改訂新版 世界大百科事典 「アカショウビン」の意味・わかりやすい解説
アカショウビン (赤翡翠)
ruddy kingfisher
Halcyon coromanda
ブッポウソウ目カワセミ科の鳥。全長約25cm。全身が美しい濃赤褐色で,腰に青白色の羽毛がある。くちばしは大きく,黄色みを帯びた赤色。脚も赤い。アジア東部の温帯から熱帯地域に広く繁殖し,北方で繁殖するものは熱帯に渡って越冬する。日本には,5月ごろ全国各地に夏鳥として渡来し繁殖する。九州以北では主として山地の川沿いの広葉樹林に生息する。生息数が比較的少なく,しかも,人を避ける性質が強いので,観察しにくい鳥の一つである。南西諸島では多くは夏鳥であるが,少数は越冬するようである。とくに先島諸島では生息数が多く,平地の林でもふつうにすみ,人をほとんどおそれないのでよく観察できる。ピョロロロ,ピョロロロと聞こえるよくとおる独特の声で鳴く。6~7月に樹洞や土手の穴の中に,1腹4~6個の卵を産む。食物はおもにサワガニ,カエル(とくにアオガエル),トカゲ,昆虫類などを地上でとっている。曇天や雨の降りそうな日によく鳴くので,この鳥はピョロロロ鳴いて雨乞いをするといわれ,また雨を待ちかねて鳴くともいわれ,水乞鳥,水恋鳥という古名や地方名がある。近縁のヤマショウビンH.pileataは全長約28cm。日本にはおもに旅鳥として渡来するが稀。
執筆者:安部 直哉
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報