翻訳|Ra
古代エジプトの太陽神。レーReともいう。第2王朝より王名に出現,ヘリオポリスの古い太陽神アトゥムと習合して創造神の地位を得る。とくに第5王朝になると,初代3王はラーがその神官の妻に生ませた子とされ,〈ラーの子名〉(誕生名)が王の公式称号に正式に採用され,〈上下エジプト王名〉(即位名)とともにラーのめぐる地を象徴する長楕円形のカルトゥーシュ(王名枠)で囲まれるなど王朝(国家)の守護神,宇宙創造神,神々の王としての地位を確立する。天地創造時にあるべき宇宙秩序(マアト)を定め,息子であるファラオにラーの役割を演じさせてこの秩序を維持させるとされた。他の神々もラーと習合してアメン・ラーAmen-Raなどと称することにより創造神としての地位を主張できた。アテン信仰の形成にも強い影響を与え,アマルナ時代にも公認された唯一のアテン以外の神である。毎日昼は昼舟で天を,夜は夜舟で天の女神ヌートの胎内または地下の冥界を航行し,翌朝再び東天に復活するとされ,新王国時代の王墓の壁面には《アムドゥアト(冥界にあるもの)の書》をはじめ太陽神の冥界の旅の案内書が挿絵つきで描かれた。一般民衆も好んで墓壁画にラーの舟を取り上げ,これに同乗して復活することを願った。このように創造神にして復活の象徴であるラー信仰は,オシリス信仰とともにエジプト宗教の二大基軸を形成している。図像では日輪を戴く人物またはハヤブサ頭(のちには雄羊頭も)の人物として表現された。オベリスクはラーの依代(よりしろ)で天地創造時の〈原初の丘〉をかたどった聖石ベンベンから発達したもの。ピラミッドの方錐形もおそらくこれに由来する。神殿の特色は露天の祭壇をもつ中庭を中心にもつ点にある。
執筆者:屋形 禎亮
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古代エジプト宗教における原初の神で太陽神。神々や人間を含む万物の創造者であり、生命や作物の源泉とされる。楔(くさび)形文字文書での表記をローマナイズするとRi-e(これはRēの音を表す)であるところから、レーと書かれることもある。第五王朝(前2500以降)にデルタ地帯南部、今日のカイロ市郊外のインヌ(ヘブライ名オン、あるいはベート・シェメシュ「太陽の館」、ギリシア名ヘリオポリス「太陽の都」)がラー崇拝の中心地になり、ラーは主神の位置を占めるようになった。こののちにはファラオ(エジプト王)の称号にも「ラーの息子」が加えられるようになり、のちにはラムセス(ラー・メス「ラーから生まれたもの」)のような名も使われた。中・新王国時代にはテーベの地着きの神であるアモン(アメン)と合体したアモン(アメン)・ラーが最高神として勢力をもった。太陽神としてのラーは、昼は太陽船に乗って東から西へと天空を移動し、夜は天空の女神ヌトの体内を通ってふたたび東方へ戻ると考えられていた。ラーはしばしば天空神としての鷹(たか)、あるいは太陽円盤を頭上にのせた鷹の頭をした人像として表現される。地平線上に姿を現した太陽はラー・ヘル・フティ(ギリシア語でラー・ハルマキス)とよばれ、この名でよばれたスフィンクスはこれを表現するものとされた。ピラミッドやオベリスクも、ラー神崇拝と関係があると考えられている。
[矢島文夫]
レーともいう。古代エジプトの太陽神。ヘリオポリスが信仰の中心。第4王朝から有力になり,第5王朝には「ラーの子」がファラオの正式の称号となった。中王国にアメンが台頭すると,これと合体してアメン・ラーとして信仰された。神像,神殿を持たず,聖石ベンベン(オベリスク,ピラミッドなど)の形で崇拝される。
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…流域面積は136万km2で,ヨーロッパ・ロシアの1/3,日本の3.7倍にあたる。その存在は,古典古代以前のギリシア人にも知られており,プトレマイオスはラーRha川とよんでいた。中世以来,北ヨーロッパと中央アジアを結ぶ交易路となって栄え,その沿岸では,ボルガ・ブルガール族,ハザル族の国家,キプチャク・ハーン国,カザン・ハーン国,アストラハン・ハーン国などが興亡をくりひろげた。…
…時が熟するとこの神の臍から蓮が生え出て花を開き,その中に創造神ブラフマーが誕生することによって,世界の創造が開始される。古代エジプトの神話では原初には大洋ヌンだけが存在したが,そのただ中に太陽神ラーが,まずピラミッドの形をした丘の形で出現した。それから彼は,自身にほかならぬその丘の上で自瀆して男神シューと女神テフヌートを生み出し,この両神から大地ゲブと天空ヌートが生まれたという。…
…アフリカ大陸の北東隅,ナイル川第1急湍(たん)以北の約1200kmにわたる細長い流域地帯が本来のエジプトで,地形上幅8~25kmの河谷地帯(上エジプト)と河口のデルタ地帯(下エジプト)とからなる。古くよりガルビーヤ砂漠中のオアシス(シワSiwa,バフリーヤal‐Baḥrīya,ファラーフィラal‐Farāfira,ダーヒラal‐Dākhila,ハーリジャ(カルガ)al‐Khārija,Khargaの各オアシス),第1・第2急湍間の下ヌビア,紅海沿岸,シナイ半島を勢力圏とし,この地域は現在のエジプト・アラブ共和国にほぼ対応する。エジプトという名称は,古都メンフィスの別名フウト・カ・プタハḤut‐ka‐Ptaḥに由来するとみられるギリシア名アイギュプトスAigyptosの転訛である。…
…涙が真珠に変わる話は他にもあって,喪服に身を包むときには結婚指輪以外の装身具は本来不可とされていたのに,近年は商業主義によって涙の宝石である真珠,とくに黒真珠は身につけてもよいとされてしまった。最も創造的なのはエジプトのラー神の涙である。生成の神ケペリとなったラーの涙から人間の男女が造られたという(E.A.W.バッジ《エジプトの神々》)。…
…一方,古代インドの《リグ・ベーダ》の一つ,〈プルシャ(原人)の歌〉によれば,太陽はプルシャの目から生じ,月は彼の意から生じたという。また《アタルバ・ベーダ》中の〈ブラーティアの歌〉には,ブラーティアの右眼が太陽,左眼が月と歌われている。エジプトの太陽神ラーの右眼は昼で,左眼は夜だった(《アメン・ラー讃歌》)。…
※「ラー」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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