ウルシ(読み)うるし(英語表記)Japanese lacquer tree

日本大百科全書(ニッポニカ)「ウルシ」の解説

ウルシ
うるし / 漆樹
Japanese lacquer tree
[学] Toxicodendron vernicifluum (Stokes) F.A.Barkley
Rhus verniciflua Stokes

ウルシ科(APG分類:ウルシ科)の落葉高木。高さ約10メートルで、まばらに分枝する。樹皮は灰白色で厚く、皮目が多い。葉は長さ20~40センチメートルで、7~19枚の小葉からなる奇数羽状複葉。小葉は楕円(だえん)形で先はとがり、表面につやがある。初夏、葉腋(ようえき)に多数の黄緑色の小花を房状につける。花弁、(がく)ともに5枚。雌雄異株で、雌花には柱頭が3裂した雌しべがあり、雄しべは退化、雄花には5本の雄しべがあり、雌しべは退化している。果実はゆがんだ球形で長さ約7ミリメートル、白黄色で光沢がある。原産地は中国からヒマラヤにかけての地域とされる。日本へは縄文時代以前に朝鮮を経て渡来したと考えられ、7世紀にはかなり栽培されていた。

 樹液をとり、塗料の漆とし、また果実から蝋(ろう)をとるために栽培される。比較的冷涼な気候を好み、東北地方での生産が多い。樹皮を傷つけると乳液がしみ出し、空気に触れて暗褐色となる。これを集めたものが生漆(きうるし)で、主成分はウルシオールである。ウルシオールは酸化酵素ラッカーゼにより、空気中の酸素と結合して黒色の樹脂となる。ウルシオールはまた皮膚のかぶれる原因となる。しみ出した樹液はすぐに固まるので、掻(か)きべらでとる。ウルシの採液方法には、1本の木が枯れるまで採液する殺し掻きと、木を育てながら採液する養生(ようじょう)掻きとがある。殺し掻きは、定植後数年たった木から、初夏から初冬まで5日ごとに採液し、幹から始まって最後には枝からもとる。木が枯れたら伐採し、新たに根際から出る萌芽(ほうが)を数年間育て、採液する。日本での採液法のほとんどがこれである。養生掻きでは木が枯れない程度に採液し、長年とり続ける。採液用のウルシには、樹皮が粗いナシハダと、滑らかなモチハダとの2品種があり、モチハダのほうが良質とされる。果実は加熱圧搾して漆蝋(うるしろう)とよばれる油脂をとる。この主成分はパルミチン酸で、近縁種のハゼからとれる木蝋(もくろう)に似るが、木蝋より上質とされる。漆採取用に栽培するときは雄株を用い、漆と採種を兼ねた栽培には雌株を使う。兼用栽培では殺し掻きはできない。結実は定植後数年たってからである。

 現在、漆の国内需要の9割以上を中国などからの輸入に頼っている。中国でもウルシ栽培が行われ、日本と同種のウルシを用いる。また熱帯ではハゼノキの一種で常緑アンナンウルシT. succedaneum (L.) Kuntze(R. succedanea L. var. dumortieri Kudo et Matsum.)やミャンマー(ビルマ)原産のビルマウルシGluta usitata (Wall.) Ding Hou(Melanorrhoea usitata Wall.)などが栽培され、漆を利用しているが、漆の品質は劣る。

[星川清親 2020年9月17日]

文化史

ウルシの使用は古く、福井県の鳥浜(とりはま)貝塚遺跡からは、縄文時代前期の地層から、赤色漆を塗った櫛(くし)や黒色漆を塗った土器が出土している。また、同時代晩期の青森県の亀ヶ岡や是川(これかわ)遺跡からも、おびただしい数の漆塗りの土器や木器、弓、櫛、籃胎(らんたい)漆器(竹籠(かご)を漆で固めたもの)などが発見されている。それらがツタウルシかあるいはウルシか断定されていないが、後者とすれば、日本に自生はないとされているので、5000年も前に中国と交易があったか、ウルシが日本に伝わって栽培されていたことになる。

[湯浅浩史 2020年9月17日]


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