残り,絹布を筒状にまいてガラス玉を銀線で連ねた枕が用いられていた。被葬者を藤原鎌足とする説が強い。
執筆者:猪熊 兼勝
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大阪府高槻(たかつき)市阿武山から延びる丘陵頂部につくられた7世紀後半の古墳。1934年(昭和9)と1982年(昭和57)の調査によると、溝で画された直径80メートルの墓域の中央には地面を1辺18.5メートルの方形にわずかに削り出した区画がある。この下に長さ2.6メートル、幅1.1メートル、高さ1.2メートルの石室を地下に埋める。石室は花崗(かこう)岩と塼(せん)を積み上げ、表面には漆食(しっくい)を塗る。せん積みの棺台には脱活乾漆(だっかつかんしつ)の夾紵棺(きょうちょかん)(麻布を重ね漆で張り固める)が完存していた。内部に、衣服をまとい、銀線で連珠したガラス玉を芯(しん)とする玉枕(たままくら)をした老人男性の遺骸(いがい)があり、頭部から顔面にかけて金箔(きんぱく)を螺旋(らせん)状に巻いた金糸が発見された。最初の調査後、棺は再埋葬された。『多武峯(とうのみね)略記』などによって中臣鎌足(なかとみのかまたり)墓とする説が有力である。
[猪熊兼勝]
『梅原末治著『摂津阿武山古墓調査報告』(1936・大阪府)』
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