ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「土屋喬雄」の意味・わかりやすい解説
土屋喬雄
つちやたかお
[没]1988.8.19. 東京
経済史学者。日本資本主義論争における労農派の論客。 1921年東京帝国大学卒業。 23年同大学助教授,27~29年の欧米留学を経て,39年教授。 33年『改造』に「徳川時代のマニュファクチュア」を発表。幕末をマルクスのいう「厳密な──本来的な──意味におけるマニファクチュア時代」と規定した服部之総の「幕末厳マニュ段階説」を批判し,マニュファクチュア論争を開始した。論争自体は「『資本論』の誤読によるもの」 (大内力『経済学における古典と現代』,1972) であったが,この論争を契機に幕末農村工業に関する実証研究の水準は飛躍的に高められた。 35年『帝国大学新聞』に調査報告『名子部落を訪ねて』を連載。山田盛太郎が行なった日本の小作制度=半農奴的という規定を実証面から批判した。 44年東京帝国大学教授を免官となるが 52年東京大学教授に復職。退官後,明治大学教授,駒澤大学教授を歴任。日本経済史を担当し,渋沢栄一に関する研究などを通して日本資本主義成立過程に独自の理論を構築した。『明治前期財政経済史料集成』 (21巻,1931~36) ,『渋沢栄一伝記資料集』 (47巻,44~71) などの明治期の資料整理に果した業績も大きい。著書は『封建社会崩壊過程の研究』 (27) など多数。
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