足駄(読み)アシダ

デジタル大辞泉 「足駄」の意味・読み・例文・類語

あし‐だ【足駄】

雨の日などに履く、高い歯の下駄げた。歯は差し歯で、磨り減ると差し替える。高下駄。男物は歯が厚く、女物は薄い。雨、雪の日は爪革つまかわを掛ける。
[補説]旧制の高校生が好んで履いた。「守貞漫稿」によると、近世の上方には「足駄」の語がなく「高下駄」を使ったという。
[類語]下駄駒下駄ぽっくり朴歯日和下駄高下駄庭下駄雪下駄

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精選版 日本国語大辞典 「足駄」の意味・読み・例文・類語

あし‐だ【足駄】

〘名〙
① 歯のついた木の台に鼻緒をすげたはきもの。近世では特に高い二枚の歯を入れ、台はふつう桐で、下の歯は樫(かし)または欅(けやき)を用い、上に太い緒をつける。雨降りなどで道の悪い時に用いた。高足駄。高下駄。平足駄。〔十巻本和名抄(934頃)〕
※宇津保(970‐999頃)藤原の君「おとど括(くく)りあげて、榑(くれ)あしだはきて」
囲碁の手筋の一つ。相手の石にあたりをかけず、下駄よりもやや大きくかけて脱出を封じた形。
※俳諧・大硯(1678)「死跡なかふなけく春雨西海〉 碁は勝た足駄に掛て打霞〈西鶴〉」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「足駄」の意味・わかりやすい解説

足駄
あしだ

現代では差し歯下駄(げた)の歯の高いものをいうが、古くは下駄の総称。「足駄」は足下(あしした)あるいは足板(あしいた)の音便(おんびん)から出たとされている。かつては屐(げき)という語をあてて、これを「あしだ」と読んでいた。これは、平安時代には僧兵や民間の履き物であったし、中国では仙人の履き物ともされた。この履き物は室町時代になると一般化し、『七十一番職人歌合(うたあわせ)絵巻』のなかには、足駄つくりの絵がみられる。当初の形は、長円形の杉材の台に銀杏(いちょう)歯を差し込んだ露卯(ろぼう)下駄の高(たか)足駄か、歯の低い平(ひら)足駄であった。露卯下駄は歯の臍(ほぞ)(へそ)が台の上に出たものである。この形をしたものは、江戸末期まで地方文化の遺産として残った。江戸末期になると、江戸では差し歯の高い下駄を高下駄、歯の低いものと連歯(れんし)下駄を下駄といい、大坂では足駄の名前は廃れて、差し歯も連歯のものもすべて下駄というようになった。最近は、足駄は雨のときに履くので雨下駄といい、歯の低い差し歯物を日和(ひより)下駄といっているが、元来は江戸末期のころ、日中に履く庶民のものであった。現代洋装生活では履き物にも大変革が起こり、靴の時代になっている。

[遠藤 武]


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改訂新版 世界大百科事典 「足駄」の意味・わかりやすい解説

足駄 (あしだ)

下駄の一種。足の下に履く物を古代にアシシタと呼び,それがなまったもの。現在与論島など薩南島々では下駄をアシジタという。高下駄や足桶,田下駄などをアシダというところがあり,東日本では,歯の高い差歯(さしば)の下駄(西日本では高下駄)をアシダ(足駄は当て字)と呼んでいる。足駄(高下駄)は鼻緒が前寄りにつけられ,引きずるように履くのではねが上がらず,道路の整備された近世以降は歩行用の履物となったが,中世では衣服が汚れないよう戸外での排便や水汲み,洗濯などに用いられた。奈良時代の山岳呪術者である役小角(えんのおづぬ)は,修行のときに足駄を履いたといわれ,山岳信仰の行者や祭礼での猿田彦神,天狗などが足駄や一本歯の高下駄を履いている。また,遊行(ゆぎよう)する僧が晴雨にかかわらず足駄を履いている姿が,《一遍聖絵》に見られる。
下駄
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百科事典マイペディア 「足駄」の意味・わかりやすい解説

足駄【あしだ】

古くは下駄(げた)類の総称で,平安時代僧兵や庶民の履物(はきもの)として現れた。もとは1材からのくりぬきであったが,江戸時代になると差歯が発達し,江戸では歯の高いものを足駄,くりぬきのものを下駄と呼び,京阪では高下駄,差下駄と呼んだ。材はキリの台が上質とされ,歯はスギ,ホオノキなどが用いられる。
→関連項目日和下駄

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「足駄」の意味・わかりやすい解説

足駄
あしだ

屐とも書き,また屐子 (けいし) ともいう。主として雨天用の高下駄。木製の台部の表に鼻緒をつけ,台部の下には2枚の差歯がある。足下または足板の転訛した呼称といわれる。

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