集運材法(読み)しゅううんざいほう

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

集運材法
しゅううんざいほう

森林で立木(りゅうぼく)を切り倒し(伐倒(ばっとう)、伐木・造材)てから、その原木(げんぼく)(全木・全幹あるいは玉切(たまぎり)材)を任意量ずつ寄せ集めて(木寄せ)、林道沿線の山元土場(どば)まで短距離運搬(集材)し、その間に全木・全幹材は、運搬しやすいように所定の長さに玉切(造材)して、最終目的地の市場や工場まで相当量まとめて長距離運搬(運材)する方法を総称していう。1990年代以降、日本国内の機械化した作業現場では、木寄せ集材車(フォワーダー)・移動式集材機(モービルヤーダー、タワーヤーダー)・枝払玉切機(ティンバープロセッサー)などが集結して使われている。
 集運材法は陸運と水運に大別される。森林開発の初期には、原木を人が肩に担いだり(担ぎ出し)、山腹斜面を滑り落としたり(山落とし)、人力や畜力で地面を引きずったりして集材してから、渓流や河川の流水を利用する鉄砲流し、管(くだ)流し、筏(いかだ)流し、舟運などで市場へ輸送していた。しかし、鉄道や道路が発達し、ダムが多数建設された現在の日本では、水運による木材輸送はほとんど行われなくなっている。北米、北欧、ロシアなどの湖沼の発達した大陸平地林や海岸付近の大森林地帯では、筏流しや囲み筏、海洋筏を引き船で曳航(えいこう)する方法が行われている。
 陸運はほぼ次のように分類されるが、現在日本では架空線運材とトラクター・トラック運材に属するものが主流である。[山脇三平]

滑路運材

土修羅(どじゅら)、木修羅(きじゅら)、水修羅(みずじゅら)など樋(とい)型の滑路を築設し、原木の自重を利用して滑走搬出する方法。日本ではかつて、丸太を樋のように敷き並べた木修羅、あるいは底部を板材にして滑りやすくした野良桟手(のらさで)を築設して、山腹斜面をスイッチバックさせるなどして集材した。しかし、滑路の築設に手間どるほか原木の損傷も多いため、現在ではほとんど使われなくなった。強化プラスチックや軽合金製の携行容易な樋型シュートを山腹斜面に敷設して、間伐材やシイタケ原木の短距離搬出に使用する例がみられる。[山脇三平]

そり運材

夏季、人力や畜力で丸太をそのまま、あるいは土(ど)ぞりにのせて地引きする方法は、いまなお世界中、とくに開発途上国で行われている。日本独特のものとしては木馬(きうま)運材がある。
 冬季、積雪地方で、人力や畜力によって、丸太をそのままか雪ぞりにのせて牽引(けんいん)する方法が世界各地で行われてきた。日本では北海道、東北地方で盛んに行われ、そりの形状には地方によって風土色豊かな特色があった。山腹斜面では、丸太前部を2本の親木(そり)と1本の横木で組んだ「ばつ(ばち)」にのせ、人力で制動しながら雪ぞり道を滑降し、緩勾配(かんこうばい)のそり道にくると、丸太後部にもう1台の「ばつぞり」を入れて「二丁ばつ」(ばちばち)として滑り摩擦抵抗を少なくし、かなりの距離を運材する方法が行われた。また畜力の場合は、くりぬいた一枚板の「玉ぞり」を使うほか、人力の場合とほぼ同様な「ばちばちぞり」や馬ぞりで長距離を運材した。[山脇三平]

