作物に暴風の被害がないように祈願する祭り。台風の来襲時期とされる二百十日前後に行うことが多い。旧暦8月1日ころになるので,八朔(はつさく)の行事にもなっている。普通,風日待(かざひまち)といって,仕事を休み,村人が集まって飲食をしたり,風止め籠りなどと称して村の神社にお籠りをするなど,簡単な神祭りの形式をとる。新潟県の弥彦神社の二百二十日の風祭や,兵庫県の伊和神社の二百十日の7日前の風鎮祭など,神社の神事にもなっている。新潟県で風の神の〈風の三郎〉を,旧暦6月27日に小屋を作ってまつり風除けを祈ったのは,やや早い例である。上代から,風水害を防ぐためにまつられた奈良県の竜田大社の風の神の祭りは,旧暦4月と7月の4日で,稲の田植前と,台風の季節に当たる。熊本県の阿蘇神社の風の宮の祭りも同じ日で,神殿の辛櫃(からびつ)の中に供えた赤飯の丸い握飯が,次の祭りまでにこわれていると,風雨の害があると伝える。
執筆者:小島 瓔禮
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風害防除の祈願。稲への害をとくに恐れるため、収穫を直後に控えて台風の被害が憂慮される八朔(はっさく)や二百十日およびその前後に行われ、共同祈願の形式をとることが多い。方法は、村人が神社や堂で忌籠(いみごも)り精進(しょうじん)したり、獅子舞(ししまい)や囃子(はやし)を奉納して無事を祈ること、大注連縄(おおしめなわ)を村の入口に張り渡して風の悪霊の入来を防ぐこと、大声で騒ぎたてたり、藁(わら)人形に悪神を負わせて辻(つじ)や村境に送り出そうとするなど、土地によってさまざまである。社寺からの風除(よ)けの神札を田畑に立てることや、草刈鎌(かま)を庭先高く掲げて吹く風を切り払おうとする呪術(じゅじゅつ)も広く行われる。古来から有名な奈良県の龍田(たつた)大社や伊勢(いせ)の風の宮、各地の穴師(あなし)神社など、風の神を祀(まつ)る神社に参ったり、村単位で風神宮という小祠(しょうし)を祀る所も各地にある。また、富山県には風の神を祀る「ふかぬ堂」が十数か所あるし、新潟県には風の三郎なるものを祀る小祠や、風袋を背負っている風神(ふうじん)の石像も少なくなく、祈願の対象とされている。これらは農民のものであるが、かつては、山から吹き下ろす風を求めて「たたら」に利用しようとする製鉄業者などの風に対する別の観念の存在したことも、予想される。
[田中宣一]
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… 《十訓抄(じつきんしよう)》には,信濃の国は風早き所なので,〈風の祝(はふり)〉という神職を置き,100日間忌みこもることが記されている。古くから風祭が行われていたことが知られる。〈風の又三郎〉は東北地方でいう妖怪で,新潟県などでいう〈風の三郎様〉とともに,風の神としてまつられる。…
…9月1日ごろになる。220日目の二百二十日とともに,台風が来襲する厄日とされ,この日を中心にして風の害を防ぐための風祭(かざまつり)を行う風習があった。古来,稲の穂ばらみ期であるので,暴風を警戒したといわれる。…
…これら贈答の習俗は上流文化の影響というが,室町時代に盛行した〈たのみ〉〈たのも〉などという進物を贈答し合う風は,農村に基盤をもつ武家の風が取り入れられたものといわれ,農作を助け合った間柄で,神供としての田実,すなわち初穂などを贈り合ったことに源があるのではないかとされている。豊作祈願と風祭をかねて宮籠りをする所や嫁の里帰りの日とする所もある。八朔を昼寝の終期,夜なべの初日とする所の多いのは,これ以後が本格的な収穫期に入るからだろう。…
※「風祭」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
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