風流志道軒伝
ふうりゅうしどうけんでん
風来山人(平賀源内)作の滑稽本(こっけいぼん)。5巻5冊。1763年(宝暦13)江戸刊。浅草観音の境内で猥雑(わいざつ)滑稽の辻(つじ)講釈を行って当時評判の舌耕師深井志道軒を主人公に借り、その若年時の諸国遍歴を仮構して、当時の世相をうがった作品。舞台を大人国、小人国、女護島(にょごがしま)などにとり、読者の興味をひきながら、談義本風にさまざまな寓意(ぐうい)を込めるが、金龍道人作の漢文伝記『志道軒伝』(1748)の名前を借りて、それを風流に和らげることを企てたものと思われる。後年「平賀振り」と評される彼独特の鋭い風刺性はいまだ、やや影をひそめている感がある。大田南畝(なんぽ)(蜀山人(しょくさんじん))の『金曽木(かなそぎ)』によれば、源内は志道軒に入門を請(こ)うたともいわれ、本書口絵に載せる志道軒の肖像は冒頭の文章とともに彼の風貌(ふうぼう)を今日に伝えている。
[中野三敏]
『中村幸彦校注『日本古典文学大系55 風来山人集』(1961・岩波書店)』
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「風流志道軒伝」の意味・わかりやすい解説
風流志道軒伝【ふうりゅうしどうけんでん】
風来山人(平賀源内)の談義本。5巻。1763年刊。当時実在した談義僧(講釈師)深井志道軒を主人公に仕立て,浅草観音の申し子志道軒こと浅之進が,仙人から授けられた羽扇に乗って諸国の遊里を訪れ,さらに大人国や小人国等を経て女護島に漂着の末,気がつくと浅草寺内で講釈を始めようとしていたという筋。各所で世相を風刺している。
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ふうりゅうしどうけんでん フウリウシダウケンデン【風流志道軒伝】
江戸中期の談義本。五巻五冊。風来山人(平賀源内)作。宝暦一三年(一七六三)刊。当時著名な辻講釈師深井志道軒を主人公にかり、その異国遍歴を通して、当時の世相をうがち風刺した作品。舞台を大人国、小人国、女護島などにおいて読者の興味をひき、そこに寓意、風刺をこめた。
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風流志道軒伝
ふうりゅうしどうけんでん
滑稽本。風来山人 (平賀源内 ) 作。5巻5冊。宝暦 13 (1763) 年刊。浅草奥山で評判を呼んでいた講釈師深井志道軒を主人公に,その諸国遍歴を描くことを通して世相を風刺しようとしたもの。
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デジタル大辞泉
「風流志道軒伝」の意味・読み・例文・類語
ふうりゅうしどうけんでん〔フウリウシダウケンデン〕【風流志道軒伝】
談義本。5巻。風来山人(平賀源内)作。宝暦13年(1763)刊。当時実在した辻講釈師深井志道軒の伝記の形で世相を風刺したもの。
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ふうりゅうしどうけんでん【風流志道軒伝】
談義本。風来山人(平賀源内)作。1763年(宝暦13)刊。5巻。《根南志具佐(ねなしぐさ)》に続く平賀源内の2作目の小説。当時浅草の境内で滑稽な身ぶりで世相の風刺をしている深井志道軒という講釈師がいたが,源内はこれにほれこみ,この志道軒を天才に仕立てその経歴を小説にした。若いとき僧侶になろうと思っていた志道軒の前に,風来仙人が現れ,もっと経験を豊富にせよと諭す。そこで仙人の羽扇を借り,その力で日本全国から,さらに大人国,小人国,長脚国,穿胸国,唐などを遍歴し,日本に帰る途中女人国にたどりつく。
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