CCS(読み)しーしーえす

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

CCS(二酸化炭素の回収・貯留技術)
しーしーえす

二酸化炭素の回収・貯留技術のこと。Carbon dioxide Capture and Storageの略。発電所や工場等から排出される二酸化炭素を分離・回収し、地層(海底地下層を含む)に貯留する技術の総称である。「気候変動に関する政府間パネル」Intergovernmental Panel on Climate Change(IPCC)は、大気中の温室効果ガス濃度安定化対策の一つとしてCCSを位置づけ、地中貯留による二酸化炭素の貯留ポテンシャルを2兆トン(炭素換算トン)と試算している。
 技術的には、大きく分けて、分離・回収、輸送、圧入・貯留の3段階からなる。分離方法には、化学吸着法、物理吸収法、膜分離法等、貯留方法には、地中隔離法、海洋隔離法等がある。それぞれ既存技術によって実施可能であるが、CCSによる二酸化炭素1トン当りの削減コストは50~100アメリカ・ドルと高額である。とくに二酸化炭素の分離・回収過程におけるエネルギー使用量の削減が重要であり、さらなる技術開発や、規模の拡大を通じた効率化が求められる。
 一方、石油生産の際に、ガスや水を地中に圧入し、石油の粘性を低くして増産する石油増進回収Enhanced Oil Recovery(EOR)を利用し、CCSの採算性を高めようとする取組みもある。カナダのワイバーン油田では、2000年よりアメリカ・ノースダコタ州の石炭ガス化工場からパイプラインで二酸化炭素を輸送し、EORとあわせた形でCCSを実施している。ワイバーン・プロジェクトは、EOR-CCSによる温室効果ガス削減効果を定量化するための技術・政策面での課題の検討にも活用されている。
 CCSを含むシステム全体のコスト低減が課題となるなかで、G8の洞爺湖(とうやこ)サミット(2008年7月開催)では、大規模なCCS実証事業に世界的に着手することが合意された。これを受け、日本では「低炭素社会づくり行動計画」を閣議決定し、2015年までに二酸化炭素の地中貯留実施に必要な基盤技術を確立し、2020年から民間部門での本格導入の実現を目ざすとした。日本やカナダのほかにアメリカ、ヨーロッパ、オーストラリアでも技術開発が進められている。[伊藤葉子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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