高良山の中腹、
創建は「履中天皇元年庚子」と伝えるが(鏡山系譜)、「肥前国風土記」基肄郡条に景行天皇が「御井郡高羅之行宮」で筑肥の経営を行ったとある。主神高良玉垂命は景行の子孫と称する筑後の水沼君の祖先神とも考えられるが、諸説がある。延暦一四年(七九五)「高良神」が従五位下に叙され(「日本紀略」同年五月六日条)、弘仁九年(八一八)には「御井郡高良玉垂命神」が名神に列している(同書同年一一月一六日条)。嘉祥三年(八五〇)高良玉垂命神は従四位上となり(「文徳実録」同年一〇月七日条)、斉衡二年(八五五)位田四町が加えられ(同書同年五月二〇日条)、天安元年(八五七)「従三位高良玉垂命名神」に封戸・位田が与えられた(同書同年一〇月三日条)。貞観六年(八六四)正二位(「三代実録」同年七月二七日条)、同一一年に従一位と神階を進め(同書同年三月二二日条)、寛平九年(八九七)正一位が授けられたという(天慶七年四月二二日「筑後国神名帳」高良山文書/久留米市史7 資料編古代・中世)。「延喜式」神名帳に
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
福岡県久留米市に鎮座。高良玉垂(こうらたまだれ)命を主神とし,左相殿(あいどの)に八幡大神を,右相殿に住吉大神をまつる。社記によれば履中天皇のとき創建というが,筑後平野にのぞむ高良山中腹に鎮座する本社には,社殿の背後より山裾まで1.5kmに及ぶ列石神籠石(こうごいし)(国指定史跡)があり,古い時代の創建とみられる。歴代皇室の崇敬をうけ,795年(延暦14)従五位下よりしだいに昇進,869年(貞観11)従一位,さらに897年(寛平9)正一位,延喜の制で名神大社とされた。筑後国の一宮,さらに九州総社,鎮西11ヵ国の宗廟と称され,鎌倉時代まで造営はすべて勅裁により行われ,文永・弘安の役には勅使が参向して祈願をした。中世南北朝の争乱期に,少弐,菊池,大友,島津氏らがここに陣し,祭事にもあたった。近世に入っては歴代久留米藩主の崇敬をうけた。例祭10月9,10,11日,俗におくんちと呼ばれ,現在神幸祭は中止されているが,中世には供奉の士卒ら1000余人におよぶ盛儀であった。
特殊神事も多く,そのうち川渡(へこかき)祭(6月1,2日)は厄祓い,延命長寿祈願,なかでも7歳の厄祓い,60歳還暦の長寿祈願でにぎわい,粥炊き祭(1月16日)で粥占の粥をたき,田植神事をなし,初午祭(旧暦初午の日)に,さきの粥炊き祭の粥を神座近くよりとり出して,その年の豊凶作を占う。宝物に覚一本《平家物語》などがある。旧国幣大社。
執筆者:鎌田 純一
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福岡県久留米(くるめ)市御井(みい)町に鎮座。高良玉垂命(たまだれのみこと)を主神とし、相殿(あいどの)に八幡(はちまん)大神、住吉(すみよし)大神を奉斎している。高良玉垂命は、古くより高良山(こうらさん)に鎮まり、奇(く)しき恵みを万民に垂れる筑紫(つくし)の国魂(くにみたま)の神であるという。社伝によれば、当社の創建は、履中(りちゅう)天皇元年という。673年(天武天皇2)2月、神主物部道麿(もののべみちまろ)の子美濃里麿(みのりまろ)に神託があり、それによって大祝(おおはうり)家三男隆慶(りゅうけい)を社僧にしたという。その子孫は江戸時代前まで48世続き、盛時には当社の神宮寺御井寺(みいでら)の座主(ざす)として1000余名の僧徒を支配した。桓武(かんむ)天皇の代の795年(延暦14)5月、従(じゅ)五位下に、以後たびたびの昇叙があり、宇多(うだ)天皇の代の897年(寛平9)には正一位となった。『延喜式(えんぎしき)』神名帳には、「高良玉垂命神社」の名でみえ、名神(みょうじん)大社に列する。筑後(ちくご)国の一宮(いちのみや)。旧国幣大社。例祭は10月9~11日。6月1、2日の川渡祭(かわたりさい)は無病息災と寿命長久を祈願する行事で、俗にへこかき祭といわれる。現社殿は1660年(万治3)久留米藩主有馬頼利(ありまよりとし)の造営になる権現造(ごんげんづくり)で、社宝の紙本墨書平家物語覚一本12冊とともに国の重要文化財に指定されている。なお、高良山西斜面には神籠石(こうごいし)(国史跡)とよばれる環状の列石が連なる。
[落合偉洲]
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