生写朝顔話(読み)ショウウツシアサガオバナシ

デジタル大辞泉 「生写朝顔話」の意味・読み・例文・類語

しょううつしあさがおばなし〔シヤウうつしあさがほばなし〕【生写朝顔話】

浄瑠璃時代物。15段。山田案山子やまだのかかし近松徳叟ちかまつとくそう遺稿、翠松園主人校補。天保3年(1832)初演。講釈師司馬芝叟しばしばそう長話あさがお」を脚色したもの。今日、人形浄瑠璃歌舞伎とも深雪みゆきと宮城阿曽次郎(のちに駒沢次郎左衛門)との情話中心に上演している。生写朝顔日記朝顔日記。

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精選版 日本国語大辞典 「生写朝顔話」の意味・読み・例文・類語

しょううつしあさがおばなしシャウうつしあさがほばなし【生写朝顔話】

  1. 浄瑠璃。時代物。五段。山田案山子(近松徳叟)遺稿、翠松園主人校補。天保三年(一八三二)大坂稲荷文楽芝居で初演。秋月弓之助の娘深雪は、宇治蛍狩で宮城阿曾次郎と恋しあったが、のち縁談が起こり、その相手が阿曾次郎と知らずに家出、両眼を泣きつぶして流浪するが、やがて結ばれる。島田宿屋から大井川の段が、朝顔と名乗る深雪の悲恋を描いて名高い。

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改訂新版 世界大百科事典 「生写朝顔話」の意味・わかりやすい解説

生写朝顔話 (しょううつしあさがおばなし)

人形浄瑠璃および歌舞伎狂言。5段。文化年間(1804-18)に,山田案山子(近松徳三の別号)が,講釈師司馬芝叟(しばしばそう)の長話《蕣(あさがお)》をもとに竹本重太夫のために書いた浄瑠璃は,上演されずに終わった。1811年(文化8)に雨香園柳浪の挿絵入りの10編の読本《朝顔日記》が成立し,広く読み親しまれたので,その後大坂堀江市の側芝居で《生写蕣日記》と題し歌舞伎化した。次いで,上坂した2世沢村田之助が14年正月大坂の市川善太郎座(角の芝居)で奈河晴助作《けいせい筑紫𤩍(つくしのつまごと)》8幕を上演して好評を博した。このときの配役は,春雨姫・深雪(みゆき)を2世沢村田之助,宮城阿曾次郎・沖津の仁三を3世嵐吉三郎であった。人形浄瑠璃では,32年(天保3)正月に山田案山子の遺稿をもとに翠松園主人の校補で《生写朝顔話》の名題により大坂稲荷社内で上演されたのが最初。この作品に,嘉永(1848-54)ごろ歌舞伎で上演された西沢一鳳作《絵入稗史蕣物語(えいりしようせつあさがおものがたり)》を加味したものが,現在上演される《生写朝顔話》である。原作は大内のお家騒動を扱っていたが,現在はこの部分は割愛され,深雪と阿曾次郎との恋物語のみが上演されている。秋月弓之助の娘深雪は宇治の蛍狩りで阿曾次郎を見初めるが,阿曾次郎が鎌倉へ赴任するため別れる。その後深雪には大内の家臣駒沢次郎左衛門との縁談が起きるが,それが阿曾次郎の本名とも知らず家出し,流浪の末に眼を泣きつぶし,かつて阿曾次郎が詠じた朝顔の歌をうたって宿場をさすらううち,島田の宿の戎屋で駒沢とめぐり会う。盲目の深雪は恋人の前とも知らず,琴を弾き朝顔の歌をうたうが,駒沢は周囲の手前名のれずに去る。あとで阿曾次郎と知った深雪は,大井川まで追ってゆくが,おりからの雨で川止め。前途をはかなんで入水するが,戎屋に救われる。ここの深雪の愁嘆が見どころ。現行は〈蛍狩り〉〈戎屋〉〈大井川〉の3場が主で,まれに文楽で深雪が流浪の途中で乳母にめぐり会う〈浜松小屋の段〉を上演する。盲目ながら琴を弾くくだりが眼目で,〈世話の阿古屋〉といわれている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「生写朝顔話」の意味・わかりやすい解説

生写朝顔話
しょううつしあさがおばなし

浄瑠璃義太夫節(じょうるりぎだゆうぶし)。世話物。5段。山田案山子(やまだかがし)(歌舞伎(かぶき)作者近松徳叟(とくそう)の別号)遺稿。翠松園主人校補。1832年(天保3)1月、大坂稲荷(いなり)境内の竹本木々太夫座初演。講釈師司馬芝叟(しばしそう)の長話(ながばなし)『蕣(あさがお)』を脚色した雨香園柳浪の読本(よみほん)『朝顔日記』を、1814年(文化11)奈河(ながわ)晴助が2世沢村田之助のため『けいせい筑紫(つくしのつまごと)』の題で歌舞伎脚本化、これを浄瑠璃にしたもの。通称「朝顔日記」。『生写(いきうつし)朝顔日記』の題でも上演される。芸州岸戸藩士秋月弓之助の娘深雪(みゆき)は、宇治の蛍狩りで宮城阿曽次郎(みやぎあそじろう)と互いに恋い染める。のち駒沢(こまざわ)次郎左衛門との縁談を、それが大内家に仕官して改名した阿曽次郎のこととも知らず、拒んで家出し、流浪のすえに盲目となり、かつて宮城が詠じた「朝顔の歌」を歌って門付(かどづけ)をする身になる。そして島田の宿(しゅく)の宿屋戎屋(えびすや)で客に望まれ琴を弾くが、その客こそ宮城で、公用のため名のれずに去る。あとで恋人と知った深雪は大井川まで追って行くが、川留めで渡れず、悲嘆のあまり入水(じゅすい)しようとするところを、戎屋の亭主徳右衛門(とくえもん)と秋月の僕(しもべ)関助(せきすけ)に救われる。メロドラマ的なすれ違いの手法が特色で、序段の「蛍狩り」、四段目の「宿屋」「大井川」が歌舞伎でも多く上演される。なお、人形浄瑠璃では「宿屋」の前半、藪(やぶ)医者萩野祐仙(はぎのゆうせん)が活躍する「笑い薬」の段がチャリ場(滑稽(こっけい)な場面)として有名。

[松井俊諭]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「生写朝顔話」の意味・わかりやすい解説

生写朝顔話
しょううつしあさがおばなし

浄瑠璃。5段。山田案山子作。天保3 (1832) 年大坂竹本木々太夫座初演。文化 11 (1814) 年,奈河晴助脚色で初演された歌舞伎『けいせい筑紫つまごと (つくしのつまごと) 』の浄瑠璃化で,原拠は司馬芝叟の長咄『舜 (あさがお) 』にある。宮城阿曽次郎と深雪がすれちがいを重ねる悲恋に,鎮西探題大内義興家の騒動がからむ。現在では深雪に焦点を絞り,1段「蛍狩」,2段「明石船別れ」「秋月弓之助館」4段「宿屋」「大井川」の悲恋ものとして上演される。

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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「生写朝顔話」の解説

生写朝顔話
(別題)
しょううつし あさがおばなし, いきうつし あさがおばなし

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
元の外題
生写朝顔日記
初演
安政2.11(大坂・角の芝居)

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