起重機ともいう。荷をつって垂直および水平方向に移動させる機械で,一般には三次元の作業範囲内の任意の位置に荷を移動させる機能を備えている。各種工場,港湾,倉庫,発電所,建設工事など,生産や物流のほとんどあらゆる分野で,材料や製品,その他の重量物を立体的に移動させるという作業が必要であるから,その役割を担うクレーンの性能や稼働率は,生産や物流の能率に大きな影響を及ぼす。クレーンのつり荷の形態には,個体として取り扱う機械や鉄骨構造物(鉄構)やコンテナーのような荷と,ばらのまま取り扱う鉱石や石炭や穀類などのような荷(ばら物)とがあり,それぞれに適したつり具や機構が用いられる。一般的なつり具として,個体扱いにはフック,ばら物扱いにはグラブバケットが用いられる。クレーンの規模は,つり上げる物の重量,作業範囲から定まるスパン・旋回半径・揚程などの寸法,運動の速度,作業の激しさなどによって決まる。規模の目安をクレーン自身の重量(自重)により表現すると,小は1t前後から,大は数千tに及ぶものまである。
重い物をもち上げるために,倍力装置として滑車装置を用いた物上げ装置はすでに紀元前から利用されていたらしいが,重い物の上げ下げだけでなく,水平方向の移動機能をも併せ備えた現在のようなクレーンの原型は,ようやく15~16世紀の記録に土木工事用のデリックとして現れてくる。19世紀後半からの電力の利用による工業各分野の発展に伴って,クレーンの性能や規模の向上が要求され,また,この要求を満たすクレーンが,電動機の活用により実用に供されるようになった。最初の電動クレーンは,1890年ころドイツにおいて製品化されたといわれる。
クレーンは,使用目的に応じて多種多様の形式をとるが,その形態と運動の面から大別すると,天井クレーン,橋形クレーン,ジブクレーン,その他となり,それぞれの典型的な構造,特徴,用途を以下に記す。
(1)天井クレーン 高架レール上を走行するクレーンで,桁と桁上を横行するクラブトロリーとよりなる。桁には走行装置のほか,各電動機の制御用機器や運転室が設けられる。クラブトロリーは,横行装置と巻上装置とを備えており,つり荷はつり具とワイヤロープとを介して巻上装置により上げ下げされる。駆動用電力は走行方向に張り渡した給電線からクレーンへ供給される。天井クレーンは,運動部分が床面を占有しないので,床面積の利用効率や安全性の点から屋内の工場や発電所などで広く用いられる。製鋼クレーンに代表される生産プロセス専用のクレーンは天井クレーンの形態をとるものが多いが,プロセスに応じた特殊の機構を備えており,直接的生産設備としての性格が強い。ごみ処理工場では生ごみや灰の処理用にグラブバケット付き天井クレーンが用いられ,自動運転を採用するものも多い。
(2)橋形クレーン 左右の脚と脚に支持された桁および桁上を横行するトロリーとにより構成され,地上に設けたレール上を走行する。脚の外側に桁を張り出して作業範囲を広げたものも多い。トロリーに巻上装置と横行装置とを備えたクラブトロリー式,桁上に巻上用および横行用のウィンチを設け,これから導いたワイヤロープを介してトロリーの移動および荷の昇降を行うロープトロリー式およびそれらの折衷形がある。ロープトロリー式は軽量で設備費の経済性において優れており,クラブトロリー式は,運動の精度や保守の容易さの面で勝っている。橋形クレーンは,屋外の材料ヤード,鉄構組立てヤード,造船ドックなどで広く用いられる。コンテナーの陸揚げ・積込用のコンテナークレーン,鋼材の陸揚げ・積込用の成品クレーン,ばら物の陸揚専用のアンローダーunloader(大能力のもの)などは橋形クレーンの形をとり,クレーンや船の移動時に互いの干渉を避けるために海側に張り出した桁を起伏できるようにしている。走行レールを設けないで,コンクリート路面上を走行できるようにしたゴムタイヤ付きの橋形クレーンもあり,コンテナヤードなどで用いられる。
