( 1 )古くは、①②の意味で「よむ」と類義関係にある。上代・中古の「かぞえる」には「手を折りて(かぞふ)」など、指を使って計算している表現が見られるが、「よむ」にはそのような例は見られない。「かぞえる」は専ら数を計算すること自体に意味の中心があったと考えられる。
( 2 )⑤の意味は、「かぞふ」②の、一つ一つ数え上げ並べ上げてたどっていくという意味から派生した用法と考えられる。それは、「よむ」が、声を上げてひとつひとつ(数や文字を)区切りながら読みあげていくという原義から派生して、定型である和歌を「詠む」という意味を持つようになったことと類似した派生関係にある。→よむ(読)。
( 3 )類似形「かずふ」(下二段)の確例は中古以降のものであり、方言形「かずえる」は西日本に限られるところから、「かずふ」は、「数」からの類推で後に新しく生まれたものかと考えられ、口頭語的・俗語的な性格を強めながら、規範的・文章語的な「かぞふ」と併存したものと思われる。
( 4 )室町時代頃から、ヤ行にも活用して「かぞゆ」(終止形は多く「かぞゆる」)が使われた。したがって、室町以降の連用形の例はヤ行かハ行か明らかでないが、明瞭なものだけを「かぞゆ」の項にあげた。
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