イヌホオズキ(その他表記)black nightshade
Solanum nigrum L.

改訂新版 世界大百科事典 「イヌホオズキ」の意味・わかりやすい解説

イヌホオズキ
black nightshade
Solanum nigrum L.

畑や道端などに普通にみられるナス科一年草。世界中の熱帯温帯域に広く分布し,ソラニンsolanineなどのアルカロイドを含む有毒植物である。茎はよく分枝し,高さ20~90cmで平滑。葉は互生し,卵形で裏面は白みを帯びる。散形花序は茎の節間につく。これはナス科にしばしばみられる特徴で,茎と葉柄が合着したものと説明されているが,形態学的にはきわめて興味深い性質である。花は8~10月に咲き,花冠は白色,5深裂し平開する。ナス科の特徴として,中央に1本の柱頭が直立し,5本のおしべがそれをとりかこむ。漿果(しようか)は球形,熟すと黒変し,学名nigrum(黒い)はこの特徴に由来する。漢方では全草を竜葵(りゆうき)と呼び,解熱利尿剤に利用する。また熱帯地方では若葉果実食用にすることがある。

 近縁種テリミノイヌホオズキS.photeinocarpum Nakamura et Odashimaは山地に生え,葉はうすく先がとがる。やはりアルカロイドを含む有毒植物である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「イヌホオズキ」の意味・わかりやすい解説

イヌホオズキ
いぬほおずき / 犬酸漿
[学] Solanum nigrum L.

ナス科(APG分類:ナス科)の一年草。茎は高さ30~60センチメートル、葉は互生し、卵形で先は短くとがる。8~10月、節間の途中に花軸を出し、散形状に白色の5弁花を下向きに開く。果実は球形で黒く熟す。日本全土、世界の温帯から熱帯にかけて広く分布する。全草有毒であるが、また薬にもする。テリミノイヌホオズキS. americanum Mill.(S. nodiflorum Jacq.)は葉の先が鋭くとがり、花や種子は小形である。有毒植物。南北アメリカに分布するが、全世界の熱帯から亜熱帯の地域に帰化している。日本では農耕地や河川敷などにみられる。

[高橋秀男 2021年6月21日]

 なお、中国では竜葵(りゅうき)と称して、根と種子を清熱、解毒、消腫(しょうしゅ)に用いる。全体にソラニンというアルカロイドが存在するので、未熟な果実を食べた子供が死亡した例もある。

[長沢元夫 2021年6月21日]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イヌホオズキ」の意味・わかりやすい解説

イヌホオズキ
Solanum nigrum; nightshade

ナス科の一年草で山野に生え,日本全土をはじめ世界の熱帯,暖帯に広く分布する有毒植物。茎の高さは 60~90cmに達し,分枝してよく茂る。葉は互生し,卵形でとがり,全縁である。夏から秋にかけて,緑色の茎の節間に細い柄を出し,その先に白色の小花が数個群がってつく。緑色の萼片は5枚,花冠は5裂して放射状に平らに開き,おしべも5本ある。葯 (やく) は黄色で細長く花柱のまわりに集って立ち,先端に横向きの孔があって黄色の花粉を吐き出す。果実は径6~7mmの球形の液果で,黒く熟する。

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百科事典マイペディア 「イヌホオズキ」の意味・わかりやすい解説

イヌホオズキ

ナス科の一年草。路傍,畑,荒地などにはえ,全世界に広く分布。茎はよく枝を分けて広がり,高さ60〜90cm。葉は卵形で互生する。花は夏〜秋に咲き,白色で径7〜10mm,皿形で5裂する。果実は丸い液果で黒熟。全草にアルカロイドを含む有毒植物で,漢方では竜葵(りゅうき)と呼び解熱・利尿剤に利用。

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