(3)ジブクレーン つり荷を支持する腕(ジブまたはブームと呼ぶ)をもっており,この腕が垂直軸を中心として旋回する。地上に設けたレール上を走行するものが多い。傾斜したジブの先端から荷をつる形式と,水平の片持ちばり上を横行するトロリーから荷をつる形式とがある。傾斜ジブ式のクレーンで,旋回半径(旋回中心からつり荷までの水平距離)を変えたときに荷が上下に動くと,運転しづらく,精度を要する組立作業や高速の荷役には向かないので,これを改良して荷がほぼ水平に移動するようにしたものが引込みクレーン(水平引込みクレーン)である。水平引込機構には,種々の形式があるが,高速,高頻度の荷役にはダブルリンク式が適しており,中小能力のアンローダーは通常この形式をとる。鉄構組立てヤードや造船所では,狭いスパンのレール上を走行し,大半径,高揚程の作業を行う塔形引込みクレーンが活用される。屋外用クレーン全般の問題ではあるが,とくにこの種のクレーンでは転倒に対する安定度について設計上綿密な検討を必要とする。ジブクレーンには,このほか各所の現場を移動して作業するクレーンとして,トラックにクレーンを設置したトラッククレーンや,走行装置にキャタピラを使用したクローラークレーンなどがあり,また,港湾や海上建設工事における短期間の重量物取扱用として,浮きクレーン(クレーン船)も用いられる。
(4)その他の形式 立体自動倉庫では,ラックとラックの間を走行し,指定番地の荷を出し入れする自動運転のスタッカークレーンが用いられる。数百mのスパンのクレーンとして,桁の代りにワイヤロープを張り渡したケーブルクレーンがあり,主としてダム建設工事に用いられる。
(1)鋼構造部分 桁,脚,ブームなど鋼構造部分の各部には種々の力がかかるが,設計では,荷の重量やクレーンの自重のほかに,各種の慣性力や風荷重などを含む最大の負荷のもとでの破断や降伏に対する安全度(静的強度という)と,負荷の繰返しに対する疲労強度の検討を行う。機能上要求される剛性を確保することも必要である。
(2)機械部分 巻上げ,横行,走行,旋回,引込みなどの運動をつかさどる装置や,生産プロセス専用クレーンの特殊作業用の機構や,それらを構成する機械要素を総称して機械部分という。機械部分は主として負荷の繰返しに対する疲労強度と,装置の精度上要求される剛性とに基づいて設計される。
(3)動力および制御部分 機械装置に機械的動力を供給し,その運動を制御する部分である。永久的設備のクレーンは大部分が電動式であるが,トラッククレーンなど機動性を特徴とするものでは内燃機関を用い,運動の制御性能の向上や機構の簡素化を目的として油圧駆動を採用するものも多い。クレーンの運動の制御(速度制御)に要求されることは(a)円滑な起動,加速,減速,停止(b)作業に適した種々の速度で運転できること,とくに精度を要する作業では,安定した低速が得られ,微小な距離の移動ができること(c)高速,高頻度のクレーンでは,機械的ブレーキの負担を軽減するためのブレーキ作用を有することなどであり,クレーンの用途と運動の種類に応じて各種レベルの制御方式が採用される。クレーンの電動機としては,交流の巻線形三相誘導電動機が多く用いられ,その制御には,簡易なものでは単なる二次抵抗制御,高度なものではサイリスターを用いた一次可変電圧制御などが用いられる。アンローダーやコンテナークレーンのように高速,高頻度で使われ,広範囲の速度制御性を要求される場合には,直流分巻電動機の可変電圧制御が適している。この方式では,旧来の電動発電機を用いたワードレオナード制御に代わって,近年はサイリスターを用いた静止レオナード制御が普及している。また,クレーンの用途に応じて,自動運転や無線操縦も採用される。
執筆者:林 文也
アメリカの小説家。ニュージャージー州にメソディスト派牧師の子として生まれた。大学を中退してニューヨークに出,新聞記事を書きながら創作に従事した。在学中に書き始めた《街の女マギー》は,ニューヨークの貧民街に住む少女の過酷な運命を描いたもので,アメリカ最初のすぐれた自然主義小説といわれるが,出版社が忌避し,1893年自費出版する(改訂版1896)。W.D.ハウエルズ,H.ガーランドに認められたもののほとんど売れず,生活は困窮した。やがて南北戦争に従軍した一兵卒の心理を描いた《赤い武功章》(1895)を発表する。戦争の虚飾を払拭した心理的リアリズム,大胆かつ詩的な印象主義的手法はまずイギリス,続いてアメリカで好評を得,一躍有名となる。