木履(読み)ポックリ

デジタル大辞泉 「木履」の意味・読み・例文・類語

ぽっく‐り【木履】

《「ぼくり」の音変化》女児用の駒下駄こまげたの一。厚い台の底をくりぬき、後ろを丸く、前部を前のめりにし、漆を塗ったもの。
[類語]下駄足駄駒下駄朴歯日和下駄高下駄庭下駄雪下駄

ぼく‐り【木履】

《「ぽくり」とも》
浅い木ぐつ。
足をのせる木の台に鼻緒をつけた履物。下駄・足駄の類。
ぽっくり(木履)」に同じ。

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精選版 日本国語大辞典 「木履」の意味・読み・例文・類語

ぼく‐り【木履】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「ぽくり」とも )
  2. 木製の履物。〔羅葡日辞書(1595)〕 〔貫休‐思匡山賈匡詩〕
  3. あしだ。高下駄。
    1. [初出の実例]「ぼくりはく人ぬぎたらば、あなたは草履をぬぎ」(出典:甲陽軍鑑(17C初)品四〇下)
  4. ぼっくり(木履)
    1. [初出の実例]「天鵞絨の鼻緒ついたる木履(ボクリ)穿きつつ」(出典:いさなとり(1891)〈幸田露伴〉一)

ぼっく‐り【木履】

  1. 〘 名詞 〙 ( 「ぼくり」の変化した語。「ぽっくり」とも ) 下駄の一つ。台の底をくり抜き、うしろを丸く、前部を前のめりにしたもの。ふつう、黒や朱の漆を塗る。多く少女が用いる。ぽっくりげた。
    1. [初出の実例]「木履(ポックリ)が何寸減ってゐるとか、精細に観察して」(出典:二人女房(1891)〈尾崎紅葉〉中)

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改訂新版 世界大百科事典 「木履」の意味・わかりやすい解説

木履 (きぐつ)

木沓とも書かれる。広義には木製のはきもの全般を指すが,狭義には桐材などをくり抜き,甲の部分をおおうように作った浅いこしらえのはきもの(浅沓)。木履はのちにはボクリと発音し下駄の類も指すようになった。平城京址から杉の一木作りですりへった歯のついた子ども用木ぐつが出土しており,朝鮮半島のナマクシン(木鞋)に似ているところから,大陸より伝わったものと思われる。奈良時代の《正倉院文書》によると,経を写す経師(きようじ)や文字の誤りを見る校生(こうしよう),書画表具にする装潢(そうこう)に支給されているので,冬の板の間土間での仕事に履いたものであろう。平安時代中ごろから文官の正服としてしとうず)とともに用いられた。のちには神官僧侶が大祭などで履くようになった。木ぐつはフランス,オランダ,ベルギーなどヨーロッパ諸国でも広く行われ,サボの名で知られる。
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普及版 字通 「木履」の読み・字形・画数・意味

【木履】もくり

下駄。〔宋書、謝霊運伝〕奴に衆(おほ)く、義故門生數百。山を鑿(うが)ち湖を浚(さら)へ、~必ず幽峻に(いた)る。~登躡(とうでふ)するに、常に木履をけ、山に上るときは則ち齒を去り、山を下るときは其の後齒を去る。

字通「木」の項目を見る

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「木履」の意味・わかりやすい解説

木履
きぐつ

木沓とも書く。ヨーロッパではサボ sabot,クロッグなどと呼ばれる木製の靴。前2世紀頃から用いられた雨天用の靴で,ヨーロッパ,インド,中国,朝鮮,日本 (平安時代以後) などで用いられた。ヤナギクルミブナなどの木材を乾燥させ,これをくりぬいてつくる。日本で正徳年間 (1711~15) 頃から子女の間にみられたぽっくりは,この木履をはいたときの音ボクリから転訛した名称である。

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世界大百科事典(旧版)内の木履の言及

【木履】より

…広義には木製のはきもの全般を指すが,狭義には桐材などをくり抜き,甲の部分をおおうように作った浅いこしらえのはきもの(浅沓)。木履はのちにはボクリと発音し下駄の類も指すようになった。平城京址から杉の一木作りですりへった歯のついた子ども用木ぐつが出土しており,朝鮮半島のナマクシン(木鞋)に似ているところから,大陸より伝わったものと思われる。…

【下駄】より

… 下駄は古くはアシダと呼ばれ,足下から名付けられたことが《和名抄》によってわかる。また奈良時代の《東寺写経所解》(760)には木沓(きぐつ)と木履(ぼくり)が併記されているが,出土物には木を靴の形にくり抜いたものと,いわゆる今日の下駄の両方があることから,ボクリと呼ばれていたことがわかる。ゲタは下踏,下駄と書かれて江戸時代の文献から見られる新しい言葉であるが,橋桁や湯げた(腰掛台)など平板に2本の足をつけたものを古くよりケタまたはゲタと呼んできたことから,近世になってアシダやボクリもゲタと呼ぶようになった。…

※「木履」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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