イントレランス(読み)いんとれらんす(英語表記)Intolerance

日本大百科全書(ニッポニカ) 「イントレランス」の意味・わかりやすい解説

イントレランス
いんとれらんす
Intolerance

アメリカ映画。1916年作品。監督デビッド・ウォーク・グリフィス人類の不寛容(イントレランス)の歴史を主題として、古代バビロンの崩壊キリスト受難、中世パリのサン・バルテルミーの虐殺、現代の失業者の受苦、の四つの時代の物語を描く。この作品の特色は映画表現の独創性にあり、それはまず物語の構成法に発揮されている。四つの物語は時代に関係なく、同時に進行する。そして四つの小川が1本の大河となり、海に注ぎ込むように、それぞれの物語は錯綜(さくそう)し、ついに人類のドラマという大きな流れに統合される。この錯綜と統合を実現する編集技術、とくに急速なカット・バックはみごとで、極度のクローズ・アップやロング・ショット、クレーンを使った俯瞰(ふかん)撮影、あるいは長距離の移動撮影などの撮影技術とともに、映画独自の表現技術を集大成化したもので、ソビエト映画や日本映画をはじめ全世界に影響を及ぼした。

[山本喜久男]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「イントレランス」の意味・わかりやすい解説

イントレランス
Intolerance

アメリカ映画。デビッド・ウォーク・グリフィス・プロ 1916年作品。監督,脚本 D.W.グリフィス。主演リリアン・ギッシュほか。題名どおり非寛容を人道主義的な立場から批判するのがテーマ。4つのエピソードから成り,古代バビロンの崩壊,キリストの受難,サン=バルテルミの虐殺,現代労働者への社会的圧迫を扱っているが,これらエピソードは大胆なカットバックにより,1つの物語に構成され,時間,空間の枠を越え自由に平行して展開する。さらに大写しや遠景,移動撮影などの撮影技術,巨大なセットや群集を用い,国際的に映画芸術の誕生として画期的な評価を得,日本をはじめ各国の映画芸術の展開に大きな刺激を与えた。

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