西部,メキシコなどにも取材の足をのばすが,97年1月キューバ独立戦争の報道に赴く途中乗船が難破し,厳冬の海に漂流する。その経験をもとにして,すぐれた短編《オープン・ボート》(1897)を書く。だが私生活,作品にみられる彼の偶像破壊的姿勢はアメリカ文壇の激しい揶揄(やゆ)を浴び,居をイギリスに移す。ギリシア・トルコ戦争,米西戦争にも従軍記者として参加したが,無理がたたって肺を病み,28歳の若さで死去。代表作にはほかに短編《青いホテル》(1898),《怪物》(1899),詩集《黒い騎手》(1895)などがある。ヘミングウェーなどに大きな影響を与え,また現代詩イマジズムの先駆者としての役割を果たした。
執筆者:板橋 好枝
イギリスのデザイナー,挿絵画家,画家。肖像画家の子としてリバプールで生まれ,13歳で木版画家リントンW.J.Lintonの弟子となる。ラファエル前派,ことにバーン・ジョーンズや日本の版画の影響を受け,油絵の本格的な作品も描いたが,《トイ・ブックスToy Books》のシリーズ(1865-1900),《ベビーズ・オペラBaby's Opera》(1876)等で絵本画家として名声を確立した。一方,そのすぐれた装飾感覚はモリス,ミントンT.Minton,ウェッジウッドなど多くの工房のために行った壁紙,陶器,テキスタイルなどのデザインに発揮されている。1888年発足したアーツ・アンド・クラフツ展示協会の初代会長となる。以降,いくつかの美術学校の長を歴任した。著作に《新旧書物の装飾挿絵》(1896),《デザインの基本》(1898),《ある芸術家の回想》(1907)などがある。
執筆者:湊 典子
アメリカの詩人。オハイオ州の富裕な商人の子に生まれ,17歳で学校をやめて,ランボーのように放浪した。いろいろな職業を遍歴したあげく,1920年以来ニューヨークに定住し,象徴詩やイマジズムの影響を受けた短詩集《白いビルディング》(1926)を出した。その数年前に出たエリオットの《荒地》の悲観主義にあきたらず,ホイットマンの楽天主義を受けついだアメリカの一大叙事詩を書こうとして,パトロンの支援をえてキューバに出かけ,一連の美しい象徴詩風の抒情詩を書き上げた。その詩集《橋》(1930)は,彼のアメリカの夢をよく歌い上げた力作で,とくにニューヨークのブルックリン橋に寄せた美しい序詩は忘れがたい。その後は詩作上ゆきづまり,1932年の4月27日にメキシコから帰る船の上から身を投げて死んだ。死後《全詩集》(1933)が出て,最後のロマン派として才能を惜しまれている。
執筆者:新倉 俊一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
重量物を吊(つ)り上げ、移動させる機械。起重機ともいう。機械装置のなかではもっとも古くから利用されてきたものの一つで、古代エジプトのピラミッド建設における重量物運搬用に各種のクレーンが使用されて以来、約5000年の歴史をもつ。最初は人力、畜力あるいは水力が使われたが、19世紀中ごろから蒸気動力が使用され、19世紀終わりごろから電力の使用が始まった。日本には1871年(明治4)ごろ輸入され、造船所に設置されたのが初期のものである。
産業機械としてのクレーンの利用度は高く、経済、社会の発展に伴い、大型化、高速化、最近では自動化へと著しい進歩を示している。現在、クレーンは用途、能力別にきわめて多種のものがつくられ、各種産業や建設工事に多用されている。代表的なクレーンとしては、トラッククレーンtruck crane、クローラークレーンcrawler craneなどの自走クレーン、ジブクレーンjib crane、タワークレーンtower crane、門形(もんがた)クレーン、天井クレーン、ケーブルクレーンcable craneなどがある。
[河野 彰・清水 仁・鴫谷 孝]
