国立大学法人法に基づいて設置された、大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(KEK(ケック))傘下の国立の研究所である。英語名はInstitute of Particle and Nuclear Studies、略称は素核研、IPNS。1971年(昭和46)にKEK(当時の名称は高エネルギー物理学研究所)が創設され、さらに発展的に1997年(平成9)に当研究所が設置された。所在地は茨城県つくば市。
地球を含めた、宇宙に存在するありとあらゆる物質は、素粒子から構成されている。この物質の根源である素粒子やそれが集まった原子核などが互いに及ぼしあっている力について研究することで、極微の世界の謎(なぞ)の解明、宇宙の誕生直後の再現を目ざす。素粒子がどう形成され、相互に関与するのか、それを加速器とよばれる装置を使って、明らかにしていく研究所である。
KEKで使う加速器は電子や陽子などの粒子を光の速度近くまで加速し、高いエネルギーの状態をつくりだす装置である。世界最高の衝突性能を誇る周長約3キロメートルの電子・陽電子衝突型加速器(KEKB(ケックビー))を用いた国際共同実験(Belle(ベル)実験)には、世界15か国から約400人の研究者が参加した。Bell実験では、小林誠、益川敏英(ますかわとしひで)が1973年に予言した「CP対称性の破れ」(小林・益川理論)を実証し、二人の2008年(平成20)ノーベル物理学賞受賞に貢献した。
2010年に役割を終えたKEKBの後継加速器である「SuperKEKB(スーパーケックビー)」が2018年3月から運用を開始した。SuperKEKBでは、70億電子ボルトの電子と40億電子ボルトの陽電子を衝突させるが、ビームの衝突点を囲むようにBelleⅡ(ベルツー)測定器が設置されている。BelleⅡ測定器は、縦、横、高さ約8メートル、重さ1400トンにも及ぶ巨大測定器で、これを利用して、B中間子崩壊の模様など素粒子反応の観察を進めている。BelleⅡ測定器を搭載したSuper KEKB加速器での実験は、「BelleⅡ実験」とよばれ、世界25か国・地域から750人以上の研究者が参加している。
高エネルギー加速器による素粒子物理学、原子核物理学の研究に、実験・理論の両面から幅広く取り組んでおり、その成果は世界トップレベルとして評価されている。
ビーム衝突型加速器、大強度陽子加速器のつくる多様なビームを用いた物理学研究と、実験装置や手法の開発・応用を含む関連物理学の総合的研究を進めて、宇宙の起源、物質や生命の根源を探求している。
[馬場錬成・玉村 治 2018年7月20日]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
米テスラと低価格EVでシェアを広げる中国大手、比亜迪(BYD)が激しいトップ争いを繰り広げている。英調査会社グローバルデータによると、2023年の世界販売台数は約978万7千台。ガソリン車などを含む...
11/21 日本大百科全書(ニッポニカ)を更新
10/29 小学館の図鑑NEO[新版]動物を追加
10/22 デジタル大辞泉を更新
10/22 デジタル大辞泉プラスを更新
10/1 共同通信ニュース用語解説を追加