出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
渡状ともいう。南北朝時代,室町時代の武家文書の一つ。幕府より発せられる命令のうち所領,所職に関するものは多くの場合管領が施行状により諸国の守護へ伝え,これをうけた守護は遵行状(じゆんぎようじよう)を作成し守護代などに下付する。守護代がこれらの文書にもとづいて文書を作り現地の当事者に渡す文書が打渡状である。文末を〈仍渡状如件〉と結ぶのが普通であり,文中に〈何月何日の御遵行の旨に任せ〉のような文章がみえることが多い。宛書を書くものと書かぬものとがあり,差出書も1名のときと2名の連署のときがある。打渡状をうけた者は請取状(うけとりじよう)を作成して提出する。打渡状の一例をあげておく。〈東寺雑掌申近江国三村庄嶋郷寺用米事,任去月廿九日御教書,同御施行之旨,市次郎相共莅彼所,打渡下地於東寺雑掌候畢,仍渡之状如件,至徳二年(1385)十一月六日 昌光(花押)沙弥了参(花押)〉(《東寺百合文書》ほ-63)。
執筆者:高橋 正彦
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