高エネルギー加速器研究機構(読み)こうエネルギーかそくきけんきゅうきこう

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

高エネルギー加速器研究機構
こうエネルギーかそくきけんきゅうきこう

文部科学省所轄の全国大学共同利用の研究所。1997年に高エネルギー物理学研究所東京大学原子核研究所および理学部附属中間子科学研究センターを,茨城県の筑波研究学園都市にある旧高エネルギー物理学研究所のキャンパスに統合し組織し直した。略称 KEK素粒子原子核研究所物質構造科学研究所の 2研究所,加速器研究施設,共同研究施設からなる。電子・陽電子衝突型加速器トリスタンのトンネルを利用して 1998年には 80億eVの電子と 35億eVの陽電子を衝突させる衝突型加速器 KEKBが完成,衝突で生成される B中間子を用いて CP対称性荷電共役変換×空間反転に関する対称性)の破れが研究されている。また放射光中性子,ミューオンビームを用いた物理学,化学,工学,生物学,医学,農学の広範な分野での研究も行なわれている。

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デジタル大辞泉の解説

こうエネルギーかそくきけんきゅう‐きこう〔カウ‐カソクキケンキウ‐〕【高エネルギー加速器研究機構】

高エネルギー加速器による素粒子原子核・物質の構造や機能に関する研究、および高エネルギー加速器の性能の向上を図るための研究を行う大学共同利用機関法人素粒子原子核研究所物質構造科学研究所の2つの大学共同利用機関と加速器研究施設・共通基盤研究施設、および大強度陽子加速器施設(J-PARC(ジェーパーク))によって構成される。KEK(ケイイケイ・ケック)。高エネ研。→Bファクトリー

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百科事典マイペディアの解説

高エネルギー加速器研究機構【こうエネルギーかそくきけんきゅうきこう】

大学における学術研究の発展などに資するために設置された大学共同利用機関が2004年4月に法人化されたのに伴って,新たに発足した四つの大学共同利用機関法人の一つ。略称KEK。高エネルギー加速器を使った素粒子,原子核の実験や理論研究のほか,物質の構造・機能に関する実験や理論研究,加速器の性能向上など,加速器科学に関する研究の国内における拠点となっている。素粒子原子核研究所物質構造科学研究所のほか,加速器研究施設共通基盤研究施設がある。1997年に旧高エネルギー物理学研究所,東京大学原子核研究所,東京大学理学部附属中間子科学研究センターなどを改組して文部省(現文部科学省)所管の大学共同利用機関となった。総合研究大学院大学を構成する機関の一つとして,大学院生に対する教育機関としての役割も担っている。初代機構長,戸塚洋二。本部事務局の所在地は茨城県つくば市。
→関連項目トリスタンBファクトリー

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

高エネルギー加速器研究機構
こうえねるぎーかそくきけんきゅうきこう

国立大学法人法に基づき2004年(平成16)に発足した大学共同利用機関法人の一つ。英語名はHigh Energy Accelerator Research Organizationであるが、日本語のローマ字表記Kou Enerugi Kasokuki Kenkyukikouの頭文字をとり、KEK(ケック)とよばれている。本部は茨城県つくば市に所在。前身は、1955年(昭和30)に設立された東京大学原子核研究所、および1971年に設立された高エネルギー物理学研究所で、1997年(平成9)に改組・統合されて発足、2004年に大学共同利用機関法人となった。総合研究大学院大学の高エネルギー加速器科学研究科の構成機関として博士課程教育も行っている。
 電子、粒子などを高速に加速したうえで衝突させる高エネルギー加速器を用い、物質の根源である素粒子、原子核の存在などに関する研究のほか、生命体を含む物質の構造、機能、加速器の性能向上に関する研究を行う日本を代表する研究機関である。
 二つの研究所と二つの研究施設をもつ。素粒子原子核研究所は、素粒子や原子核のふるまいを探り、物質の根源や宇宙生誕の謎(なぞ)に迫る研究を理論・実験の両面で進める。物質構造科学研究所は、加速器から発生する放射光、中性子、ミューオン(ミュオン)、低速陽電子を利用し、高分子、ミクロの生体分子の構造、機能の解明を行っている。共通基盤研究施設、加速器研究施設は、加速器の性能を向上させるための超伝導、コンピュータ計測などの基盤技術、最先端の加速器開発を担う。このほか、2006年から茨城県東海村において、日本原子力研究開発機構(JAEA)と共同で大強度陽子加速施設「J-PARC(ジェーパーク):Japan Proton Accelerator Research Complex」を運営している。
 KEKはノーベル賞につながる多くの研究成果を出している。1999年から2010年まで稼働した円形の衝突型加速器KEKB(ケックビー)(Bファクトリー)にはBelle(ベル)測定器が搭載されており、この測定器で「B中間子」「反B中間子」の崩壊過程を観察したBelle実験では、小林誠、益川敏英(ますかわとしひで)が1973年に予言した「CP対称性の破れ」を実証し(2001年に論文を発表)、二人の2008年ノーベル物理学賞受賞に貢献した。また、放射光加速器のフォトンファクトリー(PF)においてリボソームの研究を10年近く行ったイスラエルのアダ・ヨナットは、2009年に「リボソームの構造と機能に関する研究」の功績でノーベル化学賞を受賞した。さらに、2015年に「ニュートリノ振動の発見」でノーベル物理学賞を受賞した梶田隆章(かじたたかあき)のT2K(ティーツーケー)実験(2009~)も行われている。これは、J-PARCのMRシンクロトロン加速器で人工的につくりだした素粒子のニュートリノを、約295キロメートル離れた岐阜県飛騨(ひだ)市神岡町の地下1000メートルにある測定装置「スーパーカミオカンデ」に照射し、ニュートリノが質量をもつことで種類を変えるニュートリノ振動を確かめた実験である(T2KはTokai To Kamiokaの略)。
 KEKでは、多くの国際研究協力が行われ、スイスにあるCERN(セルン)(ヨーロッパ原子核研究機構)と並び、国際拠点の一つとなっている。[玉村 治]

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