デジタル大辞泉
「弛」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
たゆ・む【弛】
[1] 〘自マ五(四)〙
① 張りつめていた
気持がゆるむ。安心して気がぬける。おこたる。
油断する。のんびりする。
※
書紀(720)持統五年正月(北野本鎌倉時代訓)「清白けき忠誠
(まめこころ)を以て敢へて
怠惰(タユマ)ず」
※枕(10C終)二六「たゆまるるもの。精進の日のおこなひ。とほきいそぎ。寺にひさしくこもりたる」
②
勢いが弱まる。力がゆるむ。また、続くべきものがとだえる。とどこおる。
※
源氏(1001‐14頃)宿木「心ぼそき住ひなれど、かかる御とぶらひたゆまざりければ」
※
太平記(14C後)七「時節風たゆみ、塩に向ふて御舟更に進まず」
③ 疲れる。だるくなる。
※太平記(14C後)二「足たゆめば、此児を肩に乗せ背に負ふて」
④ (まっすぐのものが)たるむ。ゆるむ。まがる。たわむ。
※
日葡辞書(1603‐04)「イトガ tayumu
(タユム)」
※
楚囚之詩(1889)〈
北村透谷〉二「且つ我胸は曲り、足は撓
(タ)ゆめり」
[2] 〘他マ下二〙 緊張を解くようにさせる。心をゆるませる。油断させる。
※枕(10C終)二七六「いとつれなく、なにとも思ひたらぬさまにて、たゆめ過ぐすも、またをかし」
たる・む【弛】
[1] 〘自マ五(四)〙
① 勢いをそらすように、
婉曲な表現をしたり、そしらぬようすをしたりする。
※名語記(1275)三「
万葉の詞に十八とかきてにくとつかへり如何〈略〉かの九々の義によせてにくといふ所に十八をかける也 たるめることは也」
② 張りつめていた心がゆるむ。
※コンテムツスムンヂ(捨世録)(1596)三「ナニト ウルヲイ
ナク カワキ
タル ゴトクニ ココログルシク ヲボユルトモ、マッタク tarumu
(タルム) コト ナカレ」
③
物事の勢いが失われる。また、張っていた力が弱って中ほどがへこむ
状態になる。ゆるむ。
※俳諧・芭蕉門古人真蹟(1694)「大ぶりな蛸引あぐる花の陰〈配力〉 米の
調子のたるむ
二月〈
木白〉」
※
良人の
自白(1904‐06)〈
木下尚江〉前「川から川へ懸け渡した太い縄の、水面近くタルんで居るのに」
たるみ【弛】
※日葡辞書(1603‐04)「Tarumiga
(タルミガ) ユク」
※
浮雲(1887‐89)〈
二葉亭四迷〉一「
々蕩々として勢ひ百川の一時に決した如くで、言損じがなければ委
(タル)みもなく」
② 引き潮と上げ潮の境で、潮の動きがゆるくなっているところ。
※洒落本・雲井双紙(1781)「『せんしう此汐は上るのかの』『あい今たるミでござりやす』」
たる・める【弛】
〘他マ下一〙 たる・む 〘他マ下二〙
① ゆるめる。たるむようにする。
※日葡辞書(1603‐04)「ツナヲ tarumuru(タルムル)」
② 張りつめていた心をゆるめる。また、相手を油断させる。
※日葡辞書(1603‐04)「ココロヲ tarumuru(タルムル)」
※仮名草子・片仮名本因果物語(1661)上「河の向に狭き井あり。彼女をたるめて、井の端へ遊に出」
だる・む【弛】
〘自マ五(四)〙 (「たるむ(弛)」の変化した語)
① 知らないふりをする。また、そのようにして相手をだます。
※漢書列伝景徐抄(1477‐1515)陳勝項籍列伝第一「高祖のだるうたる反事をせられたぞ」
② 張っていた力が弱る。また、張りつめていた気持がゆるむ。
※随筆・驢鞍橋(1660)下「我此前は強弓を引張た如有けるが、今は左様になし。然ども、だるむ筈なし。少熟したるかと思ふ也」
たゆみ【弛】
〘名〙 (動詞「たゆむ(弛)」の連用形の名詞化) たゆむこと。緊張した状態や勢いなどがゆるむこと。油断。
※源氏(1001‐14頃)若菜上「関守の固からぬたゆみにや、いとよくかたらひおきて、出で給ふ」
※浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一「間断(タユミ)もなく算盤を弾いてゐた年配五十前後の老人が」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報