クレーンに車輪または履帯を備え、軌道によらず自走できる。もっとも一般的なものはトラッククレーンおよびクローラークレーンであり、建設工事における主力揚重機械となっている。トラッククレーンは下部走行体の形式がトラックシャシーにクレーンを搭載したもので、路面状況が良好な場合は機動性に優れている。クローラークレーンは、下部走行体が履帯式のもので、接地圧が低く足場の悪い所でも使用できるのが特長である。いずれも吊り上げ能力20トン未満のものから、大型機では200トン吊り以上のものまである。荷を吊って走行できる軽便なクレーンとしてホイールクレーンwheel tractor craneがある。吊り上げ能力3~20トン程度が一般的で、建設工事、工場・倉庫、港湾荷役などに用いられる。
[河野 彰・清水 仁・鴫谷 孝]
張り出したジブ(ブームboom)の先端に荷物を吊り下げて荷役を行うクレーンで、固定形と、軌条上を走行する走行形があり、いずれも360度旋回できるものが普通である。吊り上げ能力は1トン未満から1000トンを超える超大型機まであり、その用途は土木建築、造船所、港湾荷役など広範囲にわたる。
[河野 彰・清水 仁・鴫谷 孝]
高層建築物の建設に多用される。高いタワー頂部に旋回体があり、これに起伏形または水平形のブームを取り付けたものである。固定式と移動式に大別される。固定式タワークレーンは、タワー頂部のクレーン本体をせり上げることによって塔高を変更できるセルフクライミング形が普及し、超高層ビル工事用では最大揚程200メートル以上の機種もある。移動式タワークレーンは、クローラークレーンのクレーンブームのかわりにタワークレーンの付属装備品をつけたものが一般的である。タワーの自立、折り畳みが自力ででき、自走式なので機動性に富み、クローラークレーンに比べてふところが深いなどの特長があり、中層建築工事に多用される。
[河野 彰・清水 仁・鴫谷 孝]
主として屋外地上に敷設された軌条上を走行する門形の桁(けた)上にトロリーを横行させて荷役するクレーンで、橋形(はしがた)クレーンあるいはゴライアスクレーンgoliath craneともいう。吊り上げ能力5~1500トン、門形桁径間5~200メートルのものがそれぞれ用途に応じて使用され、軌条走行式のほかに固定式およびタイヤ走行式のものも製作されている。
[河野 彰・清水 仁・鴫谷 孝]
門形クレーンと類似の構造のもので、工場・倉庫などの天井部分に設置されるのでこの名がある。相対する壁に沿って設けた軌条に直角に走行する桁をのせる。この桁に巻き上げおよび横行装置をもつトロリーをのせ、桁の走行と桁上のトロリーの横行により吊り上げた重量物を運搬する。吊り上げ能力は、3~200トン程度が普通である。天井クレーンは、各種製造工場、倉庫、発電所などで資材・製品運搬、機械据付けなどに広範囲に使用され、ばら物原料専用のグラブバケット付き天井クレーン、トロリーの下に旋回ジブをつけた旋回ジブ付き天井クレーンなど用途に応じ種々の形式がある。
[河野 彰・清水 仁・鴫谷 孝]
二つの支柱(塔)間にかけ渡したワイヤロープを軌道として、これにトロリーを走行させ吊り上げ運搬を行うもので、古くは山地の川駕籠(かご)渡しに始まり、現在のダム建設工事、橋梁(きょうりょう)架設などに使用される本格的ケーブルクレーンに発展した。大型ダム工事では、吊り上げ能力20~28トン、支間1000メートル級のものが用いられており、遠隔制御による運転の自動化も進んでいる。主索を支持する塔の形式によって、固定形、片側走行形、両側走行形などに分類される。
固定形は両端の支柱を固定したもので、一般に小規模なダム工事や補助クレーンとして用いる。片側走行形は、一端を固定し反対側の鉄塔を円弧状に移動させる形式であり、両側走行形は、両端の鉄塔が平行または円弧状に移動する形式である。
[河野 彰・清水 仁・鴫谷 孝]
