耕稼春秋(読み)コウカシュンジュウ

デジタル大辞泉 「耕稼春秋」の意味・読み・例文・類語

こうかしゅんじゅう〔カウカシユンジウ〕【耕稼春秋】

江戸時代の農学書。7巻。加賀の人、土屋又三郎著。宝永4年(1707)成立著者みずからの経験に基づいて、加賀地方農業農具について詳述したもの。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「耕稼春秋」の意味・わかりやすい解説

耕稼春秋
こうかしゅんじゅう

農学書。著者は加賀国石川郡御供田(ごくでん)(石川県金沢市神田)在住の土屋又三郎。自序に直心野衲(じきしんやのう)とあるのは、隠居僧籍に入った後の名。1707年(宝永4)成立。全7巻よりなる。巻1は耕稼年中業事(1年の農事暦について)、巻2は稲之類、巻3は田畠蒔(でんはたまき)植物之類附三草四木(畑作物とアサ、アイ、ベニバナおよびチャコウゾウルシクワについて)、巻4は農業時節地利用水種子糞運気田疾悪作(農業の季節、土地、水などの勘どころについて)、巻5は稲勘弁中打刈収、麦勘弁雑事(稲作、麦作の諸作業について)、巻6は田名田地割検地法、斗代違事(田の面積の測り方について)、巻7は農具之図(農具について)。金沢周辺の耕作について、きわめて具体的に記述された農民に対する指導書である。

[福島要一]

『堀尾尚志他編『日本農書全集4 耕稼春秋』(1980・農山漁村文化協会)』

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改訂新版 世界大百科事典 「耕稼春秋」の意味・わかりやすい解説

耕稼春秋 (こうかしゅんじゅう)

江戸時代の農書。加賀国石川郡御供田(ごくでん)の大庄屋土屋又三郎が,上司の罪に連座投獄され,地位を剝奪された逆境下でのこした遺著で,1707年(宝永4)ごろ成立した。《農業全書》を手本に,加賀地方独自の話題をくわえ,年中行事・作物栽培・土地利用・肥料・水利・農具など広範囲にわたる全7巻の大著で,とくに各種作物の組合せによる輪作や,自然風景にもとづく天候予測などに独創的見解がみられる。
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山川 日本史小辞典 改訂新版 「耕稼春秋」の解説

耕稼春秋
こうかしゅんじゅう

加賀国金沢藩の十村(とむら)役土屋又三郎が,1707年(宝永4)に著した農書。7巻。北陸地方を代表する農業技術書。稲・野菜・畑作のほか,田地の面積計算,農具を図入りで解説している。写本は2系統にわかれ,それぞれ数点確認される。又三郎は後年「耕稼春秋」巻1の「耕稼年中行事」の絵図化を試み,城下町金沢近郊農村の年間の農作業と農民生活を極彩色で描いた「農業図絵」を完成させた。「日本農書全集」所収。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「耕稼春秋」の意味・わかりやすい解説

耕稼春秋
こうかしゅんじゅう

江戸時代の農書。加賀藩十村 (とむら) 役の土屋又三郎の著。宝永4 (1707) 年成立。元禄期の城下町金沢周辺の稲作および野菜栽培の実態を記している。『日本経済大典』所収。

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世界大百科事典(旧版)内の耕稼春秋の言及

【農事暦】より

…近世には農業の発展にともなって農作業が複雑化し,それぞれの地域の条件も異なり,300年間の変化の度合も大きいので,一般化して示すことはできない。ここでは,一例として,《耕稼春秋》の第1巻〈耕稼年中行事〉に記されている農事暦の概要を月別(陰暦)に示す。これは加賀国(現,石川県)の大庄屋であった土屋又三郎の著作で1707年(宝永4)の自序があり,近世前期の北陸地方のありさまを示している。…

【用水】より

…【本山 幸一】
[近世]
 江戸時代には幕府,諸藩とも新田開発につとめた。そのため灌漑用水の取得手段に関しては,江戸期には多くの論著に現れているが,宝永年間(1704‐11)の《耕稼春秋》には次の諸法が述べられている。(1)勾配の適当な河川から水を引き,4~10kmの途中で支川(枝川)を設けて村々の田用水とする。…

※「耕稼春秋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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