TPP(読み)てぃーぴーぴー

知恵蔵の解説

TPP

環太平洋パートナーシップ(Trans-Pacific Partnership)の略。TPP協定は、オーストラリア、ブルネイ、カナダ、チリ、日本、マレーシア、メキシコ、ニュージーランド、ペルー、シンガポール、米国、ベトナムの計12カ国による包括的な経済連携協定である。2015年10月、大筋合意に至っており、各国の議会承認などを経て発効する。これにより、国内総生産(GDP)で世界の4割近くを占め、人口約8億人を抱える巨大な経済圏が誕生する。
公表された協定文書は、全30章から成り、英文で約600ページ。各国の関税撤廃の内容や自由化の例外項目などが書かれた付属書を合わせると全体で1500ページを超え、関税の撤廃・削減の他、投資、政府調達、知的財産など幅広い分野で共通ルールが取り決められている。物品の貿易については、日本の全貿易品目(9018品目)の95%の関税が最終的に撤廃され、関税が残るのは農林水産物443品目だけになる。農林水産物(2328品目)は関税を課している品目の半数に当たる約400品目の関税を撤廃することになり、コメは関税を残したものの米豪に対して無関税の輸入枠を新たに設けることになった。知的財産については、小説や音楽などの著作権の保護期間が「作者の死後70年」に統一され、バイオ医薬品のデータ保護期間は「実質8年」以上となった。
TPP協定は06年5月、シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイの4カ国が参加する環太平洋戦略的経済連携協定(Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement、P4協定)として発効した。その後、米国の参加表明がきっかけとなり、10年3月に参加意向を示した4カ国を加えた拡大交渉会合がスタートし、日本は13年7月から交渉に参加した。日本は10年10月、当時の菅直人首相が参加検討を表明し、賛否両論が沸き起こった。自民党は12年12月の衆議院議員選挙で「聖域なき関税撤廃」を前提にする限り交渉参加に反対するなどと公約を掲げたが、政権交代後の13年3月、安倍晋三首相は「TPPは聖域なき関税撤廃を前提としないことを確認した」として交渉参加を表明した。

(原田英美  ライター /2015年)

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

TPP

環太平洋経済連携協定。関税を取り払ったり、貿易や投資のルールをそろえたりすることで、ヒト・モノ・カネが国境を越えて活発に動く「経済圏」をつくる試み。日本や米国など計12カ国が参加し、昨年10月に大筋合意した。国内では、輸出に活路を求める経済界が推進の立場だが、農林水産業への影響を心配する声も根強い。県は農林水産業への影響を独自に試算。年間の産出額が計54億8千万円減少し、かんきつ類で35億7千万円、米で12億4千万円、アジやマグロ類など水産物で1億7千万円の影響が出るとしている。

(2016-06-18 朝日新聞 朝刊 和歌山全県・1地方)

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デジタル大辞泉の解説

ティー‐ピー‐ピー【TPP】[Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement]

Trans‐Pacific Partnership環太平洋諸国が締結を目指して交渉を行う広域的な経済連携協定。原則として全品目の関税を撤廃する。環太平洋連携協定環太平洋経済連携協定環太平洋パートナーシップ協定
[補説]シンガポール・ニュージーランド・チリ・ブルネイの4か国が締結したP4協定(環太平洋戦略的経済連携協定)を拡大するもので、オーストラリア・ペルー・ベトナム・米国・マレーシア・メキシコ・カナダ・日本を加えた12か国が交渉を行う。日本は2013年7月から交渉に参加。2015年10月、米国アトランタで開催された閣僚会合で大筋合意に至ったが、2017年1月、米国が政権交代に伴い離脱。米国を除く署名11か国で交渉が行われている(2017年11月現在)。

