新北区(読み)しんほくく(英語表記)Nearctic region

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

新北区
しんほくく
Nearctic region

北界に属する動物区の一つ。アルフレッド・R.ウォレスが 19世紀後半に,ユーラシア大陸を旧北区,北アメリカを新北区にほぼふりあてたもの。今日では,より大きな全北区のうちの新北亜区として扱うことも多い。北アメリカ大陸,グリーンランドアリューシャン列島を含む。メキシコ南部,中央アメリカ,西インド諸島は新北区と新熱帯区の中間地域でカリブ推移帯といわれ,K.シュミットは全北区のカリブ亜区としている(1954)が,新熱帯区に入れる学者もある。ビーバースカンクプロングホーンホリネズミシチメンチョウガラガラヘビドクトカゲ,淡水魚のアミアレピソステウスなどが特徴的。北アメリカ大陸とユーラシア大陸は古第三紀始新世まで陸続きで共通種が多く,合わせて全北区ともされるが,新北区には旧北区にいるハリネズミ,ハイエナ,イノシシ,ラクダなどがいない一方で,旧北区にいないスカンクなどがおり,アルマジロ,キノボリヤマアラシ,ペッカリーピューマ,有袋類のオポッサムハチドリなど新熱帯区と共通種も含む。

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

新北区
しんほくく
nearctic region

動物地理区の一区分。北界に属し、メキシコ中部以北の北アメリカ大陸とグリーンランドが含まれる。気候的には温帯から寒帯に位置する。大陸の中央部には平坦(へいたん)な草原が広がり、東部には落葉樹林や混交林が発達している。西部にはロッキー山脈が走り、西海岸にはチャパラル植生がみられる。南西部には乾燥地帯がある。北方には針葉樹林が広がり、さらに北はツンドラとなる。淡水魚類を除けばこの地域に固有な動物群は少なく、北部では旧北区(ユーラシア温帯以北)との共通性が、南部では新熱帯区(中央・南アメリカ)との関連が強い。旧北区と新熱帯区の移行的な動物相とみることも可能であるが、一方、旧北区との動物相との共通性を重視して、両区をあわせて全北区とする考えもある。

 固有・準固有な動物には、哺乳(ほにゅう)類のプロングホーン科、ヤマビーバー科、ホリネズミ科、ポケットネズミ科、鳥類ではシチメンチョウやミソサザイモドキ、爬虫(はちゅう)類ではドクトカゲ科のほかに、カメ類、トカゲ類、ヘビ類の一部、有尾両生類のアホロートル科やシレン科がある。魚類では固有な目としてアミア類があり、ほかにもガーパイクなどいくつかの特徴的な科や亜科がある。このほか、旧北区と共通なモグラ、ナキウサギ、ビーバー、オナガネズミ、ワシ・タカ類、ライチョウ類や、新熱帯区から北上したオポッサム、アルマジロ、ペッカリー、コンドル、タイランチョウ、フラミンゴなどが分布する。

[片倉晴雄]


出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典の解説

しん‐ほっく ‥ホクク【新北区】

〘名〙 動物地理分布区の一つ。北アメリカ・グリーンランドを含む地域で、南は新熱帯区のカリブ推移帯と呼ばれる地域に接する。スカンク、アライグマなどが代表種。旧北区との共通種が多い。→旧北区全北区

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

世界大百科事典内の新北区の言及

【アメリカ】より

…第四紀の氷河期には北アメリカでも五大湖南方まで氷域が繰り返し広がり,内陸の大部分が氷河性環境に置かれたことが,モレーンなどの氷河堆積物や地形に残されている。【浜田 隆士】
【生物相】

[北アメリカ]
 北アメリカはほぼ動物地理区上の新北区に相当し,いくつかの固有種がいるが,ユーラシア大陸を中心とする旧北区と多くの点で共通する動物相をもつため,両者を併せて全北区とされることが多く,植物区系上は全北区として扱われている。 北アメリカはアラスカのツンドラからフロリダ半島の亜熱帯性の湿地帯まで,その環境はきわめて多様である。…

【動物地理区】より

…動物の地理分布,すなわち各地の動物相は,大陸,島嶼(とうしよ)配置,気候帯,環境などの地史的要因に規制されるが,そういった動物相の特徴を基にした地理的区分。現在では,ヨーロッパ,アジアとアフリカを含めて旧世界,南北アメリカは新世界と呼び,ユーラシア大陸は旧北区,北アメリカは新北区,両者を合わせて全北区とし,アフリカはエチオピア区,インド,南アジアは東洋区,南アメリカは新熱帯区,オーストラリアは太平洋諸島を含めてオーストラリア区と呼ぶのが一般的である。動物地理区分の提唱はスクレーターP.L.Sclaterの鳥類(1858),哺乳類(1894)についてのものが最初で,A.R.ウォーレス(1876),T.H.ハクスリー(1868)などが続いたが,いずれも鳥獣の分類地理学的な検討に基づくものであった(図1)。…

※「新北区」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について | 情報