コトバンクはYahoo!辞書と技術提携しています。

非ユークリッド幾何学 ひユークリッドきかがくnon-Euclidean geometry

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

非ユークリッド幾何学
ひユークリッドきかがく
non-Euclidean geometry

ユークリッドは,その幾何学を展開するにあたって,点Pと,それを通らない直線 l とが与えられた場合に,点Pと直線 l の定める平面上で,「Pを通って l と交わらない直線は1本,そしてただ1本だけ引ける」と仮定した。しかし N.ロバチェフスキーと J.ボーヤイとは,この公理の代りに「Pを通って l と交わらない直線は無数に引ける」と仮定しても,まったく矛盾のない幾何学を展開しうることを示した。これをロバチェフスキー=ボーヤイの非ユークリッド幾何学という。また G.リーマンは,ユークリッドの公理の代りに「Pを通って l と交わらない直線は1本も引けない」と仮定しても,まったく矛盾のない幾何学を展開しうることを示した。これをリーマンの非ユークリッド幾何学という。

出典|ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について | 情報

デジタル大辞泉の解説

ひ‐ユークリッドきかがく【非ユークリッド幾何学】

ユークリッド幾何学平行線公理を、他の公理に置き換えて体系化した幾何学。ボヤイ=ロバチェフスキー幾何学(双曲幾何学)・リーマン幾何学楕円幾何学)など。これによれば、一直線外の一点を通りこれに平行な直線は1本とは限らず、三角形の内角の和は二直角にはならない。

出典|小学館デジタル大辞泉について | 情報 凡例

百科事典マイペディアの解説

非ユークリッド幾何学【ひユークリッドきかがく】

ユークリッド幾何学の諸公理・公準のうち平行線公理だけを他の公理でおきかえて得られる幾何学。一直線外の一点を通りそれに平行な直線が無数に存在するとするボーヤイとロバチェフスキーの双曲的非ユークリッド幾何学と,平行な直線が1本も存在しないとするリーマンの楕円的非ユークリッド幾何学がある。
→関連項目幾何学球面幾何学空間(哲学)空間(数学)公理射影幾何学数学平行ボーヤイロバチェフスキー

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト百科事典マイペディアについて | 情報

世界大百科事典 第2版の解説

ひユークリッドきかがく【非ユークリッド幾何学 non‐Euclidean geometry】

〈平面上で,直線外の1点を通って,この直線と交わらない直線はただ一つ存在する〉という,いわゆる平行線公理が成り立つ幾何学をユークリッド幾何学と呼ぶ。これに対し,平行線公理が成り立たないような幾何学を非ユークリッド幾何学という。ユークリッド幾何学は前300年ころに書かれたユークリッドの《ストイケイア》によって確立されたが,非ユークリッド幾何学の誕生は19世紀においてであり,その間には長い苦渋の歴史があった。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

大辞林 第三版の解説

ひユークリッドきかがく【非ユークリッド幾何学】

ユークリッド幾何学における平行線の公理「直線 a 上にない一点 p を通って a に平行な直線はただ一本しか引けない」を否定し、「 a に平行な直線を無数に引くことができる」または「 a に平行な直線は存在しない」という公理に置き換えて成立する幾何学。ロバチェフスキー・ボーヤイ・リーマンらにより研究された。

