改訂新版 世界大百科事典 「サケイ」の意味・わかりやすい解説
サケイ (沙鶏)
sandgrouse
ハト目サケイ科Pteroclidaeの鳥の総称,またはそのうちの1種を指す。全部で16種が知られ,アフリカ,アジア中部~南部,南ヨーロッパに分布する。主として乾燥した草原,荒野などに生息し,群れをつくって地上で生活している。全長23~42cm。体はハトぐらいの大きさで,ずんぐりしているが,翼は細長く,飛ぶ力は強い。くちばしは短く,根もとに蠟膜がなく,短い円錐形をしている。羽色は全体に褐色か砂色で,黒色や灰色の模様がある。皮膚は厚く,短い脚にも羽毛が生えていて,砂漠のような温度変化の大きな場所に適応している。脚の後趾(こうし)は退化してなくなっている。木に止まることはなく,地上では歩く。植物の種子や新芽,昆虫などを食べる。水を飲むために毎日長距離を移動する。何かに驚くといっせいに飛び立つ。巣は地上に小さなくぼみをつくり,ごくわずかの草を敷くか地面にじかに1腹2~3個の卵を産む。雌雄交代で23~28日抱卵する。雛(ひな)は孵化(ふか)後すぐに歩き回ることができる。年2~3回繁殖することがある。雛へ水を飲ますには,羽毛に水をしみこませてきて,それを吸わせる。サケイSyrrhaptes paradoxus(英名Pallas's sandgrouse)はカスピ海からモンゴルまでのアジア中央部に分布し,餌が不足すると大移動をする。日本には迷鳥として10回ほど飛来した。
執筆者:柳沢 紀夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報