おうし座(読み)おうしざ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「おうし座」の意味・わかりやすい解説

おうし座
おうしざ / 牡牛座

冬の宵、ほとんど頭上に見える星座。黄道十二星座の一つで金牛宮。明るい二つの散開星団が目をひく。一つは牡牛の顔の部分で、V字形に星の群がったヒヤデス星団である。中に赤みを帯びた1等星アルデバランを含んでいる。ただし、ヒヤデス星団の星が距離149光年のところにあるのに対し、アルデバランはずっと手前の65光年のところにある。たまたま方向が同じなので重なって見えるだけで、両者は無関係である。もう一つは、牡牛の肩先に群れるプレヤデス星団。6~7個の星が一塊になったようすは肉眼でもよくわかる。ギリシア神話ではオリオンに追われ星になったプレイアデスの7人姉妹からきている。日本名はすばる(昴)。清少納言の『枕草子(まくらのそうし)』のなかでも「星はすばる……」とその美しさをたたえられている。おうし座は大神ゼウスエウロペをさらったときに変身した雪のように白い牛の姿とされている。角(つの)の先端ζ(ゼータ)星の近くには1054年の超新星爆発残骸(ざんがい)として有名な、かに星雲M1がある。

[藤井 旭]

『野尻抱影著『野尻抱影の本1 星空のロマンス』(1989・筑摩書房)』『瀬川昌男著『星と星座と宇宙の旅4 冬の星と星座』(1997・小峰書店)』『藤井旭著『最新 藤井旭の四季の星座教室』(2001・誠文堂新光社)』『藤井旭著『星座大全――冬の星座』(2003・作品社)』


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改訂新版 世界大百科事典 「おうし座」の意味・わかりやすい解説

おうし(牡牛)座 (おうしざ)
Tauri

略号Tau。黄道星座の一つ。V字形のヒヤデス星団が牛の顔,数個の星の集りに見えるプレヤデス星団が牛の肩になる。ギリシア神話では,大神ゼウスがフェニキアの王女エウロペのもとに通う時の化身の姿であるという。星空では天の川沿いにオリオンと向きあう。α星アルデバランは赤色巨星で〈あとに従うもの〉の意。プレヤデス星団に続いて東の地平線をのぼる星だからであるが,この星の和名〈あとぼし〉あるいは〈すばるのあとぼし〉は同一の発想に基づくものである。ヒヤデス星団は星数約100個,距離140光年の散開星団で,距離60光年のアルデバランはこの星団に属する星ではない。プレヤデス星団は星数約120個,距離410光年の散開星団で肉眼星6個の配置からはごいた星という和名もある。古くからは〈すばる〉と呼ばれ,勾玉(まがたま)をつらねた首飾になぞられた。ヒュアデス,プレイアデスはともに巨人アトラスの娘たちで,母はそれぞれアイトラ,プレイオネの異母姉妹である。牛の角の先のζ星の近くにあるかに星雲は1054年の超新星爆発の残骸で,水素の赤い輝線で輝く紐状物質(フィラメント)が視線速度毎秒1000km以上の激しい膨張を示し,また強烈な電波,X線の発生は当時の爆発の激しさを語るもので,その中心星は,電波のパルスを示す中性子星パルサーと呼ばれる天体である。概略位置は赤経4h30m,赤緯+18°。午後8時の南中は1月下旬である。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「おうし座」の意味・わかりやすい解説

おうし座
おうしざ
Taurus

牡牛座。1月下旬の宵に南中する北天の星座。概略位置は赤経 4時30分,赤緯 18°。牡牛の姿はギリシア神話のゼウスの化身であり,占星術では黄道十二宮の第2番目。α星アルデバランは全天最輝星の一つ。有名な超新星残骸かに星雲(M1。電波源おうし座A),ヒアデス星団とそれを含む運動星団プレアデス星団(和名「すばる」),脈動するおうし座RV型変光星の代表であるおうし座RV星,爆発的な不規則変光をするおうし座T型星の代表おうし座T星などがある。

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百科事典マイペディア 「おうし座」の意味・わかりやすい解説

おうし(牡牛)座【おうしざ】

1月下旬の夕方,南の中天高く見える星座。α星はアルデバラン。プレヤデス星団,ヒヤデス星団,かに星雲などを含む。十二宮中の第2宮。ギリシア神話でゼウスがエウロペを誘拐(ゆうかい)するとき姿を変えた雄牛を象徴。

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世界大百科事典(旧版)内のおうし座の言及

【星】より

…しかし星座の起源についての説明は,ギリシア神話のなかでもつねに一定しているわけではない。たとえばおうし座は一説によれば,フェニキアの王女エウロペをゼウスの愛人にするために背に乗せて海を渡り,クレタ島まで運んだ牛が天にあげられたものだが,別の伝承によれば,クレタ王ミノスの祈りにこたえて,海神ポセイドンが海から出現させた牛である。ミノスの妃パシファエがこの牛に恋し,名工ダイダロスにつくらせた本物そっくりの牝牛の模型の中に入って,その牛の種を受けて半牛半人の怪物ミノタウロスを生んだという。…

※「おうし座」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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