顕戒論(読み)ケンカイロン

デジタル大辞泉 「顕戒論」の意味・読み・例文・類語

けんかいろん【顕戒論】

平安初期の仏教書。3巻。最澄著。弘仁11年(820)成立。南都諸宗の論難論駁ろんばくし、天台円戒の特色を明らかにして、天台宗成立の根拠となった書。

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精選版 日本国語大辞典 「顕戒論」の意味・読み・例文・類語

けんかいろん【顕戒論】

  1. 天台宗の開祖最澄の著。三巻。弘仁一一年(八二〇)成立。最澄の山家学生式の一つ四条式に対する僧綱反論を逐一論駁して、天台円戒の特色を明らかにし、天台宗独立のもとを作った書。

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改訂新版 世界大百科事典 「顕戒論」の意味・わかりやすい解説

顕戒論 (けんかいろん)

天台宗の開祖最澄の著書,3巻。最澄は819年(弘仁10)かねてより念願の〈菩薩僧〉の養成をめざし《天台法華宗年分度者回小向大式(四条式)》を制定比叡山大乗戒壇設立を朝廷に申請した。これに対して南都の僧綱(そうごう)は護命(ごみよう)以下6名が連署して抗論した。そこで最澄は翌年,僧綱の意見に逐一批判を加え,あらためて《四条式》の趣旨を詳しく論証したのが本書である。最澄の主張は,出家僧の受ける戒を小乗の具足戒(二百五十戒)から大乗菩薩戒(十重四十八軽戒)にかえるという,当時の戒律観を転倒させる画期的なものであった。大乗戒壇の設立は,822年最澄の死後7日目に勅許が下った。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「顕戒論」の意味・わかりやすい解説

顕戒論
けんかいろん

平安初期の仏教書。最澄(さいちょう)著。3巻。最澄は仏教による護国を実現するためには、純粋な大乗の菩薩(ぼさつ)僧の養成が不可欠であると考えた。そこで比叡山(ひえいざん)に新たに大乗の戒律だけによる受戒によって僧の資格を与える大乗戒壇の設立を志し、天台宗の僧の養成の規則(『山家学生式(さんげがくしょうしき)』)の認可を朝廷に請うた。奈良の仏教界はこれに対して強く反対したため、僧綱(そうごう)の四条式(山家学生式の一つ)への批判に対して最澄が反駁(はんばく)を加えながら、戒律思想を詳説したのが本書である。全体を5篇(へん)に分かち、56明拠(明らかな証拠)をあげて、大乗の寺院のあり方、『梵網経(ぼんもうきょう)』に説かれている大乗の僧の戒律、受戒の儀式の仕方、そのほか関連する事項について説かれている。819年(弘仁10)に著し、翌年朝廷へ提出した。なお、大乗戒壇設立は、最澄没後7日目の822年6月11日に許可された。

[田村晃祐]

『安藤俊雄・薗田香融校注『最澄』(『日本思想大系4』1974・岩波書店)』


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山川 日本史小辞典 改訂新版 「顕戒論」の解説

顕戒論
けんかいろん

僧綱の批判に応えて天台大乗戒壇独立の論拠を提示した書。3巻。最澄(さいちょう)著。819年(弘仁10)成立,翌年上奏。819年に最澄の提出した「山家学生式(さんげがくしょうしき)」四条式に対し,僧綱は批判の上表文と奏文を提出した。本書は第1編で上表文への反批判,第2編から第5編は四条式各条に相応するかたちで奏文への反批判を展開。日本では比叡山だけが一向大乗寺であること,大乗の大僧戒は「梵網(ぼんもう)経」の十重四十八軽戒であるべきこと,時代相応の僧とは大乗戒をうけ12年間籠山した菩薩僧であることなどを論じ,天台大乗戒壇独立の必要性を訴えるとともに,それが桓武天皇の遺志にもそうものとした。「日本思想大系」所収。

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百科事典マイペディア 「顕戒論」の意味・わかりやすい解説

顕戒論【けんかいろん】

仏書。3巻。最澄(さいちょう)の著(820年)。819年上奏した大乗戒壇設立の願文《四条式》に対する南都諸宗の論難に反論し,大乗戒の思想を端的に語り,新教団設立を朝廷に訴えたもの。《山家学生式(さんげがくしょうしき)》とともに天台教学の根本理論を展開したもの。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「顕戒論」の意味・わかりやすい解説

顕戒論
けんかいろん

最澄の著作。3巻。弘仁 10 (819) 年成立。大乗戒壇設立に対する南都諸宗の論難に対し,大乗戒が経論に基づいた根拠あるものであることを説き明かし,新教団の設立許可を時の政府に訴えたもの。日本の天台宗が成立するための根本理論が述べられている。

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旺文社日本史事典 三訂版 「顕戒論」の解説

顕戒論
けんかいろん

平安前期,最澄が著した宗論書
820年刊。3巻。大乗戒壇設立に対して南都諸宗が反対したのに論駁し,大乗戒は経論で明示されていることを示した。『山家学生式 (さんげがくしようしき) 』とともに日本天台宗成立に関する重要文献。

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