武家事紀(読み)ぶけじき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「武家事紀」の意味・わかりやすい解説

武家事紀
ぶけじき

山鹿素行(やまがそこう)の著した武家の歴史。1673年(延宝1)に成り、58巻。初めに皇統要略、武統要略、武朝年譜を掲げ、以下に武本、武家式、国郡制、古案、式目、地理武芸、職掌、故実(こじつ)その他の諸篇(へん)を収めた武家の百科全書公家(くげ)政治から武家政治への転移の原因を朝廷知徳の衰えに求め、武家政治出現を必然とみて源頼朝(よりとも)、北条泰時(やすとき)、足利尊氏(あしかがたかうじ)らの政権奪取を肯定。中国に対し日本武徳の優位を説くため、将軍・名将伝記逸話とあわせ、諸大名とその家臣の事歴をも詳述している点で文献的利用価値が高い。

[宮崎道生]

『『武家事紀』3冊(1915~18・山鹿素行先生全集刊行会)』『『山鹿素行全集 第13巻』(抄本、1940・岩波書店)』

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改訂新版 世界大百科事典 「武家事紀」の意味・わかりやすい解説

武家事紀 (ぶけじき)

山鹿高祐(素行)の著書。52巻,目録1巻(58巻本もある)。1673年(延宝1)の自序があり,皇統要略と武統要略との2部からなる。前者では武家政治の沿革を説き,後者では武家の諸系譜,条目,儀礼慣習風俗,伝記,文書,武芸,地理,戦術など百科全書的内容を記す。本書は《中朝事実》とともに素行が播磨赤穂に配流中執筆したもので,素行の気迫博学とが遺憾なく発揮されている。《山鹿素行全集》所収。
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「武家事紀」の解説

武家事紀
ぶけじき

歴史書。58巻。山鹿素行(やまがそこう)著。1673年(延宝元)成立。前・後・続・別の4部からなり,武家の歴史とそれに関連する儀礼や生活習慣・年中行事・雑芸・故実に関する知識など,武家政治や武士の生活のために参考となる事柄を集大成した武家にとっての百科全書的な実用書。戦国末~江戸初期が中心。日用に役立つ学問をめざした素行の実証的な研究成果の一つ。山鹿素行先生全集刊行会から出版。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「武家事紀」の意味・わかりやすい解説

武家事紀
ぶけじき

『武事紀』ともいう。歴史書。 58巻。山鹿素行著。延宝1 (1673) 年成立。皇統要略と武統要略の2章から成り,武による政治の由来を神武天皇にさかのぼって叙述し,源頼朝以下の武家の系譜,事跡,礼儀,風習,武芸その他武士に必要な教養の全般にわたって述べ,武家政治出現の必然性を説き,儒学者としての史論を展開している。

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旺文社日本史事典 三訂版 「武家事紀」の解説

武家事紀
ぶけじき

江戸前期,山鹿素行の著書
1673年刊。58巻。幕府によって播磨(兵庫県)赤穂に配流された素行が,『中朝事実』に続いて完成。武家古来の礼儀・風俗・武芸を述べ,武士に必要な教養を収録し,武士道の究明をはかった。

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