アメリカの小説家、詩人。メソジスト派の牧師の子としてニュー・ジャージー州に生まれたが、8歳で父を亡くす。早くからスケッチ風の短編を書き、また新聞社の地方通信員の兄を手伝って記事を執筆するが、ガーランドのリアリズム文学についての講演を取材して感銘を受ける。1891年大学を中退してニューヨークに出、赤貧に甘んじながら、在学中に書き始めた『街の女マギー』を完成させる。売春婦に転落し、自殺に追い込まれていく哀れな娘の運命を描いたこの作品は、反道徳的なものとみなされ、93年自費出版せざるをえなかったが、ガーランドやハウェルズに認められ、やがてアメリカにおける自然主義文学の先駆的作品と目されるに至る。95年『赤色武勲章』が出版されるや一躍有名になる。この作品は、戦争体験が無くまったくの想像力で書かれたが、一方、体験こそ真実発見の道だと信じるクレーンは、通信社の求めに応じて西部やメキシコに取材の旅をしたり、ギリシア・トルコ戦争、アメリカ・スペイン戦争の従軍記者となって戦場に赴く。とくに97年キューバ革命の取材に出かけようとしてフロリダ沖で船が難破し、九死に一生を得る。その体験をもとに書かれたのが短編「オープン・ボート」(1897)である。彼の私生活や作品における因習にとらわれない態度は多くの誤解や中傷を招き、同年イギリスに居を移す。コンラッドらと親交を結ぶが、肺結核を病み、28歳の若さで世を去る。長編『ジョージの母』(1896)、短編集『オープン・ボート』(1898)、『怪物』(1899)、『ホワイロムビル物語』(1900)、詩集『黒い騎士たち』(1895)などがある。イメージの豊かな、簡潔な文体、印象主義的手法はヘミングウェイなどに影響を与え、また彼の詩は現代詩におけるイマジズムの先駆と称される。
[板橋好枝]
『押谷善一郎著『スティーヴン・クレイン』(1981・山口書店)』
アメリカの詩人。オハイオ州の富裕なキャンディー商を父として生まれる。13歳から詩作し、17歳のとき、大学入学の準備でニューヨークに出る。しかし、ここで詩人仲間に加わり、進学を放棄。その後、T・S・エリオット、E・パウンドらに学び、しだいに詩人としての地位を固めた。しかし猛烈な詩作活動と生活上の破綻(はたん)は、彼をアルコール中毒と同性愛に追いやり、投身自殺の原因をつくった。詩集に『白いビルディング』(1926)、『橋』(1930)があり、高度に凝縮された詩語とイメージの難解な作品だが、同時代アメリカ詩人のなかでも批評的声価は最高を極める。
T・S・エリオットが『荒地(あれち)』で意図したヨーロッパ文明崩壊のビジョンに対抗すべく、クレーンは長詩『橋』でアメリカの文学的、文化的伝統に基づく肯定的ビジョンを創造しようと試みた。だが、生来の叙情的資質と、モダニスティックな手法は、相いれなかったようである。
[徳永暢三]
『徳永暢三著『ことばの戦ぎ』(1979・中教出版)』▽『鍵谷幸信編『現代詩集Ⅱ アメリカ イギリス』(『世界詩人全集21』所収・1969・新潮社)』
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
… リアリズム全盛時代の文壇の大御所はW.D.ハウエルズである。彼は《アトランティック・マンスリー》誌の編集者などとしてトウェーンやH.ジェームズらの作品を世に送り出したばかりか,ノリス,S.クレーンなどの若い作家の育成にも努めた。ジェームズは,ヨーロッパに住むアメリカ人という国際的な状況と,ホーソーン的倫理観とを心理主義的に作品化することに優れ,《ある婦人の肖像》(1881)などを発表した。…
… 世紀末にニューヨークの大都市化が進むと,大都市を描くリアリズム文学が現れてくる。ボストンから移ってきたW.D.ハウエルズ,マンハッタンの悪名高いスラム街バワリーを描いたS.クレーンなどである。とくにクレーンは,小説《街の女マギー》(1893)で,貧困と汚濁の世界というショッキングな題材をひっ下げ,お上品趣味の読書界の偽善と戦った。…
…ツル目ツル科Gruidaeの鳥の総称。この科は4属15種からなり,ユーラシア大陸,アフリカ,オーストラリア,北アメリカに分布している。とくにアジアに分布する種が多い。熱帯や南半球のものは留鳥だが,北半球の高緯度地方で繁殖する種は,冬季南へ渡って越冬する。日本では,タンチョウ(イラスト)が北海道に留鳥としてすみ,マナヅル(イラスト),ナベヅル(イラスト),クロヅル,カナダヅル(イラスト),アネハヅル,ソデグロヅルの6種が冬鳥または迷鳥として渡来している。…
※「クレーン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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