(秋元信英)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報
明治期の歴史学者、漢学者。文政(ぶんせい)10年10月6日、薩摩(さつま)国坂元村(鹿児島市坂元町)で生まれる。安繹は諱(いみな)。幼名厚之丞(あつのじょう)、字(あざな)は子徳(しとく)。号は成齋(せいさい)、ほかに隼洲(しゅんしゅう)・未齋(みさい)とも称す。藩校造士館より、江戸の昌平黌(しょうへいこう)に学ぶ。1864年(元治1)造士館助教になり、71年(明治4)上京し、文部省に出仕。翌年太政官(だじょうかん)に転じ、修史局(修史館)の中心となって、『大日本編年史』の編纂(へんさん)の準備に従う。同僚には星野恒(ひさし)、久米邦武(くめくにたけ)がいた。その間、イギリスに赴く末松謙澄(すえまつけんちょう)に史学方法論の調査を依頼、のち参考とした。88年文学博士、元老院議官となる。また修史事業の帝国大学への移管(1888)に伴い、臨時編年史編纂掛(がかり)委員長、文科大学教授も兼任し、後年の史料編纂事業の基礎を固め、わが国のアカデミー史学の確立に努めた。また過去の史実・史伝への批判に厳しく、久米とともに「抹殺博士(はかせ)」との非難を受けた。91年発表の久米の論文「神道(しんとう)ハ祭天の古俗」に対し、翌年旧守的な神道家などから非難、攻撃が集中、93年この久米事件の余波を受け、編纂掛が廃止となったため、委員長を辞した。明治43年12月6日、東京・市谷の自宅で死去した。おもな著書に『稿本国史眼』(共編)、『国史綜覧藁(そうらんこう)』『成齋文初集』などがある。
[松島榮一]
『『重野安繹史学論文集』全3冊(1938~39・雄山閣)』▽『『明治史論集2』(『明治文学全集78』1976・筑摩書房)』
出典 日外アソシエーツ「新訂 政治家人名事典 明治~昭和」(2003年刊)新訂 政治家人名事典 明治~昭和について 情報
漢学者,国史学者。名は安繹,字は士徳,号は成斎。鹿児島の人。江戸に出て昌平黌(しようへいこう)に学び,塩谷宕陰(とういん),安井息軒らの教えを受けた。帰郷して薩摩藩に仕えたが,1871年(明治4)上京して官に就き,その後修史局副局長,修史館編修長などを歴任し,史料の探訪,編集に力を尽くし,明治期の修史事業の基礎を定めた。88年,帝国大学文科大学教授となり,実証的方法を用いて,児島高徳の史話や楠木正成の桜井駅の別れの史話は事実でないとするなど,日本史の研究に新生面を開いた。史学会会長として学界に重んぜられる一方,漢文の制作にすぐれ名文家として盛名があり,多くの漢文の文社に関係して漢学の維持に貢献した。著に星野恒,久米邦武との共著《国史眼》(1890)のほか,《国史綜覧稿》《成斎文集》《成斎遺稿》などがある。
執筆者:村山 吉広
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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1827.10.6~1910.12.6
明治期の歴史学者。鹿児島藩の郷士出身。号は成斎。藩校造士館助教ののち文部省に入り,修史館1等編修官・同編修副長官。「大日本編年史」の編纂にあたり史料にもとづく実証主義史学を説く。臨時編年史編纂掛委員長兼帝国大学文科大学教授,史学会初代会長,貴族院勅選議員などを務めた。晩年は史学界の長老として重きをなす。漢詩人としても名高い。著書「赤穂義士実話」「国史眼」(共著),「重野博士史学論文集」。
出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報
出典 旺文社日本史事典 三訂版旺文社日本史事典 三訂版について 情報
…帝国大学教授で史誌編纂委員だった久米邦武の論文〈神道は祭天の古俗〉を掲載した〈《史学会雑誌》〉(1891年10‐12月号)と,同論文を転載した〈《史海》〉(1892年1月25日号)が,1892年(明治25)3月5日に発売頒布禁止の処分を受け,また久米が前日の3月4日に非職を命ぜられた事件。 久米は重野安繹とならんで太政官修史館における修史事業の中心的人物であり,史料収集と史料批判を基礎とした近代史学の確立のために努力し,欧米史学にも深い関心を寄せていた。1888年,国の修史事業が臨時編年史編纂掛(1891年史誌編纂掛に改組)として帝国大学に移されたのにともない,久米も文科大学教授となった。…
…三菱の岩崎小弥太が設立し,現在は東京都世田谷区に所在する文庫で,和漢の貴重な典籍,絵画,彫刻,工芸品など多数収蔵する。父の弥之助の蔵書をもとに,初めは神田駿河台の岩崎邸の一角に開館し,重野安繹(しげのやすつぐ)に収集・管理を任せて和漢の書を集め,また1894年青木信寅の古写本を中心とする和書蔵書240部1033冊をはじめとして,一括購入も併せ行った。中村正直(敬宇)の漢籍など1562部1万3181冊,色川三中(みなか)(1802‐55)の国文学関係の和書1374部4939冊,竹添進一郎(光鴻)の漢籍515部7204冊,松井簡治の〈松井文庫〉(国語国文学関係の和書5902部1万7016冊),諸橋轍次の〈百国春秋楼書(ろうしよ)〉(春秋学関係書に特色のある漢籍174部1200冊)などがある。…
※「重野安繹」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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