アンガージュマン(英語表記)engagement[フランス]

デジタル大辞泉 「アンガージュマン」の意味・読み・例文・類語

アンガージュマン(〈フランス〉engagement)

参加。特に、知識人芸術家が現実の問題に取り組み、社会運動などに参加すること。

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精選版 日本国語大辞典 「アンガージュマン」の意味・読み・例文・類語

アンガージュマン

  1. 〘 名詞 〙 ( [フランス語] engagement ) 現実社会の問題に参加して自分態度をきめ、その賭けの抵当として自己を拘束すること。自己拘束。社会参加。⇔デガージュマン

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改訂新版 世界大百科事典 「アンガージュマン」の意味・わかりやすい解説

アンガージュマン
engagement[フランス]

もともとは〈契約〉〈誓約〉〈拘束〉などの意。しかし第2次大戦の直後から,作家哲学者のサルトルがこの語を用いて一つの思想立場を打ち出すに及び,〈政治参加〉〈社会参加〉といった意味でも広く用いられるようになった。

 サルトルによれば,人間はだれしも自分のおかれた状況に条件づけられ,拘束されているが,同時にあくまでも自由な存在である。したがって,どんな局面においても人はその状況の限界内で自由に行動を選択しなければならないし,自由に選択した以上は自分の行動に責任を負わねばならない。さらにまた人がいったんある行動を選択すれば,その行動は変更の許されない過去となって当の本人を拘束するのであるから,人間の自由とはたえず選択を行いつつ自己を新たに拘束していくことでもある。しかも究極において人間を条件づけているのは,政治・社会・歴史など,ひと口に言えば世界の全体であるから,人はその世界に働きかけて,いっそう選択の可能性を広げ,自己をますます解放しなければならない。およそ以上が,出発点における彼のアンガージュマンの思想の骨子であった。

 このように,自由・行動・責任を軸にした倫理的な哲学は,第2次大戦直後の混乱した時代のなかで,まずフランスの青年層に強い共感を与え,次いでその影響は世界的に広がった。というのも,大戦中のドイツイタリア,日本などのいわゆる〈枢軸国〉の全体主義に対する憎悪と,大戦後に米ソ両大国の〈冷たい戦争〉が圧倒的に世界を支配していた情勢への不満のなかで,アンガージュマンの主張は個人の自由に基盤をおきつつ,世界(すなわち状況)が変わりうるものであることを前提にしていたためである。その意味で,これは当時の感じやすい若者たちに,一つの希望を与える思想であった。

 けれども世界を変えるためには,世界の全体的な把握に近づく方法が必要となる。サルトルはその方法をまずマルクス主義に求め,次いでマルクス主義を精神分析や社会学によって補完しつつ,独自の方法を磨いた。その結果,彼のアンガージュマンは単純な政治参加の意味から,歴史全体を無限のかなたの目標として見定めた一種の深い行動の哲学,実践的な世界観になった。しかしこうした模索のつづけられていた1960年代には,世界情勢は変化して,先進国や大国相互のあいだでは一種の相対的安定期が訪れ,その情勢に慣れた人びとは,60年代末の一時期を除けば,むしろ現状肯定的な思想や,具体的世界と切り離された抽象的思考に走ることが多く,変革を目指すアンガージュマンは流行現象としては後退した。しかしこれが問題にした〈個〉と〈全体〉,〈行動する自由〉と〈世界〉の関係は,解決されたわけではないから,アンガージュマンの思想は今後も形を変え,新たな思想に取り入れられて再生するであろう。
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百科事典マイペディア 「アンガージュマン」の意味・わかりやすい解説

アンガージュマン

〈参加〉などと訳されるが,社会的現実に対する非中立的態度をいう。フランスではドレフュス事件から対独レジスタンスを通じて知識人の現実(政治)参加が思想・文学に強く作用し,ペルソナリスム(E.ムーニエ)や実存主義(サルトルなど)において哲学的主張となった。
→関連項目サルトル

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