鎌倉幕府の裁判制度の一つ。鎌倉幕府は当事者の身分によって裁判管轄を定めていたが、13世紀末ごろから、所務(しょむ)沙汰(不動産訴訟)、検断沙汰(刑事訴訟)のように、訴訟対象によって管轄を分け、所務沙汰は引付方(ひきつけかた)、検断沙汰は侍所(さむらいどころ)が管掌した。雑務沙汰はこの両者と並立するもので、鎌倉末期の法律書である『沙汰未練書(さたみれんしょ)』によれば、利銭(りせん)、出挙(すいこ)、替銭(かえぜに)、替米(かえまい)、負物(ふもつ)、借物(しゃくもつ)、預物(よもつ)、放券(ほうけん)、沽却(こきゃく)田畑、奴婢(ぬひ)、雑人(ぞうにん)などに関する訴訟を管轄するとされている。田畑の売買に関する争い、動産や債権債務にかかわる争いを扱うということである。幕府の支配圏に属するこの種の相論は鎌倉の問注所で訴を受理し、審理、判決した。また鎌倉市中の一般民衆間の紛争は政所(まんどころ)が管轄した。訴訟手続は、訴人(原告)が訴状を提出し、論人(ろんにん)(被告)が陳状(答弁書)を出して弁駁(べんばく)するなど、概して所務沙汰と同様であるが、判決書は問注所執事と奉行人(ぶぎょうにん)の連署する下知状(げちじょう)である。六波羅(ろくはら)探題では、検断沙汰とは異なって、雑務沙汰を扱う専門の機関は置かれず、六波羅引付方が管轄した。九州諸国では守護がこれを管掌した。
[羽下徳彦]
鎌倉幕府は14世紀初頭,訴訟対象による裁判管轄の制を設け,所務沙汰(不動産訴訟一般),雑務沙汰,検断沙汰(刑事裁判)とした。当時の幕府訴訟制度を解説した《沙汰未練書》には,(1)利銭,出挙(すいこ),替銭,替米,諸負物,諸預物,(2)奴婢,雑人,勾引(人を誘拐し売買する),(3)沽却田畠,年紀(期限付売買,質入れに類似する),放券(売買証文),の項目を掲げる。(1)は銭貨・動産の貸借・質入れ,(2)は動産視される不自由身分の者の帰属,(3)は土地所有権の権原の存在自体ではなく,売買の事実の有無,証文の真偽等の争訟であるから,全体として債権および動産関係訴訟である。14世紀以降,越前・尾張を境として,東国は鎌倉の問注所,鎌倉市中は政所,西国は六波羅探題,九州は各国守護がこの裁判を管轄したが,一般庶民間の争いはその地域の領主の処置に服したとも思われる。問注所での訴訟手続は所務沙汰に準じ,鎧の所有の争いなどの例がある。
→沙汰
執筆者:羽下 徳彦
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
鎌倉幕府の訴訟の区分の一つ。所務沙汰・検断沙汰と区別され,売買や利銭(りせん)・出挙(すいこ)・負物(ふもつ)・借物(しゃくもつ)などの債権債務に関する訴訟や,奴婢・雑人(ぞうにん)の帰属をめぐる訴訟など。13世紀後半以降,鎌倉市中の雑務沙汰は政所(まんどころ),鎌倉以外の東国では問注所で扱う制度が整った。西国では六波羅の引付および九州諸国の守護が扱った。室町幕府ではこれらの訴訟はもっぱら政所で扱われ,政所沙汰とよばれる。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
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