1931年三島徳七によって発明された強力な磁石鋼で,Ni≅28%,Al≅13%,残りFeである。この磁石鋼は近代磁石の発展史上の重要な発見であって,その保磁力は500エルステッド以上であり,それ以前のKS鋼のその値を一躍倍増したものである。この高い保磁力の発生機構は当時の磁性理論では理解できなかった。その後,KS鋼を基礎として合金の組成,鋳造方法および熱処理に関する技術的な開発が続けられ,Fe-Co-Ni-Al-Cu5元系の高性能合金磁石アルニコAlnicoの開発に至り,電磁機器の省エネルギー化,小型化,高性能化に大きく貢献した。この系統の磁石の高い保磁力の原因が単磁区粒子の理論によって解明されたのは,MK鋼発見後20年後のことである。この理論により,これら磁石の内部構造は高保磁力を発生するほぼ理想的なものであることが示された。
→磁性材料
執筆者:大久保 忠恒
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
10質量%Al,16質量%Ni,12質量%Co,6質量%Cu,残りFeからなる永久磁石合金の一種.1931年に三島徳七によって発明された.MKの名称は三島のMとかれの生家,喜住のKをとっている.欧米で改良されて発展し,アメリカでは合金元素の記号をつないで,Alnico合金とよばれる一連の合金が開発され,たとえば,Alnico Vは8質量%Al,14質量%Ni,24質量%Co,3質量%Cu,51質量%Feからなる.これらの合金は硬くてもろく,鍛造加工は困難である.多くの場合,鋳造磁石として一部には焼結合金の形でも用いられる.析出硬化型磁石では,鋳造後650~750 ℃ で焼もどし,第二相を析出させて使用していたが,適当な方法で粗大な柱状組織にするとともに,磁場中熱処理をほどこして第二相を熱処理磁場の方向にもっとも近い[100]方向に優先的に析出させる方法が開発されて,永久磁石特性はいちじるしく改良された.[別用語参照]磁石鋼
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
1931年(昭和6)三島徳七によって発明された永久磁石合金につけられた名称。アルミニウム、ニッケルを鉄に加えた合金である。KS鋼が焼入れ型であるのに対して、MK鋼は、高温からの冷却、あるいは時効処理によってニッケル、アルミニウムの母相中に鉄が微粒子として析出させた析出型の永久磁石である。その後、コバルトの添加、磁界中での熱処理によって特性が向上された。1970年代に希土類‐コバルト磁石が発明されるまで、もっとも強力な磁石であった。MK鋼の由来は、三島の頭文字(かしらもじ)のMと彼の旧姓喜住(きずみ)の頭文字Kに基づいている。アメリカでは合金の元素記号を並べてアルニコAlnico合金とよんでいる。
[本間基文]
出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報
…析出ではやはり内部ひずみが大きく発生することと,析出した微小な形状の磁性粒子が大きな磁気異方性を発生するために,保磁力が増す。これの代表的なものはMK鋼である。超格子の生成によるものは,鉄‐白金あるいはコバルト‐白金系で,保磁力が2万エルステッド前後と大きい。…
…(4)有名な通称をもつ鋼 (a)KS鋼 本多光太郎の発明したCo‐Cr‐Wを成分とする永久磁石鋼で,焼入れをして使う。住友吉左衛門の頭文字にちなんで命名,(b)MK鋼 三島徳七の発明したAl‐Ni‐Coを成分とする永久磁石鋼で,鋳造法で製造する。アメリカでは成分の名をとってアルニコ磁石と呼ばれる。…
※「MK鋼」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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