六訂版 家庭医学大全科 「黄斑浮腫の治療」の解説
黄斑浮腫の治療
(眼の病気)
黄斑浮腫は、視力に最も重要な網膜中心部の黄斑に浮腫(むくみ)を来す状態であり、
まず、外科的治療としては、糖尿病網膜症や網膜静脈閉塞症がある場合、
一方、びまん性浮腫と呼ばれ、造影剤のもれが網膜全体から起こっているような場合には、光凝固は有効な治療とならない場合が多く、
硝子体手術にはその他にも、硝子体を切除することにより硝子体に含まれている血管のもれを起こす物質を除去する作用や、網膜と硝子体液が直接触れるようにすることにより酸素の行き渡りをよくする効果などもあり、浮腫を軽減する効果を生んでいます。
しかし、こうした効果により浮腫が改善しても、視力への影響はすぐに現れるわけではなく、1~2年をかけて徐々に視力が改善します。長期間浮腫が持続していた場合には、浮腫がなくなっても視力は変わらないこともあり、視力改善効果は手術1年後で50~60%です。
黄斑浮腫に対しての薬物療法では、抗炎症作用をもつステロイド薬やプロスタグランジン合成阻害薬が以前よりよく使用されています。白内障術後の黄斑浮腫ではプロスタグランジンが眼内で増加することが原因となっていて、プロスタグランジン合成阻害薬の点眼が効果があります。ステロイド薬は内服投与が一般的ですが、全身的な副作用もあり、最近では、トリアムシノロン(ケナコルト)を眼内に注射する方法(硝子体注射)と眼外に局所注射する方法(テノン
浮腫の原因となる血管透過性を抑制する抗VEGF治療薬は黄斑浮腫には保険未承認ですが、最近、試験的に使用されるようになっています。網膜静脈閉塞症では劇的に浮腫を消失させますが、再発があり、注射を定期的に繰り返す必要があります。長期的な予後はまだ明らかになっていません。糖尿病黄斑浮腫に対しては、短期的な効果も不確実です。
また、別のアプローチとして網膜静脈閉塞症の黄斑浮腫は、血栓による静脈閉塞が原因となっているため、血栓溶解剤の組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)を硝子体注射する治療が行われています。この薬剤も未承認のため試験的な使用に限られますが、著者の経験を含め国内外より有効とする報告があります。発症初期に投与できた場合には循環不全を改善し、視力改善が可能ですが、今後大規模な臨床試験が必要と考えられます。
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報