架空線運材

集材機(ヤーダー)によるものと索道によるものがある。集材機は原動機と巻胴(ドラム)を組み合わせた一種の動力ウィンチで、ワイヤロープを利用して伐倒木を集める機械である。海外では、トラクター(ホイール型あるいはクローラー型)やトラックに搭載した移動式集材機(モービルヤーダー)が広く普及しているが、日本国内では、タワーヤーダーと別称した移動式集材機の普及拡大は1990年代に入ってからである。適用する地形や森林施業の条件に応じて種々の索張り方式が考案されている。アメリカから大正末期に導入されたタイラー、フォーリングブロック、ハイリード、スラックラインなどの方式のほかに、ダブルエンドレス(別称ホイスチングキャレジ)、エンドレスタイラー、モノケーブル、帯広エンドレス、Y型、H型など多数の日本独特の索張り方式とそれぞれの索張り方式に適した搬器(キャレジ)が考案された。無線操縦による自走式搬器や可搬式ウィンチによる木寄せ集材も行われた。
 索道運材は空中に張られたワイヤロープ上の走行用滑車に木材を吊(つ)り下げて運搬する方法で、地形の高低差を利用した無動力の重力式が普通である。動力式は引上げや峰越しの現場で使われる。単径間と多径間、単送式と連送式、普通用材を運搬する重負荷用(重架線)とシイタケ原木などを運ぶ軽負荷用(軽架線)とに分けられる。林道の開設が進むにつれ、日本独特の長距離多径間連送式索道はみられなくなった。
 アメリカ、カナダの太平洋岸沿いの森林地帯では、1960年代後期に気球による集材が実用化された。専用集材機により、木寄せした原木を搬器とともに気球で吊り上げ、気球といっしょに原木をワイヤロープで引き寄せて搬出するものである。[山脇三平]

ヘリコプター運材

奥地の山林から材価の高い原木を搬出するとき、ヘリコプターをチャーターして山元土場や地元市場までの直接運材に利用されている。[山脇三平]

トラクター運材

集材トラクターには、クローラー型とホイール型がある。厳寒の積雪地方では、ボギー式そりを数台連結してクローラー型トラクターで牽引輸送する方法が内外で行われていた。日本でも北海道東部で大正末期から昭和5、6年(1930、31)ごろまで行われた。現在では、木材を集材トラクターの後部ウィンチで木寄せし、インテグラルアーチ(トラクター付属の半吊り用背負い装置)によって半載荷式に木材の前端を持ち上げて地引き牽引する方法(地引き集材)が世界中で広く行われている。
 またパンとよばれる鋼製玉ぞりに被牽引材の前端をのせてトラクターで牽引するパン集材、サルキとよばれる二輪車のアーチで木材の前端を持ち上げてトラクターで牽引するサルキ集材などの方法がある。
 林内作業車とよばれるホイール型四輪駆動車、三輪トレーラー、クローラー型車などの小型運材車を使って短距離運材する方法は、間伐材の搬出などに盛んに使われてきた。林内の木寄せに、運転席背後の自載用クレーンで荷台に玉切材を自載して短距離運搬するフォワーダー(木寄せ集材車)が使われている。一般用材の伐倒木寄せにフェラーバンチャー、ツリーフェラー、林道端での枝払い・皮剥(かわは)ぎ・玉切にティンバープロセッサーなどの多工程同時処理機械による方法も行われている。2000年代以降、日本の森林地形などの条件に相応した足回りをもたせた多工程同時処理機械が普及しつつある。林道端から間伐材・択伐材の伐倒・木寄せ・玉切・積込を行うロングリーチグラップルプロセッサー、玉切・自載・搬送を行うプロセッサーフォワーダー、伐倒・玉切・自載・搬送を行うハーベスター、無線操縦伐倒装置のフェラーバンチャーロボットなどがみられる。[山脇三平]

トラック運材

道路網の発達に伴い、もっとも広く採用されている長距離運材法である。日本では林道の曲線半径が小さいことなどから、クレーン付き普通型トラックによる運材が行われ、海外ではもっぱら原木運搬専用のトレーラートラックによる運材が行われている。[山脇三平]

軌道運材

2本レールの単線軌道(森林鉄道)による運材とモノレールによる運材とがある。後者は箱型レール上をエンジンカーが2、3台のトレーラーカーを引いて、無人操縦または操縦者が乗車して間伐材・択伐材を短距離搬送する。また、チャンネル型レールを林内の立木を利用して地上2メートルほどの高さに架設し、懸垂式のエンジンカーおよびトレーラーカーで搬送する方法もある。[山脇三平]

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