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百科事典マイペディアの解説

TPP【ティーピィーピィー】

環太平洋諸国が締結する自由貿易協定(FTA)の一つ。Trans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreement。FTAは,重要な品目について除外例を設けることを事実上認めている場合が多いが,TPPは原則的に100%の自由化をめざし,加盟国間で全品目の関税を段階的に撤廃する。2006年にシンガポール・ニュージーランド・チリ・ブルネイの4ヵ国が加盟して発効。アメリカ・オーストラリア・ペルー・ベトナムなどが参加の意向を表明。アメリカが主導し,これらの国々が参加すれば,太平洋諸国の経済連携が一気に進むことになるため,中国も関心を示している。日本は態度を保留していたが,2010年11月,菅直人内閣は交渉参加に向けて2011年6月をめどに基本方針を策定すると表明。しかし,国内には農業分野を中心に強い反対意見が存在するため,実現性について疑問視された。さらに,2011年3月東日本大震災福島第一原発の大事故という戦後最大の危機が加わり,菅直人首相は3月末,その対処のためにTPPに関する基本方針策定自体を先送りせざるを得ないと表明した。11月,後継の野田佳彦首相は交渉参加に向けて関係国と協議に入ると表明,12月,閣議決定した〈日本再生の基本戦略〉にも重点施策としてこれを盛り込み,省庁横断的なTPP参加交渉体制の概要を決めた。2012年12月に成立した第二次安倍晋三内閣は,当初自民党内のTPP反対グループに配慮して曖昧な姿勢にあったが,2013年年初に打ち出した大胆な金融緩和が,一気に円安・株価高を導き,経済政策(いわゆるアベノミクス)に対する期待から内閣支持率も高率を維持しているのを踏まえて,3月TPP交渉参加の姿勢を鮮明にした。4月,TPP政府対策本部(甘利TPP担当相)を設置,〈聖域〉を認め合うことなどを条件にアメリカと日本のTPP交渉参加で合意。さらに,日本の交渉参加を承認していなかったオーストラリア,ニュージランド,ペルー,カナダを含む参加11ヵ国が日本の参加を承認,7月マレーシアで開催される交渉会合から参加。交渉会合は2013年内の妥結をめざすとした。8月から日米は並行協議を本格的に開始した。関税引き下げ・撤廃の対象となるおよそ9000品目のうち日本の農産物やアメリカの自動車などセンシティブ(微妙な)品目については,二国間交渉が優先され,その合意がTPPの文書に盛り込まれることになる。日本がアメリカとの関税交渉を優先させるのは,交渉全体を主導するアメリカに,重要農産品を関税撤廃の例外にすることを先に認めさせてしまえば,ほかの国との関税交渉でも同様な合意が得られると考えたからである。日米の関税交渉では,日本はコメと麦,砂糖,牛肉,豚肉,乳製品の〈重要5項目〉とよばれる農産品の関税を守ることを重視。アメリカは原則として自動車を含む全品目の関税をなくすよう求めている。日米交渉は実務者協議と閣僚級協議を重ねたが,アメリカは強硬姿勢を崩さず難航。オバマ政権は2014年秋の中間選挙に向けてTPPを国内雇用創出策の柱としている。さらに通商分野での議会の権限について政府がまとめた協定を一括して認めるか否かに限る貿易促進権限法が失効しているという事情がある。中間選挙を控えて議会は個別業界の利害に神経質になっており,オバマ政権は議会の意向を気にして譲歩する姿勢をまったく見せない状況が続いた。2013年12月シンガポールでの閣僚会合は年内の交渉妥結を断念。日本はアメリカ以外の国との交渉を急ぎ先に〈例外扱い〉の実績を重ねることで,アメリカの焦りを誘い,譲歩を引き出す戦略に転じた。2014年2月シンガポールで開催された閣僚会合では,日本の閣僚はオーストラリアやメキシコなどアメリカ以外のほとんどの国の閣僚と会談し関税の扱いを協議,オーストラリアは牛肉,メキシコは豚肉,シンガポールはチョコレート,マレーシアは合板など,各国が関心を示す品目を中心に交渉を進めた。日本側は一部品目の関税引き下げなどを検討しており,関税撤廃にこだわるアメリカとは違い,ほかの国とは関税引き下げでも合意できる自信があるとした。〔日米首脳会談以後〕 2014年4月の日米首脳会談でも日米の関税交渉は〈大筋合意〉できなかった。農産物のなかで最も難航したのは,アメリカが大幅な輸出増をめざす牛肉と豚肉の扱いで,日本は豚肉について外国産の安い肉ほど高い関税をかける〈差額関税制度〉という独自の仕組みが存在する。これは輸入価格が安い豚肉には一定量に応じて定額を課す従量税で,〈基準輸入価格〉から輸入価格を差し引いた分が〈差額関税〉として上乗せされる仕組みである。アメリカ側はこの従量税を20円以下まで引き下げたうえで,差額関税の価格帯の肉の多くも引き下げ後の従量税を適用するよう求めた。アメリカにとって,豚肉は日本に輸出する農産物の主力商品で2012年度は輸入豚肉の約40%をアメリカ産が占めている。大規模化が進むコメ豚肉業界は政治力も強めており,とくに加工品の原料となる安い豚肉の輸出を一気に増やしたい思惑がある。しかし,アメリカの要求を受け入れれば安いアメリカ産が大量に入ってくる可能性があり,消費者にメリットはあるが養豚農家は経営が厳しくなる。日本は従量税を100円前後が限界と主張。従量税がかかる範囲を大幅拡大することにも難色を示した。従量税の引き下げ幅,従量税を適用する豚肉の価格帯,引き下げ期間,輸入が急増した場合に元の関税に戻すセーフガードの基準の組み合わせで,数字を含めた様々な選択肢を協議したが,合意できない状況が続いた。日本は当初,オーストラリアとの合意内容をベースにアメリカと交渉しており,関税率の譲歩は〈20%程度まで〉という立場である。2014年4月の首脳会談時に,甘利明TPP担当相とアメリカ通商代表部のフロマン代表が,関税率の引き下げ幅とその移行期間,セーフガードの発動基準をセットで決めることでようやく一定の合意をみた。2014年から2015年にかけて,日米交渉はさらに続き,焦点は,コメ,自動車部品,著作権保護などの知財分野などの交渉に移った。自動車分野については,2015年4月日本がアメリカに輸出する自動車部品の大半について,協定発効後10年以内に関税(2.5%)を撤廃する方向で一致していると報じられている。交渉全体がすみやかに進展しない大きな理由のひとつは,アメリカで,大統領に交渉権限を一任する貿易促進権限(TPA)法案の成立が見通せないことだが,2015年5月アメリカ上院はようやく同法案の審議に入った。ただし上院で可決されても下院での審議は難航が予想され,日本政府は,2015年後半には2016年のアメリカ大統領選挙の影響も加わり交渉自体が漂流する可能性があると危ぶんでいる。TPP交渉は日米合意が必須だが,そのうえでさらにアメリカと同様,日本でも政府が国内をどのように説得できるかが鍵となる。
→関連項目安倍晋三GPIF野田佳彦

