素粒子理論物理学者。愛知県名古屋市生まれ。1967年(昭和42)、名古屋大学理学部物理学科卒業。1972年に名大大学院理学研究科を修了して理学博士。京都大学理学部助手を経て、1979年に高エネルギー物理学研究所助教授。1985年に教授。1989年(平成1)に同研究所物理第二研究系研究主幹。同研究所の改組により、高エネルギー加速器研究機構素粒子原子核研究所物理第二研究系研究主幹、2006年より同研究機構名誉教授。
名古屋大学で素粒子理論を研究していた坂田昌一(しょういち)の研究室で、大学院生として勉強していた。助手であった益川敏英(ますかわとしひで)らと盛んに激論を交わす。益川とともに京都大学で助手を務めていたころ、粒子と、電荷が反対の反粒子とで、壊れ方などに違いがあるという「CP対称性の破れ」が実験で確認されたと聞き、それがなぜかを説明できる理論を益川とつくりあげた。その過程で、原子核を構成する基本粒子である「クォーク」は6種類あることを予言。これが1973年に発表された「小林・益川理論」で、素粒子の性質を説明する「標準理論」の要(かなめ)になっている。6種類目のクォークは1994年にアメリカのフェルミ研究所で発見され、小林・益川理論は、さらに確かなものになっている。「クォークが自然界に少なくとも3世代以上あることを予言する、対称性の破れの起源の発見」により、2008年、益川敏英とともにノーベル物理学賞を受賞した。なお、素粒子物理学と核物理学における自発的対称性の破れを発見した南部陽一郎も同時受賞した。2001年度の文化功労者。2008年文化勲章を受章。2010年学士院会員となった。
[馬場錬成]
『小林誠著『消えた反物質 素粒子物理が解く宇宙進化の謎』(講談社ブルーバックス)』
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