出典|三省堂大辞林 第三版について | 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

非ユークリッド幾何学
ひゆーくりっどきかがく
non-Euclidean geometry

楕円(だえん)幾何学と双曲幾何学を総称して非ユークリッド幾何学という。ユークリッド幾何学の公理系のなかで、いわゆる平行線の公理の独立性が古くから疑問視されていたが、19世紀に入ってその独立性が証明され、2種類の新しい幾何学が建設された。ロバチェフスキーとボヤイによる双曲幾何学(1820年代)とリーマンによる楕円幾何学(1854)である。ユークリッド幾何学の公理系において、平行線の公理を「直線外の1点を通ってこの直線と交わらない直線が少なくとも2本存在する」で置き換えて得られる公理系が双曲幾何学を、また、「二直線はかならず交わる」で置き換えて得られる公理系が楕円幾何学を与える。ユークリッド幾何学を放物幾何学とよぶこともある。双曲幾何学と楕円幾何学をあわせて非ユークリッド幾何学とよばれているが、ユークリッド幾何学に非(あら)ざる幾何学は今日ではこの2種以外にたくさん存在するので、この名称は適当とはいえない。
 非ユークリッド幾何学は歴史的には公理論的に構成されたが、現代的な見地では、非ユークリッド幾何学はリーマン幾何学の特殊な例ないしは典型的なモデルとみなされる。正の定曲率空間、すなわち球面(または射影空間)上のリーマン幾何学が球面幾何学(または楕円幾何学)であり、負の定曲率空間、すなわち双曲空間上のリーマン幾何学が双曲幾何学である。また、ゼロの定曲率空間、すなわちユークリッド空間上のリーマン幾何学がユークリッド幾何学である。公理論的構成法においては、直線、平面などの基本的な概念が無定義要素であるのに対して、リーマン幾何学の立場ではこれらは具体的に定義される。たとえば、直線は2点を結ぶ局所最短線、すなわち測地線として定義される。
 各幾何学は次のような特徴をもつ。ユークリッド幾何学では、〔1〕いくらでも離れた2点がある。〔2〕測地線の長さは無限大。〔3〕2点を通る測地線はただ1本。〔4〕いわゆる、平行線の公理が成り立つ。〔5〕三角形の内角の和がπ。
 球面幾何学では、〔1〕任意の2点間の距離には上限がある。〔2〕測地線は閉曲線で長さ一定。〔3〕2点を通る測地線はただ1本とは限らない。〔4〕2本の測地線はかならず交わる。〔5〕三角形の内角の和がπより大。
 双曲幾何学では、〔1〕いくらでも離れた2点がある。〔2〕測地線の長さは無限大。〔3〕2点を通る測地線はただ1本。〔4〕測地線外の1点を通ってこの測地線と交わらない測地線が無数に存在する。〔5〕三角形の内角の和がπより小。
 クラインの見地では、射影空間とそれに作用する正定値二次形式を不変にする射影変換全体のなす群によって決まる古典幾何学が楕円幾何学、球体とそれに作用するローレンツ型二次形式を不変にする射影変換全体のなす群で決まる古典幾何学が双曲幾何学である。[荻上紘一]
『滝沢精二著『幾何学入門』(1967・朝倉書店)』

出典|小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について | 情報 凡例

世界大百科事典内の非ユークリッド幾何学の言及

【幾何学】より

…これを継承して,シュタイナーJ.Steiner(1796‐1863)は二次曲線や二次曲面も射影的に扱えることを示し,A.F.メービウスやJ.プリュッカーは座標を導入して射影幾何学を解析幾何学として建設し,またシュタウトK.G.C.von Staudt(1798‐1867)はデザルグの定理を基としてそれを総合幾何学として建設した。
[非ユークリッド幾何学]
 ユークリッドがあげた5個の公準のうち,第5番目のものは〈1直線が2直線と交わり,同じ側の内角の和が2直角より小ならば,2直線は限りなく延長するとその側で交わる〉と述べられている。この公準は他の公準に比べてすこぶる複雑で,その自明性に疑いがもたれた。…

【空間】より

…それは,空間関係を表現するための幾何学の多元性が認められたことである。空間関係は,ギリシア以来ユークリッドの幾何学によって一義的に記述されると考えられてきたが,19世紀に至って,非ユークリッド幾何学が出現して,空間関係の記述方法が幾通りもありうることが明らかになった。このことがのちに20世紀に入ってもう一つの空間概念の大きな変革を支えることになった。…

【数学】より

…上の仮定のもとでは三角形の内角の和は2直角より小さくなるが,球面幾何学と多くの類似点をもつ幾何学が構成されることが示されたのである。このように平行線の公理を否定した命題を仮定した幾何学を非ユークリッド幾何学といい,それに対して《ストイケイア》に見られるような幾何学をユークリッド幾何学という。ガウス自身大きな三角形について実測し,その内角の和と2直角との差を調べたが,それは誤差の範囲内にあって,現象空間でどちらの幾何学が成り立つかについての結論は得られなかった。…

※「非ユークリッド幾何学」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

非ユークリッド幾何学の関連キーワードボヤイ(Bolyai Farkas)ボヤイ(Bolyai János)コンベンショナリズムエルランゲン目録ポアンカレの表示佐藤三郎(2)タイム・マシン空間(数学)幾何学基礎論平行線の公理サッケーリランベルト科学と仮説数理物理学絶対幾何学ベルトラミ佐藤 三郎サッケリ西内貞吉理想点

今日のキーワード

所信表明演説

政府の長が施政に関する考え方を明らかにするために行う演説。日本の国会では、臨時国会や特別国会の冒頭に内閣総理大臣が衆議院および参議院の本会議場で行い、当面の問題を中心にその国会における内閣の方針を示す...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android