和尚・和上(読み)おしょう

精選版 日本国語大辞典 「和尚・和上」の意味・読み・例文・類語

お‐しょう ヲシャウ【和尚・和上】

〘名〙 (upādhyāya から変化した中央アジア方面における俗語 khosha (「師」の意)を中国語において音訳したものという。親教師、依学などと意訳) 仏語。
受戒の人の師表となる僧。師僧。→戒和尚(かいわじょう)
※正法眼蔵(1231‐53)受戒「和尚阿闍梨まさに受者ををしへて」
僧位の称。大和尚位、法印和尚位、法眼和尚位などがあり、それぞれ略して和尚と呼ぶことがあったが、法眼(ほうげん)を指す場合が多い。
③ 禅宗、浄土宗などで修行を積んだ高僧を敬っていう。
平治(1220頃か)上「唐僧を召されければ、御前へ参りて、『和尚、和尚』礼す」 〔百一羯磨‐一〕
剃髪(ていはつ)した者の総称。
(イ) 僧侶一般をさす。普通は住職以上に対して用いる。
※俳諧・深川(1693)「乗物で和尚は礼にあるかるる〈洒堂〉 たてこめてある道の大日〈芭蕉〉」
(ロ) 盲人按摩座頭
※洒落本・間似合早粋(1769)早粋の辞「坐頭(ざとう)はだれでも和尚(オセウ)和尚(オセウ)と一ときはよく会釈(あしろふ)て」
(ハ) 医者や幇間など。
※洒落本・通言総籬(1787)一「おしゃうさきへはいらっせへ」
⑤ その道ですぐれた人、一芸にひいでた人をいう。
(イ) 武芸茶道の師匠。達人。名人
随筆・本朝世事談綺(1733)一「茶礼は、禅家隠遁の体を模し、質素閑静を学びたるもの也。よって宗匠たる人を、和尚(オシャウ)といふなり」
※随筆・嬉遊笑覧(1830)四「剣術の師を和尚と云事〈略〉傾城にも和尚あり。ただすぐれたるをいふ俗語なり。そはむかし禅宗行はれてより俗人好みて仏家の語を用ひしが、今に残れる事いと多し」
(ロ) 江戸時代初期の高級な遊女遊女歌舞伎を演じた遊女をさすことが多い。
※慶長見聞集(1614)五「おそしと待所に、をしゃう先立てまく打上はしがかりに出るを見れば」
(ハ) 転じて、芸達者な若女方の役者
※仮名草子・元の木阿彌(1680)上「松本小源次とて四人ともに若女、ぬれしな物の、おしゃうなり」
[補注]禅宗・浄土宗ではオショウ、天台宗ではカショウ、真宗ではワショウ、また、ワジョウ、真言宗・法相宗・律宗ではワジョウという。

わ‐じょう ‥ジャウ【和尚・和上】

〘名〙 (律宗、法相宗、真言宗などでいうもの。→「おしょう(和尚)」の補注)
① 多くの僧の師である僧。また、授戒の時に師となる僧。師僧。
※書紀(720)天武朱鳥元年六月(北野本南北朝期訓)「是の日、三綱、律師、及四寺の和上(ワシャウ)、知事、并に師位(のりのくらい)現有(いまあ)る僧等(ほうしとも)に、御衣、御被各一具(よそひ)を施す」
② 修行を積んだ高徳の僧。また、僧を尊敬していう語。
※正倉院文書‐天平勝宝八年(756)六月二一日・東大寺献物帳「鑒真和上、凌滄海而遙来」
③ 僧。坊主(ぼうず)。わじょ。
※歌謡・閑吟集(1518)「引よたまくら、きまくらにもおとるよ手枕、たかをのわじゃうの」

か‐しょう クヮシャウ【和尚・和上】

〘名〙 (「か」は「和」の漢音。天台宗で用いる読みかた。→「おしょう(和尚)」の補注) 仏語。
① 修行を積んだ高僧を敬っていう。戒を授ける僧。師僧。→戒和尚(かいわじょう)。〔色葉字類抄(1177‐81)〕
※西源院本太平記(14C後)一五「教代和尚(クヮしゃう)百六十年行て」
② 僧位の称。大和尚位、法印和尚位など。
※贈位謚号勅書(866)「天台本師伝燈大法師位最澄 右可法印大和尚位伝教大師
③ 僧侶一般をさす。普通は住職以上にいう。
※説経節・説経苅萱(1631)中「まきのをのたらんくゎしゃうと申が、〈略〉七日のせつぽうをおのべある」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android