文書を効率よく作成するための機器またはプログラム。文書の入出力や記憶をし、これを改訂、編集することができる。略してワープロということが多い。汎用(はんよう)のコンピュータを利用するものと専用機とがある。
タイプライターを日常的に使っている欧米では、コンピュータのプログラム作成用に開発された会話型のエディター(編集系)が登場したとき、これで手紙を書いたり、原稿をつくったりするのは自然なことであった。やがて、そのような文書の作成専用のプログラムもつくられるようになった。なかでも、ソルツァーJerome H. Saltzer(1939― )が1965年につくったランオフrunoffと、クヌースDonald Ervin Knuth(1938― )が79年につくったテフTeXや、リードがつくったスクライブScribeは有名である。パーソナルコンピュータには、マイクロプロ社が1978年につくったWord Star以降、さまざまなものがある。現在のワードプロセッサーの多くは辞書を備えていて綴(つづ)りや文法の誤りを検出することができる。
日本では、漢字の入力の方法と機器の価格が問題で開発が遅れていたが、近年、パーソナルコンピュータの普及とともに出力装置が安くなってきたので、家庭用のワードプロセッサーも普及してきた。これには、6349種の漢字にJIS(ジス)コードを制定したことが大きく寄与している。漢字の入力方式には、漢字ごとに2個程度のキーの組合せを定めておく方式と、漢字の読み方を仮名やローマ字で入力して漢字に変換する方式とがある。後者の仮名漢字(ローマ字漢字)変換方式では、漢字ごとではなく文節や文章ごとに入力するのが普通であり、一般の利用者にはこの方式が便利である。この方式は辞書を用いるので、送り仮名や当て字の誤りが防げる反面、同音異義語のなかから適切なものを選択するのに手間がかかるし、選択の誤りも生じる。この欠点は、辞書を充実して文脈を読み取ることによってだいぶ改善されてきている。入力を漢字符号に変換する部分のプログラムをFEP、IME、IMなどとよび、ワードプロセッサーから独立して他のソフトウェアの漢字入力にも用いられている。
ワードプロセッサーの重要な機能の一つは、文書をHDDなど他の媒体に記憶させることで、類似の文書をつくる業務や手紙の控えなどに役だつ。もう一つの重要な機能は、文書を改訂することで、手紙や書類や各種の原稿などを気軽に清書し、修正できる効果は絶大である。この機能を十分に発揮するため、文章の入れ換えや複写、字句の探索などができるようになっている。また、よく使われる長い単語や文章を登録しておいて短い読み方で引用したり、グラフの作成や表の計算をしたりすることができるようになっているものも多い。
[西村和夫]
ワードプロセッサー用ソフトウェアの高機能化に伴い、文章や表組みに加えて画像などのグラフィックスも扱えるようになっている。レイアウトの自由度も高く、出版用のDTPソフト並みの機能をもっている。おもなソフトウェアとして「ワードWord」や「一太郎」などがある。また、文字(テキスト)の入力と編集のみに特化した場合、テキストエディターが使われることが多い。Windows(ウィンドウズ)に付属する「メモ帳」などがそれにあたる。
[編集部]
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編集機能付文書作成機。ワープロとも略称される。欧文用と和文用がある。コンピューターを使用し,文書をその記憶装置に保存・処理するため,タイプライターのように,単なる文書作成のみでなく,自在に校正したり編集作業が可能。例えば訂正,挿入,削除,移動,置換,頭下げ,行末そろえ,文字送り,行そろえ,レイアウト等を自在に行う機能をもっている。入力した文書をフロッピーディスクに保存し,必要なときに保存文書を再利用できる。
欧文用は秘書の文書作成(タイピング)作業の能率向上のため1960年半ばに開発された。一方,和文はLSI技術の進歩により1970年代後半にようやく開発された。漢字の入出力を可能にした日本語ワードプロセッサーがそれで,文書作成業務に大きな変革をもたらした。特に日本語の場合,字形が多く字種の限定が困難であり,かつ複雑さをきわめている。また読み方が幾通りもあり,同音異義語が多かったり,送り仮名の不統一,縦書き,横書きなどの問題点の解決が急務であった。これらの問題点を解決したことで,一般のオフィスでも広く利用されるようになった。欧文の場合は欧文をタイピング入力する。和文の入力方式としては仮名文字をタイピングし,それを漢字に変換する仮名漢字変換方式と,ローマ字をタイピングし,それを漢字に変換するローマ字変換方式,および和文タイプライターのように,漢字をダイレクトに入力する全文字配列方式などがある。
→タイプライター
執筆者:末次 信義
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ASCII.jpデジタル用語辞典ASCII.jpデジタル用語辞典について 情報
…日本語の表示装置としては,ふつうのキャラクターディスプレーで密度を高くしたものが使用される。近年,上記の装置に,小型コンピューターの機能を組み込んだ文書作成機,日本語ワードプロセッサーword processor(ワープロ)が普及した。【林 英治】。…
…日本語の表示装置としては,ふつうのキャラクターディスプレーで密度を高くしたものが使用される。近年,上記の装置に,小型コンピューターの機能を組み込んだ文書作成機,日本語ワードプロセッサーword processor(ワープロ)が普及した。【林 英治】。…
…事務機械は,一般的に,文書(ドキュメント)作成,複写印刷,伝達,保管検索の四つの基本機能を単独または複合的に備えている。おもな事務機械には,複写機(コピー機),ページプリンター,ファクシミリ,日本語ワードプロセッサー(ワープロ),電卓,レジスターなどがある。また,パーソナル・コンピューター(パソコン)も,事務機械としてオフィスに導入されることが多い。…
…情報の内容は自在にカット・アンド・ペーストで編集できるが,ドキュメント自体には論理構造は規定されておらず,2次元平面上でのレイアウトをするための簡単な割付構造の編集が可能である。現在の市販のワードプロセッサーやテキストエディターはこの第一世代の電子ドキュメントの進化したものである。(2)構造化ドキュメント 情報の内容形式,論理構造,割付構造をそれぞれ独立に明示的に規定するとともに,それらの関係性を体系化したものである。…
※「ワードプロセッサー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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