与謝野晶子の第1歌集。1901年(明治34),東京新詩社,伊藤文友館刊。1900,01年の《明星》発表作を中心に399首を収録。郷里堺市から上京後,鳳(ほう)晶子の旧姓で刊行された。与謝野寛(鉄幹)との激しい恋愛体験が基盤となった,いわば青春歌集である。古い伝統の色濃い時期に,大胆な官能的表現で肉体の美を誇示し,自我の解放を唱えた趣の歌が多く,毀誉さまざまの世評を呼んだ。藤島武二の華麗な装丁・挿画も内容にふさわしい。全編は6部構成で,特に〈白百合〉の部は歌友山川登美子(1879-1909)のことを,〈舞姫〉の部は京の舞妓を詠んだ歌で占められる。巻頭歌〈夜の帳(ちよう)にささめき尽きし星の今を下界の人の鬢(びん)のほつれよ〉。再版本は現存せず,3,4版本には若干の削除,補入がある。
執筆者:新間 進一
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与謝野晶子(よさのあきこ)の第一歌集。1901年(明治34)8月東京新詩社より旧名鳳(ほう)晶子の名で刊行された。晶子が堺(さかい)の生家を出奔して東京の与謝野寛(ひろし)のもとに身を寄せてから、わずか3か月ののちに出版。収録作品399首のうち100余首は書き下ろし作品である。「なにとなく君に待たるるここちして出(い)でし花野の夕月夜かな」のような甘美な初々しさをもつとともに、「春みじかし何に不滅の命ぞとちからある乳を手にさぐらせぬ」などの奔放な情熱のあふれに任せた、官能的な世界を含みもつ華麗な作品は、上田敏(びん)いうところの「斬新(ざんしん)の声調、奇抜の思想」をもって新時代を実感させる衝撃力をもっていた。背景に近世の蕪村(ぶそん)の句や、島崎藤村(とうそん)、薄田泣菫(すすきだきゅうきん)の詩の影響も認められるが、いわば晶子が本来親しんできた王朝的優美に、近世の絵画性や西欧の浪漫(ろうまん)精神をあわせた新鮮さをもっていたといえる。これによって『明星』の作風の基調は確立し、近代短歌の一大源流をなした。
[馬場あき子]
『『みだれ髪』(角川文庫)』▽『『与謝野晶子歌集』(岩波文庫・旺文社文庫)』
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与謝野晶子(あきこ)の短歌集。1901年(明治34)8月東京新詩社刊。399首。大半が「明星(みょうじょう)」掲載のもの。装丁・挿絵藤島武二。与謝野鉄幹との情熱的な恋愛の経緯をふまえた浪漫的な短歌を収める。恋愛を通じた個我の解放と官能的な「生」の賛歌が大胆な措辞によってかなでられ,国家主義的な閉塞状況へ向かう時代のなかで,青年たちに熱烈に迎えられた。石川啄木・萩原朔太郎らの習作に影響がみられる。
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