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平安初期の仏教書。最澄(さいちょう)著。3巻。最澄は仏教による護国を実現するためには、純粋な大乗の菩薩(ぼさつ)僧の養成が不可欠であると考えた。そこで比叡山(ひえいざん)に新たに大乗の戒律だけによる受戒によって僧の資格を与える大乗戒壇の設立を志し、天台宗の僧の養成の規則(『山家学生式(さんげがくしょうしき)』)の認可を朝廷に請うた。奈良の仏教界はこれに対して強く反対したため、僧綱(そうごう)の四条式(山家学生式の一つ)への批判に対して最澄が反駁(はんばく)を加えながら、戒律思想を詳説したのが本書である。全体を5篇(へん)に分かち、56明拠(明らかな証拠)をあげて、大乗の寺院のあり方、『梵網経(ぼんもうきょう)』に説かれている大乗の僧の戒律、受戒の儀式の仕方、そのほか関連する事項について説かれている。819年(弘仁10)に著し、翌年朝廷へ提出した。なお、大乗戒壇設立は、最澄没後7日目の822年6月11日に許可された。
[田村晃祐]
『安藤俊雄・薗田香融校注『最澄』(『日本思想大系4』1974・岩波書店)』
僧綱の批判に応えて天台大乗戒壇独立の論拠を提示した書。3巻。最澄(さいちょう)著。819年(弘仁10)成立,翌年上奏。819年に最澄の提出した「山家学生式(さんげがくしょうしき)」四条式に対し,僧綱は批判の上表文と奏文を提出した。本書は第1編で上表文への反批判,第2編から第5編は四条式各条に相応するかたちで奏文への反批判を展開。日本では比叡山だけが一向大乗寺であること,大乗の大僧戒は「梵網(ぼんもう)経」の十重四十八軽戒であるべきこと,時代相応の僧とは大乗戒をうけ12年間籠山した菩薩僧であることなどを論じ,天台大乗戒壇独立の必要性を訴えるとともに,それが桓武天皇の遺志にもそうものとした。「日本思想大系」所収。
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