アサ(読み)あさ

精選版 日本国語大辞典 「アサ」の意味・読み・例文・類語

アサ

(Asa) ユダ王国第三代の王。偶像礼拝を排し、宗教改革を断行した。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「アサ」の意味・わかりやすい解説

アサ
あさ / 麻

狭義にはアサ科(APG分類:アサ科)の一年草、タイマ(大麻Cannabis sativa L.の別称で、それからとれる繊維もさす。広義には長い繊維のとれる植物と、その繊維の総称としても用いる。この場合のアサは、タイマと同じく茎のすぐ下の部分(靭皮(じんぴ))から繊維がとれるチョマ(カラムシ)、イチビボウマ)、コウマジュート)、アマなどの植物とその靭皮繊維をさす。また、葉から繊維をとる単子葉類のマニラアササイザルヘンプ、モーリシャスアサ、ニュージーランドアサなどとその組織繊維も広い意味でのアサに含まれる。しかし、双子葉植物からとる靭皮繊維と単子葉植物からとる組織繊維とでは、繊維の調製方法や繊維の性質はかなり異なっている。この項ではおもにタイマについて解説する。

 タイマは原産地は中央アジアから西アジアといわれ、カスピ海沿岸からシベリア南部、ヒマラヤ、北インドに及ぶ広い地域に野生している。古い時代から繊維をとるために栽培され、世界の主産国は、中国、インド、ルーマニアなどで、日本では栃木県、長野県が主産地である。西インド諸島やアメリカ、イギリスではマリファナmarijuana、インドではバンbhang、ガンジャganja、ペルシア語、アラビア語ではハシーシhashishとよばれる。葉は細長い楕円(だえん)形の小葉3~9枚からなる掌状複葉で、葉柄は長く、茎の下部では対生、上部では互生する。茎は四角柱状でまっすぐに伸び、空洞、高さは2~3メートルになる。雌雄異株で、夏に開花する。雄花には大きな葯(やく)をもった5本の雄しべと5枚の萼片(がくへん)があり、黄緑色で、枝の先端に円錐(えんすい)形に集まって咲く。雌花は茎頂に短い穂状につき緑色で、花柱が2本に分かれた雌しべを1本もつ。秋に直径3ミリメートルほどの灰白色の殻をかぶった扁球(へんきゅう)形の果実が熟す。草全体に独特の悪臭がある。

[星川清親 2019年12月13日]

利用

タイマの繊維は強靭で、弾性が強く、耐水、耐久性にも優れ、織物、網、糸などに広く利用されていた。近年は化学繊維に押され減少の傾向にあるが、通風性に優れ夏着などに需要はなお高い。夏に茎を収穫し、蒸して皮をはぎ、繊維をとり乾燥する。水中に浸して発酵させてから繊維をはぐ方法がとられることもある。皮をはいだあとの茎は、古くタイマを苧(お)とよんだことから苧殻(おがら)とよばれ、屋根葺(ふ)きの下敷き、盂蘭盆(うらぼん)の迎え火・送り火、また懐炉灰の原料として用いる。苧実(おのみ)とよばれる種子は食用とされ、五穀の一つに数えられることもある。現在でも七味唐辛子に調合して用いる。小鳥の餌(えさ)にもする。種子には30%の油を含み黄緑色をした乾性油が得られる。ワニスやせっけんの原料、ペンキの溶剤に用いる。

[星川清親 2019年12月13日]

栽培史

アサ(タイマ)はボルガ流域のスキタイ人が紀元前2000年ころ最初に利用し始めたと推定されている。ギリシアでは前5世紀にヘロドトスが記録しているが、栽培は広がらず、古代エジプトやローマでも普及しなかった。インドでは前9世紀ころから薬用にされていた。中国では前5世紀の『書経』に最初に名があり、6世紀の『斉民要術(せいみんようじゅつ)』は繊維用と種子油用の栽培について記している。日本へは古代に渡来し、ワタが利用される以前の重要な繊維源で、和紙の原料としても重要であった。『常陸国風土記(ひたちのくにふどき)』(723ころ)の行方(なめがた)郡に麻生(あそう)の里の名がある(現在の茨城県行方市)。

[湯浅浩史 2019年12月13日]

薬用

漢方では成熟した種子の中の仁(じん)を麻子仁(ましにん)、中国では火麻仁(かまにん)といい、脂肪油を35%も含有し、緩下、利尿作用があるので老人や虚弱者の便秘や腹水の治療に用いる。タイマは麻酔性のテトラヒドロカンナビノール(THC)とよばれる化学成分を含み、古くから幻覚剤として快楽、宗教、また医療などに利用されてきた。これが「麻酔」の語源である。THCは産地により含有量に差があり、とくにその1変種インドタイマC. s. var. indicaはその成分を多量に含む。日本産のアサにはTHCはごく少ない。それでも江戸時代には芽を食べ錯乱状態になり、眠りこけたと『甲子夜話(かっしやわ)』に記されている。また品種によっては幻覚物質を含まないものもある。インドでは古来より、茎の分泌物チャラス、開花した雌株の頂部を乾かしたガンジャをたばこのように吸う。後者はハシーシとかマリファナとよばれる。また、乾燥させた茎や葉をミルクに浸して飲むバンなどが好まれてきた。またイスラム教の一派のハシシン派(アサシン派ともいう)は敵方を暗殺するのにタイマ吸飲者を使った。英語のassassin(暗殺者)はこれに由来している。また中国でも医療用として使用された記録がある。

 現在、マリファナや、チャラスの常用者が犯罪などを引き起こすことが多く、また健康にもよくないなど世界的な社会問題となっており、日本国内では大麻取締法により栽培、所持、飲用その他が規制されている。なお、大麻取締法にふれるアサは、カンナビス・サティバであるが、アメリカでは、アサ属をC. ruderalis Janisch.とC. indica Lamの2種あるいはそれ以上に細分しており、これらは規制された種でないから大麻取締法に抵触しないとする法廷論争が展開された。しかしC. ruderalisの果実が穂から離れやすい性質、C. indicaの小さい葉と果実、丈の低さなど、いずれもC. sativaの変異の範囲に入れ、アサ属は1種であるとの見解が広く支持されている。

[湯浅浩史 2019年12月13日]


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栄養・生化学辞典 「アサ」の解説

アサ

 [Cannabis sativa].イラクサ目アサ科アサ属に属する.実をアサの実,おの実といってスパイスにする.

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