CP対称性(読み)シーピーたいしょうせい(その他表記)CP symmetry

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「CP対称性」の意味・わかりやすい解説

CP対称性
シーピーたいしょうせい
CP symmetry

電子陽電子のように,素粒子物理学における粒子は,一般に他の性質は同じであって電荷の極性のみが異なる反粒子と呼ばれるものと対に存在すると考えられている。粒子の電荷の極性を変える変換を行なってもその粒子の法則が不変であるとき,その粒子は C(チャージ荷電共役変換対称性をもつという。また,粒子が他の物質との間で反応するとき,鏡に映したような対称的運動を起こすならば,その粒子は P(パリティ空間反転)対称性をもつという。1956年,李政道楊振寧弱い相互作用は空間反転対称性をもたないと提唱,翌 1957年,呉健雄が実際β崩壊がこの対称性を破っていることを実証してセンセーションを起こした。しかし,β崩壊は空間反転とともに荷電共役変換をすれば(すなわち CP変換に関しては)不変であることがわかった。ところが,1963年バル・L.フィッチとジェームズ・W.クローニンは中性 K中間子の二つのπ中間子の崩壊で CP対称性が破れていることを発見した。1973年,小林誠益川敏英素粒子の標準理論に CP対称性の破れを取り入れるには,クォークが当時知られていたより 1種類だけ多く存在しなければならないことを見出し,その新しいクォークを含む中間子がやはり CP不変性を破ると予言した。2人が予言したクォークは 1977年に発見されて bクォークと名づけられ,それを含む中間子は B中間子と呼ばれることになった。B中間子の崩壊における CP対称性の破れを見出すために,茨城県筑波研究学園都市にある高エネルギー加速器研究機構加速器 KEKBがつくられた。

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百科事典マイペディア 「CP対称性」の意味・わかりやすい解説

CP対称性【シーピーたいしょうせい】

素粒子相互作用の対称性に関する概念。荷電変換(C)と空間反転(P)を同時に行う変換をCP変換といい,CP変換に対して相互作用が不変ならば,CP対称性が成り立つ,あるいはCP不変であるという。1963年フィッチクローニングループが,K中間子のπ中間子2個への崩壊でCP対称性が破れていることを発見。その原因については標準模型が提唱されている。→Bファクトリー

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知恵蔵 「CP対称性」の解説

CP対称性

粒子と反粒子を同等と考える対称性。粒子をその反粒子に置き換えても、同時に空間座標の向きを逆にすれば同じ法則が成り立つことをいう。Cはcharge(荷電)、Pはparity(偶奇性)。宇宙誕生時は粒子と反粒子が同数だったが、この対称性の破れで反粒子は消えていったらしい。破れは1960年代前半に中性K中間子の崩壊で見つかり、2000年代に入って、日米のBファクトリーでB中間子と反B中間子の崩壊のしかたを比べる実験でも確かめられた。この現象を理論づけ、クオークが3世代6種以上あれば破れが起こる、と予想したのが小林誠(高エネルギー加速器研究機構名誉教授)、益川敏英(京大名誉教授)の小林・益川理論。2人は08年、南部陽一郎(米シカゴ大名誉教授)とともにノーベル物理学賞を贈られることになった。

(尾関章 朝日新聞記者 / 2008年)

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