翻訳|ammunition
狭義には拳銃,小銃,大砲などの火器や火砲から発射されるものをいう。広義にはこのほか,爆弾,ミサイル,ロケット弾など軍事的に敵に向かって投射または発射されるあらゆる飛翔体をいい,さらにすべての爆発物,爆発装置,火工品をさすこともある。以下ではおもに最も狭義の場合について述べる。
一般に,口径20mm未満の火器に使用される弾薬を小火器弾薬,20mm以上の口径のものに使用される弾薬を火砲弾薬という。いずれも火薬の力で発射され,人員の殺傷,車両や艦艇や資・器材の破壊,航空機の撃墜などに用いる。小火器弾薬は,拳銃,小銃,機関銃,散弾銃などに用いられ,通常,弾丸,発射薬,雷管付き黄銅製の薬莢(やつきよう)で一体化されている(図1)。実戦用としては,普通弾,徹甲弾,焼夷弾,曳光弾(えいこうだん),およびこれらを組み合わせた弾薬(たとえば曳光徹甲焼夷弾)があり,訓練用には,空包,擬製弾,狭窄弾(きようさくだん)などがある。このほか,口径20mm以上であるが擲弾(てきだん)を小火器弾薬に含めることがある。火砲弾薬は,カノン(加農)砲,榴弾(りゆうだん)砲,迫撃砲,無反動砲などから発射され,通常,尖頭長円筒形の弾丸,炸薬(さくやく)を起爆する信管,発射薬を点火する火管,およびこれらを一体化する黄銅または鉄製の薬莢からなる(図2)が,弾種により信管や炸薬,あるいは薬莢を欠くものもある。これら構成部品の組みつけ,発射薬量の加減,装塡要領などによって,固定弾,半固定弾,分離装塡弾などに分けられる。実戦用には,榴弾,対戦車榴弾,粘着榴弾,徹甲弾,発煙弾,照明弾などがあり,訓練用には,空包,演習弾,擬製弾などがある。
ヨーロッパでは14世紀前半ころには黒色火薬が製造されるようになり,15世紀に入ってから,金属溶解法などの進歩に伴って青銅製の一体砲身が生まれ,錬鉄を鍛造した弾丸,次いで鋳鉄製の弾丸が生まれて石の弾丸にとってかわった。黒色火薬を充塡した爆裂弾の着想が生まれたのもこの時代である。砲弾内の炸薬に点火する技術は1763年,〈砲兵の父〉といわれたフランスのグリボーバル将軍Jean Baptiste Gribeauvalが弾薬,火砲などを含む砲兵器材全般の互換性の実現を企てる標準化計画を発表したとき,その一環として開発された。すなわち,発射薬を薬包に詰め,これと砲弾とを組み合わせる方式で,これにより発射速度(単位時間当りの発射弾数)の増大,不発の防止などの進歩が図られた。19世紀に入ると砲身への施条技術が進行し,弾丸も細長い空気抵抗の少ない形状となり,火薬ガスの漏れを防いで薬室内での装薬の燃焼を規正し,かつ弾丸に旋動を付与するための銅帯を弾体尾部に植えこむ技術が開発された。また,弾体内に殺傷・破壊用物質を充塡する技術と弾丸を適時に破裂させる信管の開発により,榴弾や榴散弾が登場した。
19世紀後半から20世紀初頭にかけて真鍮製の薬莢が出現し,これによって105mm級以下の小口径の火砲は,可塑性の緊塞具を閉鎖機に装着しなくても,ガス漏れを防ぐことができるようになり,また装薬を詰めた薬莢を弾丸の尾部に接続して一体の完全弾薬とすることによって,弾丸装塡および発射速度を増大できるようになった。もう一つの飛躍的進歩は,1880年にフランスのビエイユPaul Vieilleが発明した綿火薬が発射薬として用いはじめられたことである。黒煙が出ない利点があり,無煙火薬と呼ばれることになった。また1885年フランスのテュルパンEugene Turpinがメリニットmélinite(ピクリン酸,黄色火薬)を発明したが,これは砲弾や水雷に充塡する炸薬として,黒色火薬に比較して格段に優れたものである。
小火器弾薬については,小銃が初めて戦争に実用されたのは16世紀初頭であったが,18世紀に入っても使用弾薬は鉛製の丸玉であった。1820年ころの雷管の発明に伴い,これを用いて撃発する小銃の開発,腔綫(こうせん)の発明,長弾による元込め装塡方式の採用などにより,小銃は大躍進した。
第1次大戦に至って弾薬に関する基本的技術は,火砲とともにほぼ完成の域に達した。航空機の出現に伴って同大戦前から高射砲用の曳火信管付榴弾が生まれたが,20~40mm級機関砲用の信管付榴弾の出現は同大戦後になってからである。さらに特筆すべきものとして毒ガスなどを砲弾に詰めて使用したことがあげられよう(化学兵器)。
第2次大戦以後における砲弾の進歩はめざましく,特に対戦車および対空用において顕著なものがあった。対戦車用としては,砲弾直径の何倍もの厚さの装甲を貫徹するモンロー効果やホプキンソン効果を利用する対戦車榴弾や粘着榴弾が実用化し,運動エネルギーを利用する徹甲弾も出現した(図3)。対空用では瞬発および時限の両機能をもつ複動信管,さらには自ら電波を発射してその反射波をとらえ,目標付近で起爆する近接信管が出現した。近接信管は,現在では野戦砲や迫撃砲用弾薬に利用され,曳火射撃にその威力を発揮している。
最近,野戦砲用弾薬に関しては,補助推進弾,弾底抵抗減少弾などにより射程が増大し,かつレーザー,赤外線誘導方式の導入による終末誘導砲弾の開発により精度が画期的に向上し,点目標射撃をも可能にしつつある。
また,最近では多重装甲,特殊装甲などの出現により装甲防護技術が向上,このため火薬エネルギー弾の効果が減少し,相対的に運動エネルギー弾の価値を高める傾向にある。減口径有翼弾による弾長の増大や比重の大きい弾心材料の改良により断面重量を増大し,侵徹効果を大きくする方向にある。
→火薬 →軍用爆薬 →信管
執筆者:津村 秀一郎
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