( 1 )③は、もともとイヲ・ウヲが用いられていた。江戸時代以降、次第にサカナがこの意味領域を侵しはじめ、明治時代以降、イヲ・ウヲにとって代わるようになった。
( 2 )方言分布から見ると、魚類の総称としてのウオ系の語は九州南部を主な分布域とし、また西日本各地にも点在している。一方、魚類の総称としてのサカナは全国に広く分布している。従って、江戸(東日本)で発生した魚類の総称としてのサカナが、次第に西日本へと勢力を伸ばし、ウオ系の語を駆逐していったと考えられる。
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
古く日本では鳥獣肉,魚貝,蔬菜(そさい)など副食物とする物すべてを〈な〉と呼んだ。〈さかな〉は〈酒のな〉の意で,酒を飲むときに添える食物をいい,これに〈肴〉の字をあてる例は《常陸風土記》あたりから見られる。さかなは酒肴,肴物ともいった。さかなとして供された食物の種類は多岐にわたるが,室町期までは干物(からもの),削物(けずりもの)などと呼ばれた魚貝類の乾燥品が多かった。しかし,1136年(保延2)12月に藤原頼長が催した大饗(だいきよう)のように,蒸しアワビ,キジの乾肉以下の干物8種,コイ,キジ,マス,スズキ,タイを含む生物8種その他といった例もある。やがて,さかなの語は食物だけでなく,酒席に興を添えることをも指すようになる。鎌倉初期あたりには,酒宴がたけなわになると簡単な料理ショーを行うことがあったようで,《古今著聞集》には〈柚をきることは盃酌至極のときの肴物也〉と見える。のちの包丁式はこうしたショーの形を整えたものである。歌舞や隠し芸を行うこともさかなと呼ぶようになり,〈肴舞(さかなまい)〉の語も生まれた。現在でもおせち料理にはめでたい食物としてかちぐり,ごまめ,かずのこ,コンブなどを用い,これを祝肴(いわいざかな)などと称するが,こうした風習は式肴といって,武家時代に重視されたものであった。室町将軍家の料理方であった大草家の伝書には,出陣のときのさかなは〈打って勝って喜ぶ〉と,のし(打ちアワビ),かちぐり,コンブを組み合わせることが書かれている。
執筆者:鈴木 晋一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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