MK鋼(読み)エムケーこう

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「MK鋼」の意味・わかりやすい解説

MK鋼
エムケーこう
MK magnet steel

1932年三島徳七によって発明された析出硬化型磁石鋼。最初の成分はニッケル Ni25~27%,アルミニウム Al12~13%,残りが鉄 Feであったが,以後,銅 Cu,コバルト Co,チタン Tiなどの添加により改良され,種類が多くなっている。現在の成分範囲は Ni15~27%,Al8~13%,Co0~25%,Cu3~6%で,ほかに Ti,ニオブ Nbを添加したものがある。圧延鍛造はできないので,すべて鋳造品として製造する。保磁力 560~700エルステッド,残留磁束密度 5800~1万 3200ガウスで,永久磁石材料としてはフェライト磁石とともに世界で最も広く用いられ,アメリカではアルニコの商品名で呼ばれている。特殊な熱処理により製造された異方性 MK磁石 (Co23~24%,Ni14~15%,Al8~8.5%,Cu3~4%,Ti<1%) は保磁力 550~700エルステッド,残留磁束密度1万 5700ガウスに達する。電気計器,無線機器,電気工学関係で広く用いられている。別に MT鋼 (C1.5~3.0%,Al6~9%) も三島の発明で,これは焼入れ硬化型磁石鋼である (→磁性材料 ) 。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「MK鋼」の意味・わかりやすい解説

MK鋼
えむけーこう

1931年(昭和6)三島徳七によって発明された永久磁石合金につけられた名称。アルミニウム、ニッケルを鉄に加えた合金である。KS鋼が焼入れ型であるのに対して、MK鋼は、高温からの冷却、あるいは時効処理によってニッケル、アルミニウムの母相中に鉄が微粒子として析出させた析出型の永久磁石である。その後、コバルトの添加、磁界中での熱処理によって特性が向上された。1970年代に希土類‐コバルト磁石が発明されるまで、もっとも強力な磁石であった。MK鋼の由来は、三島の頭文字(かしらもじ)のMと彼の旧姓喜住(きずみ)の頭文字Kに基づいている。アメリカでは合金の元素記号を並べてアルニコAlnico合金とよんでいる。

[本間基文]

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