(読み)コン(その他表記)Gǔn

デジタル大辞泉 「鯀」の意味・読み・例文・類語

こん【鯀】

中国古代の伝説上の人物王の父。帝に仕えて大水を治めようとして失敗し、舜帝によって追放されたといわれる。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「鯀」の意味・読み・例文・類語

こん【鯀】

  1. 中国古代の伝説上の人物。夏の禹王(うおう)の父。堯帝に命ぜられ、黄河洪水を治めようとして失敗し、舜帝によって羽山に追放された。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「鯀」の読み・字形・画数・意味


18画

(異体字)
16画

[字音] コン

[説文解字]
[金文]

[字形] 形声
声符は系(けい)。字はまたに作り、玄(げん)声。いずれも、声符としてなお疑問があるが、〔説文〕十一下に「魚なり」とし、系声とする。〔玉〕に「大魚なり」とするのは、〔荘子、逍遥遊〕の文による。神話的な祖神の名で、禹の父とされる。禹も魚婦、あるいは偏枯(へんこ)とよばれ、魚の形とされることもあり、治水神の伝承をもつ。鯀が治水に失敗したあと、禹が水土を平定した。禹は二虫を組み合わせた字で、竜形の神である。

[訓義]
1. うお、大きな魚。
2. 治水神、夏王朝始祖とされる禹の父。治水に失敗して死した。

[古辞書の訓]
字鏡集 オホイヲ

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

改訂新版 世界大百科事典 「鯀」の意味・わかりやすい解説

鯀 (こん)
Gǔn

とも書く。中国の神話にみえる洪水神顓頊せんぎよく)ののちとされるが,顓頊は〈死して蘇(よみがえ)る〉神,すなわち洪水神で,魚形の神であったらしい。鯀は治水に失敗して放逐され,その子である禹(う)が大洪水を治めて夏(か)王朝をひらいた。禹も顓頊と同じように,偏枯(へんこ)にして魚形の神とされる。これらは夏系諸族の伝える洪水神で,夏系の先史文化である彩陶土器の最も早期とされる西安半坡(はんぱ)遺跡出土の土器文様に魚形,人面魚身の多いことが注意される。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「鯀」の意味・わかりやすい解説


こん

中国古代の神話上の人物。大昔、中国が大洪水に覆われた。そのとき鯀は、息壌(そくじょう)といって天の最高主権者である天帝の所蔵する、ほんの一つまみばらまくだけで無限に増えるとされた土を盗み出し、かってにそれを用いて洪水を治めようとした。このため怒った天帝は、祝融(しゅくゆう)に命じて鯀を殺させた。別の神話によれば、鯀は堯帝(ぎょうてい)に治水を命じられたが成功せず、そのため羽山(うざん)に追放されて死ぬが、治水事業はその後を受けた子の禹(う)によって完成されたという。また堯帝が舜(しゅん)に天下を譲ったとき、諸侯にしか任じられなかった鯀はこれを不満として背き、羽山で舜に殺されたという別の伝承もある。鯀の実体はかならずしも明らかではないが、魚偏を伴うその名前の字形や、誅殺(ちゅうさつ)されたとき羽淵(うえん)に入って玄魚(げんぎょ)となったという伝承などから、本来は東方部族が信奉していた水界と関係のある神霊で、のちに中原の神話体系に組み込まれて史実化されるなかで、以上のような伝承になったものといわれている。

[伊藤清司]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

百科事典マイペディア 「鯀」の意味・わかりやすい解説

鯀【こん】

古代中国の洪水神。尭(ぎょう)の命で治水に着手,上帝の息壌(ふえる土)を盗み洪水を防ごうとしたが9年で失敗,羽山で誅殺(ちゅうさつ)された。死体は3年腐らず,刀で腹をさくと(う)が生まれた。魚形,人面魚身で表されることが多い。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

ビャンビャン麺

小麦粉を練って作った生地を、幅3センチ程度に平たくのばし、切らずに長いままゆでた麺。形はきしめんに似る。中国陝西せんせい省の料理。多く、唐辛子などの香辛料が入ったたれと、熱した香味油をからめて食べる。...

ビャンビャン麺の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android