改訂新版 世界大百科事典 「イスカ」の意味・わかりやすい解説
イスカ (交喙)
red crossbill
Loxia curvirostra
スズメ目アトリ科の鳥。スズメより少し大きく,全長約17cm。雌雄異色で,雄は全体に橙赤色,雌は黄緑色。くちばしの先が鋭くとがってかぎ形に曲がり,上下のくちばしの先が交差して,食い違っており,イスカの名はこれに由来する。またここから,ものごとがうまくかみ合わないことを〈イスカの嘴(はし)の食違い〉という。この独特な形はマツの未熟な球果から種子をとり出すための適応で,くちばしを閉じることによって鱗片をこじあける。ユーラシア大陸と北アメリカの温帯北部と亜寒帯の針葉樹林に分布している。冬は多少南へ移動するが,定期的な渡りはしない。しかし,年によっては大群が移動し,南下する。針葉樹林の種子生産が悪い年に大移動が起こるといわれる。日本では主として本州中部以北の亜高山帯で繁殖しているが,大部分が冬鳥で,渡来数はやはり年によって著しく異なる。また,大群が現れた年の翌年以後の数年間は各地で繁殖するものが多く,夏に亜高山帯の針葉樹林で見かけることが少なくない。1夫1妻で繁殖し,針葉樹の茂みの中に,わん形の巣をつくり,1腹3~4個の卵を産む。ギョッギョッと鳴く。
執筆者:中村 登流
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報