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

TPP
てぃーぴーぴー

太平洋周辺の国々の間で人、物、サービス、金の移動をほぼ完全に自由にしようという国際協定。TPPはTrans-Pacific PartnershipまたはTrans-Pacific Strategic Economic Partnership Agreementの略で、環太平洋経済連携協定、環太平洋戦略的経済連携協定、環太平洋パートナーシップなどと訳される。日本、アメリカなど12か国が2015年(平成27)10月、協定締結で大筋合意(2016年2月に署名)したが、その後アメリカ大統領に就任したトランプが2017年に協定から離脱する大統領令に署名。協定発効には国内総生産(GDP)の合計で85%以上を占める6か国の批准が必要で、加盟12か国のうち約60%を占めるアメリカの離脱により発効のめどは立っていない。アメリカを除く国々は11か国による協定発効を目ざしているが、TPPからのアメリカ離脱で世界の貿易自由化の流れは大きな打撃を受けた。
 TPPはGDPで世界の約4割を占め、人口約8億人の巨大経済圏を発足させる構想である。APEC(アジア太平洋経済協力会議)加盟国であるシンガポール、ニュージーランド、ブルネイ、チリの4か国が2006年に締結した自由貿易協定が原型で、2009年に当時のアメリカ大統領オバマが参加の意向を表明したことから世界的に注目された。日本は2013年から交渉参加。大筋合意時点の参加予定国は日米のほか、シンガポール、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、メキシコ、チリ、ペルーで、自由貿易協定(FTA)として世界最大規模となるはずであった。協定は鉱工業品や農産物の関税の段階的引下げ、投資自由化、知的財産権の保護(TRIPS(トリップス)協定)、金融サービス自由化、国有企業への優遇縮小、貿易の技術的障害撤廃など31分野の協定からなる。鉱工業品、農産物などの関税の99.9%(日本は95%)が撤廃されるほか、投資や知的財産保護のルールが確立し、外国人労働者の受入れに関する規制も少なくなる予定であった。日本政府は、TPP発効による輸出増や投資拡大でGDPを14兆円弱押し上げる効果があると試算する一方、安価な農産物流入で打撃を受けると想定される国内農業向け対策を実施するとしていた。なおアメリカ抜きでTPPを発効させるには、11か国による再交渉が必要である。TPP発効がむずかしくなったことで、アジア地域では、東南アジア諸国連合(ASEAN(アセアン))に日本、中国、インドなどを加えた16か国による東アジア地域包括的経済連携(RCEP(アールセップ))に関心が集まっている。[矢野 武]

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