笛と太鼓からなる行進用・儀礼用の音楽隊。ヨーロッパでは中世の遍歴楽師の間で行われていたファイフ(通常1~6孔の小型横吹きフルート)と太鼓の合奏に端を発し、15、16世紀には軍隊のなかでもとくに歩兵隊の軍楽として行進や合図(鼓笛信号fife call)用に発達し、のちにアメリカを中心に民間にも広まった。行進の際には鼓手長(ドラム・メジャー)が先頭で指揮杖(バトン)を持って指揮するが、今日ではバトン回しの妙技を見せるバトン・トワラーbaton twirlerも加わり、行進に花を添えている。
日本に輸入されたのは安土(あづち)桃山時代ともいわれるが、実質的には江戸末期の1864年(元治1)以降、洋式兵法とともに軍隊調練用に伝習されたのが始まりで、幕末の官軍にも引き継がれた。しかし67年(慶応3)には廃止され、以後、軍楽は吹奏楽だけとなった。
一方、学校教育用としての鼓笛隊は1935年(昭和10)ごろから小森宗太郎らの提唱で採用された。第二次世界大戦後は48年(昭和23)に簡易楽器の器楽合奏という文部省(現文部科学省)の新しい音楽教育の一端として復興し、61年には全日本鼓笛バンド連盟も結成された。現行の学校鼓笛隊の編成は、指揮杖1、大太鼓1、中・小太鼓数名、シンバル1、ベルリラ1、リコーダー多数からなるものが一般的である。
[川口明子]
笛と太鼓からなり,歩兵の行進や戦闘の際の合図のための楽隊。起源は中世ヨーロッパの楽師たちが笛と太鼓で舞踊の伴奏をしていたことに始まるが,15世紀末にスイス傭兵によって軍隊の行進にも使われるようになった。楽器は1~6孔をもったファイフ(横笛)と,タンブールであったが,今日では大太鼓も加わり,横笛も鍵付きが多くなっている。行進の際には鼓手長(ドラム・メジャー)が先頭に立って,指揮杖(バトン)を持って指揮をする。今日では,華やかにバトンを回すバトン・トワラーbaton twirlerも加わって,パレードに彩りを添えている。
日本への渡来は安土桃山時代(16世紀後期)ともいわれるが,盛んになったのは洋式兵法を輸入し始めた江戸末期からで,明治維新(1868)のときの《維新マーチ》は有名である。1876年には鼓笛隊は廃止され,民間に伝えられて祭礼などで奏楽された。第2次世界大戦後は再び学校教育の一端として漸次復活し,現在の隆盛をみるにいたっている。
→軍楽隊
執筆者:保柳 健
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